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36 ハイオークと誘い

 日差しが木製窓から射し込むころ、俺はベットの上で心の焦りを強く感じていた。心情的には職務質問され、指名手配中の犯人だとばれ、逃走を図ろうとする犯人の気持ちに等しい。まあ、俺は職質されたことはないが、おそらくそういう状況に陥った犯人と同じぐらいの気持ちだろう。


 今後の対応を考えているうちに、ついにエマが目を覚ました。エマが綺麗な黒目をパチリ開け真っ先に俺の顔を見る。そしていたずらが成功したような子供のような笑みで微笑んでくる。

 いや実際問題エマは子供だ。

 子供の笑みをするのは、ごく自然で当たり前のことなのだ。

 問題があるとしたら、その子供に理性をなくし、襲いかかるような自分の性根の方だろう。


 「おはようエマ、俺、その、昨日の事を殆ど覚えてないんだが何かやらかしたか?」


 今まで子供の笑みを浮かべていたはずのエマが急に大人の色気が漂うような表情になり、口元を隠すようにシーツをたぐり寄せ、ポット言葉をささやく。

 

 「激しかったです」

 「そ う か・・・・」


 やばい、これは非常にやばい、いや、やばすぎる。

 その言い方は男女がやることをやったという解釈もできなくはない言い方だ。

 いや、やってはいないがそういう風な表現だったというだけだ。もちろん手は出していないはずだ。うん

刑務所に入るような真似は俺はしない。


 「エマ外に食事に行くぞ」


 できる限り今までの失敗を取り戻すように、威厳があるような態度と声でそう言う。


 「はい、これから末長くよろしくお願いします!」


 ベットの上で正座し、頭を垂れてくる。

 その姿はまるで結婚が決まった花嫁がやるような所作だった。


 「ああ、よろしくな」

 「はい」


 はあ、急な坂に転げ落ちていくような感覚だ。


 タクシ様何を食べますか?数日前に来た店に入った。俺はそこでメニュー表を見ているフリをしている。もちろんそれは文字が読めないからだ・・・

こんな事をしていると、いっそのことエマに全て打ち明けても良いんじゃないかという気持ちになった。

 俺はエマと同じ物を頼み、食事を済ませ部屋でエリス達を待つ。

 

 扉が開かれ2人は昨日と変わらない雰囲気で現れた。

 しかしその姿を見ると少し心が痛んだ。なぜなら昨夜エマとしたことが尾を引き、軽い裏切り感のようなものがあるからだ。この気持ちを例えるならば、ある仲がいい男女4人の中で突然2人が付き合い始め、残された2人は何となく気まずく、付き合った方も何となく気を使い最終的に瓦解する感じのやつだ。いや、別に俺はそんなことにはならない、ならないがそういう危惧があるというだけだ。うん。


 「はあー!」


 5階層まで早速きた。ティーヤとエリスがハイオークの群れと戦っている。

 槍を放って来るハイオークの攻撃を剣で弾き、袈裟切りに切り裂く。横から襲ってきたハイオークはエリスが魔法を放ち滅していく。お互いのミスをかばいあいハイオーク達を倒して行く姿は華麗で美しく流れるようだった。


 オーク達はこのままでは勝てないと思ったのか、ティーヤを取り囲み一斉に攻撃を仕掛ける。それを跳躍でかわし囲みの外に着地する。そこから足に力を入れ弾丸のような速さで飛んでいく。ハイオーク達はすぐさま向き直ろうとするが、その前に硬化を付与した最高の切れ味の剣で複数のハイオークの首を跳ね飛ばした。そこからさらに右にいるハイオークを左切り下げ、左にいるハイオークに横薙ぎの一撃。どちらも一撃で骨を容易く断ちきる。最後に残った敵もエリスが風魔法を刃に変え切った。


 俺はいま死体になったハイオーク達を収納している。流石に原形が綺麗に残っている死体は残っていなかった。それも、あの激戦なら仕方がないがことだ。しかし買い取りが安くなる。なのであまりにも原形を止めていない死体はその場で焼いておいた。


 2人はこの戦闘でレベルが上がりとても強くなった。この調子でいけば次の6階層での戦闘も大丈夫そうだ。俺もそろそろ2人の戦闘を傍観するだけではなく自分のレベルを上げたい、なので明日は2人とは別行動をしようと、エリスに趣旨を伝える。

 すると一瞬だけ不満そうな顔をしたが、直ぐに平静を取り戻す。


 「分かりました。タクシ様がそう仰るなら明日は別行動にします。そのかわり晩御飯は一緒にどこかで食べていただけませんか」


 得に断る理由もないので了承することにした。


 「そうですか!では楽しみにしています」

 

 そう言った瞬間、エマの方をちら見し、ほくそ笑んだ。

 それ受けたエマは怪訝な顔でエリスを見返す。

 まるで2人の間に見えない導線があり、火花を散らしているようだ。

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