59 聖龍の呪われし血
4メートルはある黒いクマと相対しています。両腕を腰にさしてある短剣に伸ばし、ゆったりとした構えを取ります。
この3日間でかなりレベルが上がりました。
もうそろそろ深く森に潜っても大丈夫そうです。
『グオオオ!』
「うるさいです!」
クマの脇腹をすり抜け短剣を腹に差し込みます。
怒声と苦痛に満ちた声を上げる。しかしクマはすぐに爪を振るって来ます。飛び上がり避ける。そしてその腕を踏み台に蹴り上がり、目を切り上げる。
騒いでいるうちにブラッドダガーを背中に差し込みそのまま距離を取る。
「終わりです!」
『ギュギャアギャーー・・・・・・』
「ここのモンスターは奥に行くほど強くなる。あなたにかまっていられません」
私がいるところはまだ浅い場所。残された期間はあと4日間。急がないといけません。行きましょう。
深い森の場所に向かって進みます。
『ドックン』
うん、いま、ブラッドダガーが脈打ったような?
気のせいでしょうか。
「はあ!タクシ様に会いたいばかりにタクシ様から頂いたものに思いがこもりすぎて生きているような気がしたのですね!それにしてもこの短剣、タクシ様から頂きましたが、詳しいことは聞いていませんでした。聞いたことは確か、この短剣は血を吸うことで強くなるらしいということだけです。その話が本当ならこの短剣は強くなったのでしょうか、確かに切れ味が上がっているような気もします」
森から出て来る魔物を次々と倒していき奥に進みます。
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誰だ貴様は!
後ろを振り返る四人、フード付きのマントを深く被っている。隠密に行動する為なのかそれは暗闇に溶け込める黒色だ。四人は未だ驚きを隠せない。しかし流石と言うべきなのかその格好にふさわしく落ち着きを直ぐ取り戻した。すると彼らの行動は速かった。一人のフードが揺らぎ、こちらに短剣が放たれた。
「俺には効かない」
「なに!」
短剣を剣で弾く。
その短剣が俺の背後の地面に突き刺さる。それと同時に彼らの警戒心が上がった様だ。
「さっきの話よく聞かせてくれ」
俺がそう言うとやはりと言い、皆一様にマントから切っ先が少し斜めになった真っ直ぐとした剣を抜いた。
先ほどの話やはり王国に関係した話なのだろう。だったらエリスやエマの為にも何としても聞き出さないといけない。
四人は俺を取り囲む様な配置についた。
それも絶妙な距離を取っている。
どうやら一人を複数で殺す連携は慣れているらしい、ならば一人が倒れれば他の三人は真っ逆さまに逃げるだろう、危ない橋は渡らない、そんな雰囲気だ。ならば一気に四人行動不能にするしかない。
俺は四人の動きに注意を払う。
そしてリーダーらしき男がやれと言った瞬間剣が一斉に襲いかかって来た。
「消えた!」
「どこに?」
「後ろだ」
「え!」
俺は背後から一人の首をトンとする。
そしてもう一人、振り返ったところを剣の塚で腹を押す。
もう一人は殴り飛ばした。
最後は腹パンで倒そうとするが、避けられた。そしてすぐさま距離を取った。
「貴様!どうやって我らの後ろに!」
怒声が効いた声だ。そしてこいつがリーダーなのだろう。明らかに動きが切れていた。
しかし。
「リム!」
『ご主人!』
「何だこれは?スライム、なのか、くっ、離せ!」
後ろに控えていたリムが岩陰から飛び出しリーダーに覆い被さり身体を拘束した。
「何故、剥がれない!」
リムは自分の体に硬化を使い拘束の強度を上げている。強度はダイヤモンド並みだろう。
さて、話を聞かせてもらおう。
「まずオマスという奴は誰で、その計画とやらをおしえてくれ」
「誰が言うものか!」
やはり、そう簡単に言うわけはないか、だったら。
「リム、拘束を解いてくれ」
『分かったー!』
「なんの真似だ!」
「奴隷の腕輪とやらを付ければ、必ず喋る破目になる。だったら別にお前はいらない、気絶している誰か一人を連れて逃げればいい」
「くそが!」
剣を振るうが簡単に避けられ憤怒している。
しかし直ぐに落ち着きを取り戻した。
「最後の手段を使うしかないようだな」
「最後の手段?」
「お前情報が知りたかったな。なら、冥土の土産に教えてやる。俺たちはアバルス王子の相談役オマス様の部下だ。そしてオマス様は王国を乗っ取ろうとしている」
王国を乗っ取る? 話が怪しくなってきたな。
「お前達にそんなことが可能なのか」
「ああ、これを使えばな」
リーダーは注射器の様なものを懐から取り出した。
その中には紫色の奇妙な液体が入っていた。
「これは、かつての伝説の聖竜と言われ、国の連中に滅ぼされた。龍の呪われし血、それを10倍に薄めたものが入っている。これを人間の体内に注入する。すると戦闘能力が数倍に跳ね上がる。俺達がエルガル当主を仲間に引き入れたかったのもその理由だ。本来は10倍に薄め注入する。でない発狂して廃人となりただの獣と化す。しかし強さは数倍どころではない程の戦闘能力を引き上げる」
「つまり、強い奴を集め100%に近い濃度を注入し戦力に仕立て上げると」
「そいうことだ。獣となろうと奴隷の腕輪さえ準備をすればそれなりに使い道がある」
そういい自分の首に注射をさした。
「お前ら三人も起きろ!」
そう言い懐からさらに注射器を出す。倒れている3人に無理やり打ち込んだ。
すると徐に立ち上がりこちらに殺気を放ってきた。
少し厄介だな。




