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XXVIII


真夜中。


月が夜空に浮かぶ時間。


夜の高速道路を走る車の一台にイクトはソラ、ガイと乗車しており、彼らが乗車する車をロビンが運転していた。


「ロビンさん、運転大丈夫ですか?」


「気にすんな。

もうすぐ関西圏につくからな」


「でも何でロビンさんが運転を?

前の熱海の時みたいに運転役の人を……」


無理だ、とガイはイクトの疑問を解決するように一言言うとその理由について説明した。


「オレたちは今内密に行動している。

「月翔団」に見つからぬように夜に街を抜け出して目的地に向かってる。

ヒロムがロビンを指名したのは万一にも蓮夜さんや「月翔団」に情報を漏らさないと信頼してるからだ」


「ロビンさんの部下とかは?

さすがに部下の人までは……」


「残念だが旦那はオレに依頼した。

その依頼をオレがこなさないのは気が引ける」


運転する中でイクトに言うとロビンは続けて今回の件について話し始めた。


「分かってるとは思うが今回は手掛かりを探しに行くだけだ。

それ以上のことは求めるな」


「ネクロと会ってキキトを見つければ済む話じゃ……」


「ここで騒ぎになるような戦いをしてみろ。

オレらを行かせた旦那がオマエの用意した情報を盾にして団長を足止めしたとしても長く持たなくなる。

そうなればイクト、オマエは真実にたどり着けなくなる」


「……!!」


落ち着け、とソラはため息をつくとロビンの言葉を受けて驚くイクトに向けて一つ告げた。


「今ロビンが言ったのはあくまで気持ちとしての話だ。

オレたちは今賞金稼ぎがいる裏社会の一部に入っていくんだ。

場合によっては戦いは生じる、それ以外は戦いを避ければいいだけだ」


「必要なら構わないってこと?」


「そのために蓮夜を足止めする情報をヒロムが持ってんだ。

有効活用しなきゃ損だろ?」


「それは……まぁ……うん」


それに、とソラは自身の武器で拳銃を取り出すとやる気を見せながらイクトに向けて言った。


「ネクロって野郎のもとへ何の障害もなくたどり着けるわけもないだろううしな。

最悪の場合はオレかガイかロビンが一人で敵を請け負う可能性もある」


「敵って?」


「決まってんだろ。

オレたちの邪魔をしようとするヤツらだ」


「それはキキトに雇われたヤツらってことだよな?」


「分かりきってることを聞き直すな。

それ以外に何があるのか?」


「いや……今の話の流れだと「月翔団」の人らが現れた時は……」


倒すさ、とガイはソラの言葉に対する返事に悩むイクトに言うと続けて彼に向けて述べた。


「殺さない程度で気絶させてでも倒すしかない。

目的があって動く以上立ち塞がる者は倒してでも進まなきゃならない」


「……オマエら、オレの話聞いてたか?

旦那のこと考えるなら穏便に……」


「それはロビンに任せる。

そういうのは得意だろ?」


「ガイ……オマエは冷静なヤツだと思ってたのに違うのか?」


「時と場合によるよ。

今の場合は……多少冷静かな」


どこがだよ、と運転しながらロビンはため息をつくと戦いについて話すイクトたちに向けてどうすべきかのアドバイスをした。


「とりあえず「月翔団」の人間は関西圏には滞在していない。

現れるとしたら団長がオレらの行動に気づいた時だ。

短期決戦って言い方が相応しいかもしれないがネクロとの接触は可能なかぎり短時間で済ませてくれ」


「短時間で済ませてくれと言われても居場所の手掛かりはないんだぞ?」


あるぞ、とロビンは運転する中で何かの資料をイクトに投げ渡し、渡されたイクトは資料を受け取るとそれを閲覧していく。


「これは?」


「オマエがネクロを探すって聞いたから関西圏に在住するオレの協力者の情報屋を通じて集めさせた最近の賞金稼ぎの動きとネクロの顧客リストだ」


「顧客リスト!?

最高の情報だよ!!」


ロビンから受け取った資料の中身について知るとイクトはこれまで見せなかった興奮したような歓喜の目を見せながら資料に目を通していく。


「何だそれ……」


そのイクトのテンションを気味悪く思ったソラは引き気味で見ているが、イクトはそんなソラの視線を気にすることも無く資料を閲覧しながらそこに書かれているであろう内容を口にし始める。


「顧客リスト……「溶岩」ヴァルカンダイル、「色煙」ミスティー、「岩壁」ガンロック、「雷剣」ミカヅチ、「学天」ハワード・ワイズ、「海帝」ティーチ・エドワード、「快獣」ジュラック、「鎧武」勝鬨九紋、「毒蛇」ハナミカ、「獄道」梧桐……腕利きの賞金稼ぎや能力者ばっかりだな!!」


「そんなにテンション上がることなのか?」


「分かってないだろ、ソラ。

ここにいる賞金稼ぎや能力者は有名人ばっかりなんだ。

こんだけ有名どころの名前集まってたらテンション上がるだろ!!」


「訳分からん……」


「その賞金稼ぎの中にネクロの関係者が?」


イクトの言葉が理解出来ないソラは呆れながらため息をつくが、ガイはそんなイクトから話を聞こうと質問をした。


「ネクロと取り引きした賞金稼ぎや能力者に変わりないけど、今名前を言ったのはいわゆる一見さんだよ。

本当に必要なのはもっと奥深い所……ネクロと取り引きを繰り返している常連だ」


「いるのか?

