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63 兵士とカルダン

(模擬戦まで後四日)

 ある王国の兵士達は森にいた。そう任務が与えれたからだ。その任務とはアバルス様の騎士、カルダン様を呼び戻すというものだ。カルダン様はアバルス様が狩りに出掛けられた折に出会われた戦士。アバルス様はその実力を高くかわれ多額の金でカルダン様を雇い自分直属の騎士にされた。そして今回ドラゴン討伐という任務中にエリス様が返ってこられカルダン様と模擬戦をさせるというので呼び戻せとの事だ。


 正直なところ今回の模擬選はエリス様が勝ってほしい、この模擬選の勝敗は王国派閥のお偉方には、国王の資質の評価としてとらえられる。それはつまり負ければ王位継承権はそれだけ危うくなるというわけだ。古来から戦いはその騎士が行い王に勝利をもたらす、今回の戦いはそれを模した行事として捉えられることだろう。そしてエリス様が負ければ間違いなくアバルス様の独裁政権になり王国の民たちは今まで以上に貧困に陥るはずだ。いっそのことここで私が他の兵士たちを殺しカルダン様を呼ばなければエリス様の不戦勝となり王国は安泰になるだろ・・・・・・。まあ、私にはそんなことをできる力はないが。

 

 はぁー、私情はここまでにしてカルダン様を探すとしよう。


 森の中はそこまで木が生い茂ってはいないが一本一本とても丈夫で太く背丈も高い。視界は悪くはないがそれでも急斜面のぬかるんだ地面で体力を奪われる。ドラゴンはその性質上森の中心点にいることが多い、それは森の中心点が一番餌が多く強いモンスターがいるからだ。捕食者の頂点たるドラゴンはそこで狩りをし、巣をつくり子育てをする。栄養がたっぷりある中心点は強いドラゴンを生むには最適で人間に襲われる可能性も低い。しかし逆に言えば人間がそんな場所に突入すればそれは死を意味する。王国でも有数の兵士を集めた私たちでさえ油断できない場所だ。


 あれは?


 「お前たち構えろ」


 一人の兵士のが叫ぶ。

 

 少し遠で馬鹿でかい音がした。そちらを見る。そこには暴れている茶色のドラゴンがいた。地竜だ。それも一匹ではない地竜が二匹もいる。

 

 地竜はゴツゴツした岩のような鱗を持ちその咆哮は相手をすくみあがらせ地に這いつくばせる。


 実際に先ほどの咆哮で優秀な兵士が僅かに震えている。その者たちは最早まともに戦えないだろう。私もここまでか。


 しかしこれでよかったのかもしれない。これで王国は安泰だろう。


 一匹の地竜がこちらを凝視するとともに迫ってきた。その迫力は僅かに残っていた兵士たちの闘争心を奪い武器を落とさせる。


 地竜は口をあけ目の前の兵士たちに噛みつこうとする。後ろにいる私も巻き添えだろう。


 あと一メートルというところ丁度死ぬ覚悟を決めた瞬間、地竜の口が消えていた。いや違う。地竜の巨体を体ごと無理やり浮かび上げさせたのか。


 「なんだ。王国の無能な兵士達がなんでこんなところにいるんだ?」

 「カルダン様」

 

 傲慢な態度で兵士たちにそう言う騎士カルダン様。私はこの人の性格が嫌いだ。弱者をモノとしか見ていないような目も嫌悪する理由の一つだろう。しかし実力はこの通りである。剣でその突進を受け止め腕力だけでドラゴンの巨体を吹き飛ばした。


 「まあいい、話はあとで聞いてやる。とりあえずゴミを片付けてからだな」


 そういいまだ体勢を立て直していない地竜に向かって剣を振る。その速度は目に見えないほど速い一撃だった。地竜は何とか腕を上げ剣を受け止めようとする。竜の爪はその部位の中でも最も固い部分の一つでもある。鉄すら簡単に切り裂くその猛攻は一振りで数十人が死に至る正に死神の一撃。だから目の前の光景が信じられない、カルバン様の一閃が消えたと思った瞬間竜の爪がスパリト切れた。その時周りの者たちも爪を切られた地竜でさえも固まった。しかしその隙の間に再び剣が繰り出された。神速の剣は竜の胸を切り裂いた。血が大量に吹き出し信じられないという顔をしながら倒れていった。


 切り口が4つ。一回と思われた横なぎは四回も放っていたとは。しかもその一つとして見えなかった。正に剣速の申し子。


 カルダン様は次の地竜へと足を進ませる。先ほどまで傍観していたもう一匹の地竜は恐怖のあまり翼を広げその場を飛び立つ。しかし我々が気付いたころには方翼がごっそりと切られて地にあおむけに落下した。


 「なにが起こった」


 隣にいた兵がそういった。萎縮していた兵士は謎の剣技に見入っている。そんな周りとの感動と隔絶するかのように私には別の驚きがあった。


 あれは確か剣技の上位。剣王技の飛剣斬。斬撃を飛ばすという反則めいた技だ。以前高位の冒険者が使っているところを見たことがある。しかしその冒険者の放った飛剣斬はこんなに速くはなかった。カルダン様のは速すぎる。


 「おい!何ぼさっとしてやがるんだ。俺に何か用があってきたんじゃねーのか?」


 暴力的な言葉がこちらに突き刺さる。それは圧迫したプレッシャーとなりこちらに向けられるかのようだ。兵士たちは萎縮してしまい質問に答えられずにいると「おい!なんとかいえよ!」と急かすように催促する。


 「カルダン様、アバルスから帰還せよとの命を受け参上まいりました。王国にて模擬戦を四日後に行うにて帰ってこいとのことです」


 これ以上カルダン様を苛立たせるのは不味いと思い仕方なく私が承った命を伝える。


 「模擬戦だと?誰とだ」


 その問いに答えることができなかった。なぜなら知らないからだ。おそらくエリス様の騎士ティーヤだと思うが相手は模擬戦が始まるまで数日前にしか伝えられない、それは相手を研究することを避けるためと試合前に暗殺しようとする輩が出てくることを防ぐためだ。


 「申し訳ございません。知りません」

 「なに!・・・・・・いや確か模擬戦の相手は直前まで開示されなかったか」


 そう言うと死体となった地竜に駆け寄り手を置く。


 あれはアイテムボックスか。しかも地竜を2体も・・・怪物。


 「さてカルダンところに帰るとするか」


 私はこの瞬間王国の災厄の未来を想像した。

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