62 対談
「タクシ様今何をなさったのですか!腕輪が砕け散ったのはなぜなのですか!」
「お嬢様落ち着いてください!それよりも早くエルガル様の治療を!」
騒がしいな、傷なら直ぐに治しますよ。俺はポーチでくつろいでいるリムに念話で話す。
「リム頼めるか」
『わかったー!』
そう言うとポーチがモゾモゾ動き始めた。
「タクシ様!ポーチが動いています。何か入っているのですか、へぇ!」
リムは勢いよくポーチから飛出し、ちょうどクレスさんの足元に着地した。そして体をほぐすようにプルプルと震える。
「か、かわいい!」
「お嬢様お下がりください、タクシ様、この子はいったい」
メイドさんはクレスさんの前に立ちはだかり警戒しながらこちらに聞いてくる。
「安心してください、このスライムはリムと言って契約しているモンスターです。今からリムが当主の傷を癒します」
リムは俺の言葉を聞くと分かったと言わんばかりに、ピョンピョンと跳ねベットの上に乗った。そして触手をだし当主の体にぴたっと付ける。すると緑色の光のようなものが当主の全身を優しく包みこむ。その直後青白かった肌が健康的なピンク色に戻り、荒かった呼吸も正常になっていく。
「スライムが回復魔法、しかもあれほど高位の・・・・・・」
「うっ」
「お父様!聞こえますかクレスです!」
若干涙目になりながらうつ伏せになった当主の元へ行き急いで声をかける。その声は若干震えながらも喜びの感情も含まれていた。
「あ、ああ、聞こえているとも、先程からおぼろげながら意識はあった」
当主はゆったりと体を起こし、こちらをちらり見る。そしてゆっくりとした動作で足を床に下しベットに座り直す。そして大きく深呼吸しこちらに向く。そしていきなりキリッとした表情になり頭を下げながら礼を言った。
「お主が助けてくれたのだな、感謝する。今日は夜もだいぶ深けている。明日改めて礼を言わせてもらおう、エレス客人を部屋に」
「はい!」
「勝手に決めてすまないが今日は我が家に止まっていってくれ、詳しい話は明日にしよう」
「それで構いません、この後ちょうど宿を探そうと思っていたところなので正直助かります」
「そうか、そういってくれると助かる。私も今日は疲れた。休ませてもらおう」
そういい再びベットに横になる。。傷が治ったとはいえ精神のほうは疲弊しきったままだ。仕方ないだろう。それに今はクレスさんと楽しげに会話している。家族水入らずにしてあげたい。
メイドさんに案内され客室につく。客室は天蓋付のシャレたレースがある高級そうなベットときれいな丸型の机があった。こじんまりしているようだが余計なものがなくて逆に良い。
中に入ろうとするとメイドさんがタクシ様といい頭を下げてきた。
「どうしたんですか!」
「タクシ様先ほどの数々のご無礼誠に申し訳ございませんでした」
「ああ、そのことですか、気にしていません、寧ろいきなり訪ねてきたのにもかかわらずこちらを信じてくれました。こちらこそありがとうございます。だから頭を上げてください」
「いえ、私はあなたの事をお嬢様を狙う盗賊だと思っていました。今回の件もお嬢様の言葉がなければ私はあなたを追い出していたでしょう。私の眼は完全に曇っていました。もしあのままあなたを追い出していたならばエルガル様は死んでいたでしょう、その事が私は私自信を許せないのです。だから謝罪させてください」
「・・・分かりました。謝罪を受けます。なのでもう頭を上げて下さい、このままではどうも歯痒いので」
そう言うと頭を上げ口角を吊り上げて笑顔を見せた。そして失礼しますともう一度頭を下げ長廊下を丁寧な歩調で去って行った。
「はぁー、寝るか」
扉を閉めベットに向かい横になる。するとリムがお腹減ったと騒ぎ出したので、空間からつまめる物を出し一緒に食べた。
