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イクトがガイと戦闘を始める少し前……。


「アイツ遅いな……」


ベンチでぐったりするヒロムはあくびをしながらソラとともに誰かを待っていた。


いや、その誰かはおそらく雨月ガイなのだろう。


いつも三人でいる彼らの中に一人いないのだからきっとそうに違いない。


「ソラは何か聞いてないのか?」


「いや、すぐに戻ると言ってたけど……アイツにしては遅いな」


ベンチのそばで立っているソラはガイが来ないか辺りを見渡しているのだが、中々姿を見せないガイを少し怪しんでいた。


「……何かあったのに隠してるんじゃないだろうな、アイツ」


「さぁ?

オマエが言ってた黒川イクトとかいうのが気になって追いかけてるんじゃねぇの?

ユリナもそいつがオレのこと見てたって言ってたし」


ヒロムは他人事のように言うが、ソラはそうは思っていなかった。

仮に黒川イクトがヒロムを狙っているのだとすれば呑気にスキを見せていれば襲われかねない。


敵の手の内も知らないこちらからすれば何があるかわからない。


「……探しに行かないか?」


「ああ?

面倒くさい」


「だがガイが本当にアイツと戦ってるとすればそんな呑気なことも言ってられないだろ?」


「それは……そうかもな」


ソラの意見に納得するヒロムだが、ベンチから立ち上がる気配はない。


呆れたソラはため息をつくと、ヒロムに一つ提案をした。


「動く理由がないから動きたくないんだろ?

だったらオマエにしか出来ない捜索方法を使えっての」


「……オマエが動けよ」


「そういうことはせめてベンチから立ち上がる姿勢を見せてから言え!!」


***


イクトは大鎌を勢いよく振るうとともにガイに斬りかかるが、ガイは高く跳ぶとそれを避けてしまう。


「コイツ……!!」


「どうした?

「ハンター」ってのは口だけか?」


ガイは着地すると同時に竹刀をイクトの頭に叩きつけようとしたが、イクトはそれを左手で掴み取るとガイに告げた。


「竹刀でオレを倒そうとしてるヤツにだけは言われたくないね。

本気で来いよ!!」


イクトはガイを蹴り飛ばすと大鎌を何度も振り回し、握り直すと共に勢いよく振り下ろした。


「……なら期待に応えてやるよ」


するとガイは竹刀に魔力を纏わせると大鎌の一撃を防いでしまう。


「!!」


「本気を出せと言ったのはオマエだからな?

後悔するなよ!!」


「するわけねぇだろ!!」


ガイとイクトは互いに攻撃を放ち、そして互いに相手の攻撃を避けると武器を振り上げる。


その時、ガイの一撃は地面に命中したのだが、竹刀ではありえないはずの斬撃が放たれており、地面は抉られていた。


「コイツ……」

(意味もなく竹刀を選んだわけじゃないのか……。

むしろ、自分の力を抑えるためにあえてそれを得物にしてるってか)


「面白い!!

だったらオレのショーを楽しんでもらわねぇとな!!」


イクトは挑発するように人差し指で「かかってこい」とガイに告げ、それを受けたガイは竹刀を強く握ると走り出した。


「悪いな……楽しむ気はねぇ!!」


「……ま、楽しむ余裕はないかもな。

オレの「影」の前じゃな!!」


イクトが指を鳴らすと、イクト自身の影から何かが飛び出し、ガイの竹刀を弾き飛ばしてしまう。


「!!」


影から飛び出してきた何かにより竹刀が手元から離れたガイは驚き、動きが止まってしまう。


「まだ幕開けだぜ!!」


さらにイクトの影から何かが伸びてくるように現れ、ガイの体にまとわりついていく。


「これは……オマエの能力か!?」


ガイはまとわりつく何かにより動きが封じられる中で抵抗するように藻掻くが、次第に動けなくなり、地面へと押さえつけられてしまう。


「そう、これがオレの能力「影」だ。

オレ自身の影を操り、時には相手の影も操る。

攻撃にも防御にも転用できる力さ」



「く……!!」


「卑怯……なんて言うなよ?

オレはこういう世界で戦ってるんだから」


「コイツ……!!」

(あれさえ……「折神」さえあればこんな拘束……)


「さて……」



どうしたものか?

イクトは少し考えた。


このまま雨月ガイを倒してもいいが、倒しても報酬は出ない可能性がある。


そうなれば無駄足で終わる。


となれば、自分にとって有意義な使い方をして利用するのが一番だ。



「……姫神ヒロムが狙われる理由について聞いていいか?」


「はぁ!?