ネクロと常に取り引きしてるような人間が?」


「一人いる。

その名前がこの顧客リストの中にあれ……ビンゴ!!

あったよ、アイツの名前が!!」


何かを見つけたイクトは車内だというのに大きな声で叫ぶとガイに資料を見せるように広げながら話そうとする。


イクトの声に多少イラッとしながらもソラも話に入ろうとイクトが広げた資料に視線を向け、ソラが視線を向けるとイクトは顧客リストのある人物の名前を指さした。


「ここ、ここに書いてある人物がネクロと親密な関係にある手掛かりだよ」


「えっと……「暗撃」クラン、か」


「このクランってのはどんなヤツなんだ?」


「賞金稼ぎや情報屋の中ではかなり有名な人物だよ。

異名が示すように隠密行動と暗殺撃を得意分野にしてる。

一部界隈ではクランのことを「忍の末裔」と謳われるほどだ」


「忍の末裔とはまた大きく出たな……」


「ロビン、アンタも知ってるのか?」


知ってるさ、と運転中のロビンはソラの質問に一言答えるとクランという人物について知るかぎりの情報をクランを知らないガイとソラに説明するように話し始めた。


「クランの特出すべき点は隠密行動や暗殺を容易にこなさせる機動力の高さにある。

旦那のあの速度と大差ないかもしれないな」


「ヒロムと同等の速度……」


「どんな能力なんだ?」


「能力については明かされていないが、目撃者の証言によればクランは風を身に纏うらしい」


「つまり、風の能力者ってことか」


「それとクランは短剣を武器にした戦いを得意としてる」


「高い機動力を活かす上で小回りのききやすい武器を選んでるってわけか」


そういうことだ、とロビンは車線を変更させると少し進んだ先で高速道路を下り、一般道に入るとガイとソラ、クランを知るイクトに向けて告げた。


「旦那の機動力を知ってるからって油断するなよ?

土地勘では向こうが明らかに上だ。

機動力を活かしやすい場所に誘導されたらさすがのオマエらでも苦戦は免れないだろうからな」


「土地勘か……イクトはどうなんだ?」


「残念だけど土地勘に関してはクランの方が上だろうね。

クランはこの辺を縄張りにしてるから無駄に詳しいと思うよ」


「弱点はないのか?」


するとソラがイクトに対してクランのことで一つ質問をした。


「どんな人間にも弱点となる部分はあるはずだ。

それが分かれば土地勘云々は覆せるだろ」


「弱点、か。

弱点ってほどじゃないけどクランはネクロの頼みは絶対に断らない」


「は?」


「ごめん、悪いけどさすがにそこまでは知らない。

けどクランと戦闘になってもその間に誰かがネクロを見つけて説得さえすればクランとの戦闘を避けることは可能になるかもしれない」


「……当てにならねぇな」


ソラは舌打ちしてイクトに冷たく言うが、ガイはイクトに対して一つ提案をした。


「オレたちがネクロに接触するよりはイクトの方が話つけやすいだろ。

そのクランってのはオレとソラで引き受けるからイクトはネクロを説得する、これでどうだ?」


「おい、何勝手に……」


「ロビンはオレたちが動いてる間に周囲に怪しい動きがないか調べてくれると助かる」


「そうか、分かった」


聞けよ、とソラは少しキレ気味にガイに言うとガイの提案に対して意見を述べた。


「なんでオレとオマエがわざわざコイツのために足止めを引き受けなきゃならねぇんだよ?」


「クランはオレたちを怪しんで襲ってくるはずだ。

そしてオレもソラもクランどころかネクロすらどんな人間か分からない。

ネクロは情報屋としての情報網でオレたちのことを調べてるはずだしな」


「だからってそれが何に……」


「落ち着けってソラ。

オレとソラが派手に暴れてる間に面識のあるイクトがネクロとスムーズに話を進めれば今さっきイクトが言ってたようにネクロにクランを止めさせれば万事解決だ」


「あのな、オレらが求めてるのはキキトの居場所と情報だぞ?」


「分かってる」


「なら何でネクロを仲間にするようなことを……」


必要だからさ、とガイはソラに言うと続けてイクトを見ながらイクトとソラにネクロとクランを相手にした自分の提案についての真意を語る。


「キキトは「八神」に関係してる。

今のオレたちだけで相手をするには数が不足してる。

だから現地で仲間を調達する」


「仲間?

賞金稼ぎとそれを利用する情報屋をか?」


「そうだ。

利用出来るものは利用する、シンプルだろ?」


「……」


「でもガイ。

その作戦ってクランが現れないと意味ないよな?」


「まぁたしかに奥に潜むでかい獲物を狙うために誘い出さなきゃ行けないからな。

けど方法ならある」


自信満々に答えるガイ。

そのガイの自信に満ちた言葉を聞いたイクトは彼の思惑を聞こうとした。


「その方法ってのは?」


「ロビン、このクランってヤツが最後に引き受けた仕事って分かるか?」


「ん?

分かるけど、どうしてだ?」


「決まってるじゃん。

オレたちがそこに乗り込む」

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