04 ゴブリンと裏切り
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緑色のゴブリンは目の前で仲間を殺されたにかかわらず、いまだ動こうとせず余裕そうな表情でこちらを見据えている。
「余裕ぶっていられるのもここまでだ。貴様は次の瞬間そこに転がっているゴブリンどもと同じになる」
ヘルドトスはそう言うと再び槍を構え直し、足に力を入れ一気に間合いを詰める。
「死ね!2段突き!」
今までよりもさらに速い槍がゴブリンに襲い掛かる。
しかし、その槍がゴブリンに届くことはなかった。
「馬鹿な!」
ヘルドトスが放った渾身の一撃があろうことか片手で掴み取られた。
そして、ゴブリンは剣を持った方の腕を上げヘルドトスに振り下ろす。
「避けろ!」
俺はあらん限りの声で叫んだ。
しかし、ヘルドトスは恐怖のあまり体が動かない。
ゴブリンの剣はヘルドトスの体を切り裂いた。
しかし、よく見るとゴブリンの腕に矢が刺さっている。
「ヘルドトス様!」
ラルフが弓を撃ったのか。
ゴブリンは矢に動揺し一瞬動きが止まった。
その隙にバルシュが風魔法で空気の玉を作り出しゴブリンめがけて投げた。
ゴブリンは空気の玉をもろにくらい6メートルほど吹き飛んだ。
俺はその隙に気絶しているヘルドトスを回収した。
ヘルドトスの傷は思ったより浅いが今すぐ動ける状態じゃない。
「ラルフ、お前の回復魔法で治るか?」
「あぁ大丈夫だ応急処置だけなら2分ほどですむ。しかし、気を取り戻すのはもっと先だ。」
結局倒すしかないのかよ。
「バルシュ支援を頼む」
「どうするつもりだ?」
「あのゴブリンを倒すのさ」
「できるのか!」
「できなくてもやるしかない!」
「・・・わかった」
「さっきの風魔法、後何発撃てる」
「さっきの威力だと1発だ」
「1発か、じゃあ俺が合図をしたら撃ってくれ」
「わかった」
ゴブリンは既に起き上がりこちらに向かって剣を振ってくる。
俺は湧き上がる恐怖心を振り払い、鞘から剣を抜き、柄を力強く握り締めゴブリンの攻撃に備える。
ゴブリンは右斜めから鋭いを斬撃を繰り出してきた。
俺はその斬撃を渾身の力で撃ち払い、剣術スキル1で使える<双撃>を繰り出す。
双撃は一振りで2つの斬撃を繰り出すせる技だ。
「くらえー!双撃」
1回目の斬撃は防がれたが2回目の斬撃で足を傷つけた。
「ちっ、浅い」
これぐらいでは、奴は倒せない。
ゴブリンはダメージをくらったことに怒り狂い。
斬撃をさらに強めてくる。
くっ、そろそろ限界だ。
これだけ攻撃を繰り出したのにもかかわらず。ゴブリンはかすり傷程度しかダメージを負っていない。
このままではいずれやられる。賭けに出るしかない。
「バルシュ魔法の準備をしてくれ」
「わかった!」
俺は最後の力を振り絞り双撃を放ちゴブリンを後ろに下がらせる。
そして、火魔法を発動する。
「バルシュ合わせろ」
「おう!」
「ファイヤーボール!」
「エアボール!」
俺とバルシュは同時に魔法を放つ。
同時に放った魔法は空中で混ざり合い1つの大きな火の球となりゴブリンに直撃した。
ゴブリンは火に包まれ、もがき苦しむ、剣を振って火を消そうとしているが火の勢いが強く消えない。
そしてやがては焦げ臭いにおいを周りに漂わし倒れていった。
ゴブリンとの戦闘に勝利した後、しばらくすると気絶していたヘルドトスが目を覚した。
「ここは・・・はっ、あのゴブリンは!俺はあの後どうなった!」
「落ち着け、おまえはあの後気絶し、ラルフの治療魔法で傷を治した。そして、ゴブリンは俺とバルシュが倒した」
「お前らが!嘘をつくなお前らにあのゴブリンが倒せるわけがないだろう!」
「そこを見ろ、俺はゴブリンの死体がある方を刺した」