オマエ……何言ってんだよ!?」


「うーん……。

気まぐれな質問だよ」


「……知るか。

雇われなら雇い主にでも聞け」


(そのキキトがおしえてくれねぇんだよなぁ……)


イクトの謎の質問にガイは不快感を露にし、イクトを睨んでいるのだが、イクトはそんなこと気にせずにため息をつくとどうしようか考えた。


(いつもなら状況あるから次の行動決めやすいけど……こうも情報を制限されるとやりにくいな)


「……何でオマエはヒロムを狙う?」


すると今度はガイの方からイクトに対して質問をした。


この質問は至極真っ当、今のガイの立場なら疑問に思ってもおかしくないものだ。


(……やっぱ気になるよな。

まあ、理由くらいは教えてもいいか)


「……どこかの誰かがオマエの大将を殺せって言ってきたんだよ。

極秘の仕事として受けるなら報酬は十倍にするってな」


「何のために……?」


「さぁ?

理由も情報も探ろうとするな、これが条件なわけでね」

(ま、ここまで話してしまったら極秘の仕事として扱ってもらえないだろうけど……)


「とにかく、理由は何であれあの男を殺すよう指示されてる。

……悪く思うなよ?」


「……思わねぇよ」


「ん?」


「どうせオマエじゃアイツには勝てねぇよ。

アイツはオマエの思ってる数十倍は強いからな」


「……それは楽しみだな」

(強いから……なわけないよな。

ホント……狙う理由がわらんねぇな)


「ガイ!!」


するとどこからかガイの名を呼ぶ声がし、声のした方を見ると、ヒロムとソラが現れたのだ。


「……向こうから来たか」


イクトはヒロムの姿を見るとガイを拘束する何かを消し、ガイを自由に動けるようにした。


「何……?」


「もういいや。

アイツを倒せばオマエに用はないしな」


「……黒川イクト!!」


ヒロムはイクトを睨み、ソラは慌ててガイの方へと向かっていく。


「人の仲間に何しやがる!!」


「仲間、か。

何もしてないさ」


「目的はなんだ?

なぜオレを見ていた?」


「……これでも賞金稼ぎだからね。

金のためだよ」


外道が、とソラは銃を取り出すと構えようとしたが、ヒロムはそれを声で制止させた。


「手を出すな、ソラ!!」


「ヒロム……?」


「コイツは……オレがやる」


ヒロムは前に出るなりイクトを見ながら構えた。


が、なぜかイクトは構えようとしない。


「ああ?

何のつもりだ?」


「一つ確かめたくてね。

この剣士くんはアンタの方が数十倍強いって言ってたけど、アンタは強すぎるから狙われるのか?」


「……オマエはバカなのか?

なんでオレを狙ってるオマエがそんなこと聞くんだよ」


「……理由もなしに殺すのも癪な気がしてきたんだよ」


「ああ?」


でも、とイクトは深呼吸すると大鎌を構えてヒロムを睨んだ。


「オマエがやるって言うならやってやるよ」


「……そうこなくっちゃな」


気をつけろ、とガイは叫ぶように大きな声でヒロムに向けてイクトの情報を伝えた。


「そいつは影を自在に操る能力を持つ能力者だ!!

自分の影から何か出してくるぞ!!」


「……ふーん。

それなりの能力を持ってるわけか」


面白い、と思ってるような顔でイクトを見つめるヒロムは指を鳴らす。


それに応じるように何もない所から三人の少女がヒロムの前へ現れる。


一人は腰まではある長い金髪、澄み切ったきれいな瞳、細い体に反するように大きな大剣を装備した少女。


一人は腰まである長い紺色の髪にパレオを巻き、全体的に肌の露出が多いガントレットを両手に装備した少女。


一人は腰まである紺色の長い髪には毛先だけ紫色に変色しており、ノースリーブのように袖のない服、スカートの上には薄紫色の腰布を巻いており、その手には槍を持った少女。


「な……」

(なんで何もない所から!?

アイツは何をしたんだ!?)


何が起きたのか理解できないイクトは必死に考えて答えを出そうとしていた。


(幻術なのか?

もしそうなら指を鳴らしたのは……。

でも幻術にしてはあの三人から感じるこの気配は一体……)


「……何をした?」


答えを導き出せないイクトはそれを知るためにヒロムに問いかける。


「これか?

コイツらはオレの大切な存在……そしてオレの力、「精霊」だ」


「はぁ!?」


精霊、その言葉を聞いたイクトは驚いて大きな声を出してしまう。


というのもイクトの中にある知識の「精霊」と目の前のそれは違ったのだ。


(精霊って一人一体だろ!?

それをコイツ……三体も出してんのか!?)


「何者なんだよ……オマエは!!」


「姫神ヒロム……ただの人間だ。

そして……大剣を持つのはフレイ、槍を持つのはアイリス、そんで最後がマリアだ」


「マジかよ……!!

本気でやらねぇとやべぇな!!」



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