明日はついに当主との対談か、正直交渉とか俺には無理だ。学園では上手くいったがあれは半分力尽くだったし、あの時はエマ達の熱量に少し奮起していた面もあるし。ハァー、やっぱり柄じゃないな。もう寝よ。
「さて、早速で悪いがどういう経緯で私を助けたのかを話してくれ」
俺は朝食を皆で済ました後、当主の自室に二人っきりで入り机を向い合せに座り経緯を話す。
「その前にまずあなたを襲った相手のことは分かりますか?」
「いや、私に心当たりはない、ただ腕輪を付けて颯爽と消えていった。正直何をしたかったかは分からん」
「そうですか、あなたを襲ったものの話を聞くと、あなたを戦力として利用しアバルス派に付けようという話をしていました」
「なるほど・・・・・・私は中立派無理やりにでもアバルス派についてほしかったという訳か、しかしまさかこんな強行手段に出るとは、いかに王族といえども今回の件は許される訳がない、アバルス様はいったい何をお考えておられるのか昔は心優しき少年であったというのに、変わられたものだ。今回の件は王国に報告しアバルス様にはしかるべき処分を受けてもらわなければならない」
「その話なんですが襲った者たちはオマスという人物の命令だと言っていました」
「オマス・・・・・・聞いたことない名前だ。少なくとも国王がご病気になる前からはいなかったはずだ。こちらも調べておこう。それでタクシ殿、娘から聞いたのだが襲撃者は異様な黒い肌をしていたという話だがそれはどういうことなのだ?」
俺は空間収納から一人の死体を出す。
「これは・・・・・・確かに話を聞いた通りこの世の者とは思えない形相をしている。それでこの姿に心辺りはあられるのだろうか?」
「彼らは聖龍の呪われし血と言っていました」
「聖龍!500年前にこの王国で龍の素材惜しさに神聖なる龍を討伐したという伝説!まさか事実だったとは、しかしそれとこやつらの姿とは関係しているのか?」
「その聖龍の血を自分に注射した瞬間こんな風貌になっていました。力は数倍に膨れ上がりかなり手強かったです」
「うむ、しかし分からん、今回の派閥の件も、そのオマスとか言う者のことも、何か不穏の前触れなのか、それでタクシ殿、貴方は私に何をお望みなのだ」
「エリス派についていただきたい」
「エリス派?タクシ殿はエリス様の関係者か。しかしそれには頷くことはできない、私は中立派、それに勢力的にはアバルス派の方が有利、それに私のような弱小貴族など仲間に引き入れたとてエリス様にたいしたご助力ができるとも思えない」
「権力としてではなく戦力として協力していただけませんか。もちろん明確な危険性がある場合は引いていただいて結構です。できる範囲でいいので何かしらの協力をしてください」
「・・・・・・タクシ殿、私はかつて冒険者をやっていた。ある日、国王の護衛という大儀な指名以来がきた。私はそこで襲ってきた賊を退治し、王に気に入られ子爵としての地位を手に入れた。正直ご病気の国王を放り出して継承権争いをしているご子息には少々疑問を抱いていた・・・・・・・しかしそれも個人的な感情、端くれ貴族とはいえ勝手なことをするわけにはいかない、しかし、アバルス様が明確に国王の敵として台頭した場合はできる限り協力する。恩を返せないの心苦しいがこれが私が譲歩できる限界だ」
難しい顔をしてこちらに申し訳なさそうにいった。
「いえ、それで構いません」
「申し訳ない」
しばしの沈黙が流れる。
重い。
そう思った瞬間当主が口を開く。
「タクシ殿はこれからどうされるのだ。できればもう少し礼を尽くしたい。しばらくはここに滞在されないか」
「ダンジョンで力をつけるつもりだったので正直助かります」
「よし!それならば私は情報を集めに専念する。まずはここ数日の空白の情報を集めるとしよう」
そう言い当主は立ち上がり情報集めにいった。そして俺は廊下でクレスさんとメイドさんにダンジョンに行くと告げ、レベルアップに向かう。