「本当に倒したのか?いや、認めない庶民ごときがあいつに勝てるわけがない、ただのまぐれだ!」
「そうだな」
「!!!」
「くそ、もういいさっさと帰るぞ」
「ゴブリンの右耳はどうする持って帰らないのか?」
「そんなわけないだろう、バルシュ早く取ってこい」
「わかりました」
バルシュはナイフで灰色のゴブリンの耳を取りに行き戻ってきた。
「おいバルシュ、あの緑のゴブリンの耳も取ってこい」
「あのゴブリンもですか?」
「ああそうだ、あのゴブリンを倒したとなれば俺の株が上がる」
倒したのはお前じゃないが、それを言うほど俺は子供でもない。
「しかし、それでは危険地帯に来たことがわかってしまいます」
「ふっん、偶然遭遇したといっておけば大丈夫だ。それより早くしろ」
「・・・はい」
バルシュは再びゴブリンの方に行き緑色のゴブリンの耳を取ろうとしたその瞬間。
ゴブリンは起き上がり剣をバルシュの腹に突き刺し、そして腹から剣を引き抜いた。
バルシュの腹から大量の血液が湯水のごとくあふれ出る。
それを見た俺は頭が真っ白になり、きずいた時にはゴブリンの頭に向かって剣を振りおろしていた。
振りおろした剣はゴブリンの頭に深く突き刺さりそのまま倒れていった。
俺はすぐさまバルシュに近寄り声をかける。
「バルシュ、おい、おい、おい」
俺は懸命に話しかけるが答えが返ってくることは永遠になかった。
俺はすぐに後ろを振り返りヘルドトスを睨む。
「!!!」
「僕のせいじゃない、僕のせいじゃない、お前がもたもたしてたから悪いんだ。だからお前が責任を取れ!」
俺はその言葉を聞いた瞬間怒り狂った。
「ふざけるなー!!!ここに来ようと言ったのはお前だ。そのことに対してお前は全責任を取ると言っただろう!!!」
「しらん、僕はそんなこと言ってない、お前が悪いお前が罰を受けろ!」
ヘルドトスは泣きながら訳のわからないことを言ってくる。
普段の俺だったら容認できる言葉だがバルシュの死という現実に冷静な判断ができなくなっており。
俺はヘルドトスの胸ぐらをつかみ顔面を殴り飛ばした。
ヘルドトスは2メートルほど吹っ飛び地面でのたうちまわる。
「うああぁぁぁ、イタイ、イタイ、イタイ、イタイ」
俺は、ヘルドトスを無視してバルシュの亡骸の横に跪きバルシュの目をそっと閉じる。
そして、両の手を合わせ目をつぶり、あの世での幸せを願う。
その時、自分のお腹あたりに違和感を感じ目をあけると俺は吐血していた。
なにが?訳が分からなくなり違和感のある腹を見てみるとそこには血がついた槍の先端が見えた。
俺はゆっくり後ろを振り向くとそこには呆然としているラルフと槍をもったヘルドトスがいた。
「お・前・え・ど・う・し・て」
俺は声にならないような声で問い掛けた。
「お前が死ねば、すべて解決するからだ」
「解・決?」
「そうだ、お前は僕たちが止めたにもかかわらず危険地帯にやってきた。そして強いゴブリンが現れバルシュとお前が死亡、そして僕とラルフがゴブリンを撃退。そういうことにすれば、俺は罪にとわれるどころか称賛される」
「ク・ズ・が」
「なんとでもいえ言えばいい、死人に口なしだよ」
ヘルドトスはそう言って俺の腹に刺さった槍を抜き出した。
そして、いまだ唖然としているラルフに槍を向け問い掛ける。
「さてラルフ、お前はどうする?お前の選択肢は2つだ、1つめは今起きた真実を黙って、僕と一緒に学園に戻り称賛される選択肢、2つめはこいつらと一緒に仲良くモンスターのいる森で一緒過ごすかだ。その場合さっきのシナリオを少し変えなきゃいけない」
「も、もちろんヘルドトス様と帰ります」
「そうか?ではゴブリンの耳を取ってきてくれ」
「は、はい・・・・」