11 街と商人
俺はエマの前で土下座している。
「ほんとに、すみません」
「いえ、タクシ様がしたいなら、私はいいですよ!」
エマは顔を赤らめながらそう言ってくる。
「そうだ、朝飯にしよう朝飯に」
そう言って話を無理やり終わらせる。
朝飯を食べた後。森から出る準備を整え歩き始めた。
エマの話では、ここから3キロほど歩くと森を抜け、さらに4キロほど進むと道のような場所があり、そこを西に行くと、サハラ王国領に属しているエルジナの街に着くようだ。
「エマ、そのエルジナの街は入るのに身分証のようなものは要るのか?」
「いえ、身分証があれば簡単に入れますが。身分証がなくとも検査を受ければ入ることができます」
「もちろん、金はいるよな?」
「はい、ですが後払でも構いません。タクシ様は、アイテムボックスにモンスターを収納されていますか?」
「ああ、している」
「それならば、商人に売ってしまいましょう。それで通行料位は払えるはずです」
「冒険者ギルドではだめなのか?」
「あそこは、ギルドに登録している者にしかモンスターを買い取りません。それに、登録すると戦争に参加する義務や指名以来などで国に縛られることになります。タクシ様がそれでいいなら冒険者ギルドに登録してもいいと思いますが」
なるほど、冒険者以外にめんどくさいな。
俺としては国に縛られるのはごめんこうむる。
だったら商人に売った方がいいな。
街でやる事を考えていると、森を抜けた。
周りには平地が広がっている。更に先に進むと草が生えていない道のような場所に出た。そして、西に行くと昼頃にエルジナの街に着いた。
エルジナの街は外壁に囲まれており、正面の門には人が並んでおり、兵士が検問をしている。
俺は門に入るために、行列に並ぶことにした。ついでに、リムはポーチの中だ。
「止まれ、身分書を提示しろ」
「俺達は遠くの村から来ました。ですので、身分証は持っておりません」
「では、そこの詰め所で検査を行ってもらう。おい」
その兵士が近くの兵士に声をかけると。こちらに来て詰め所まで連れて行かれた。
「さてまずは、このボードに触れてくれ」
30インチほどのボードに手を置く。するとそのボードから文字が表示されていく。
「もう、離していいぞ」
ボードには「年齢:16」「種族:人間」「状態:普通」「犯罪歴:なし」「職業:未定」
なんだこれ?
俺が困惑している間。兵士はボードに書かれた内容を紙に書き留めている。
「この街に来た目的は、移住か?それなら身分証を発行するが」
「いえ、俺達は旅の途中に寄っただけです」
「では、仮身分証を発行する。金はあるか?」
「今、手持ちはありません」
「なら後払いだな。滞在日数は10日間、それを越えると警備兵に捕まるから気を付けろ。更に滞在したしい場合は必ずここに来て進言してくれ。金は、そこの嬢ちゃんと合わして2000ラルだ。払えない場合は最悪奴隷に落ちるので気を付けてくれ。ほら、これが仮身分証だ無くすなよ。
後これは俺個人の忠告だが、坊主、そこの嬢ちゃんの格好は酷すぎだ、早めに着替える事だな」
俺は無事検問を終えた。
あと、リムの事を聞いてみたが、スライムぐらいなら大丈夫とのことだ。まあ、念のために外では、ポーチの中にいてもらおう。
俺は兵士のおっちゃんに聞いた。モンスターを買い取ってくれる場所に着き、受付に向かう。
「バルム商会にようこそ、本日はどのような、ご用件ですか」
「モンスターの買取をお願いします」
「それでは、こちらにお越しください」
受付嬢に案内され奥の倉庫にやってきた。
「こちらにお出しください」
空間収納から取りあえず。
ゴブリン30匹ほど出す。
「へえ!アイテムボックス持ち!しかもこの量は何ですか」
受付嬢が驚いた声で聞いてくる。
「何って、ゴブリンですが、何か問題がありましたか?」
そう聞き返すと、少々お待ちくださいと言い残し、慌てて倉庫から出て行く。
「あの、タクシ様」
「どうしたエマ」
「タクシ様、この黒いゴブリンはゴブリンジェネラルでは無いですか?」
「そうだが、言ってなかったか?」
「聞いておりません。それに、アイテムボックスが大き過ぎます。」
あ!そう言えばアイテムボックスの大きさはゴブリン15体程だって言ってた。
あれ、もしかして、やっちゃったか?
しばらくすると。受付嬢と共に30代くらいの男の人がやって来た。
「私は、この商会の主のラモスと言います。このたびは、等商会をご利用いただき誠にありがとうございます。良ければ、お名前を聞かせて頂けませんか」
はあ、面倒な事になった。
「俺の名前はタクシです。商会の主が何かご用ですか?」
「はい、実はうちの商会にタクシ様をお誘いしたく思っています」
やはりそれか、だが俺は商会などに縛られる気は無い。
「申し訳ありませんがお断りさせて頂きます」
「理由を聞いてもよろしいですか」
「俺達は旅人です、一つの場所に縛られる気はありません」
「そうですか、非常に残念です」
ラモスさんは非常に残念そうにしている。
まあ、少しぐらいは譲歩するか。
「しかし、この街にいる間はここの商会でしかモンスターを売らない事にします」
「本当ですか!」
「はい、実は明日にもモンスターを狩ろうと思っているので、その時はここに持ち込ませて頂きます」
まあ、実際は空間収納に入ってる物を出すだけなんだがな。
「判りました。アイテムボックス持ちを逃したのは痛いですが。そういう事なら」
どうやら引いてくれたようだ。
「ところで、タクシ様、欲しい物はありませんか?」
「どういう事ですか?」
「この商会には色々な物を売っております、タクシ様が欲しい物があれば、お安く売りますよ」
なるほど、流石商人。ここぞという時に商売話を持ってくる。
「それなら、この子の服一式と靴を売ってくれませんか」
「判りました。すぐ用意させましょう。おい」
ラモスさんが受付嬢に声を掛けると、エマの服の寸法を測り始めた。
「エマ、服と靴を選んできてくれ。」
「いいのですか?」
「ああ、旅には必要だからな」
その後、エマは服と靴を着替え、その料金を引いたお金、30万ラルが手元に渡された。
どうやら、1ラル=1円ぐらいのようだ。
「タクシ様またのご利用お待ちしています」
「はい、また来ます。それと、宿に泊まりたいのですが、手頃なところは知りませんか?」
「それなら、明日の轟亭と言う宿がいいでしょう、場所はこの商会を出て真っ直ぐ行くと着きます」
「明日の轟亭ですか、わかりました行ってみます」
バルム商会を後にし、宿に向かう。
しかし賑わってるな、周りには屋台が立ち並び、まるでお祭りのようだ。そう思っていると、不意に声が掛る。
「おい、兄ちゃんこれ買っていかないか」
「これは、何ですか?」
「なんだ、兄ちゃん知らないのか、これはビッグボアの肉を焼いてそこに極上のタレを付け串に刺したものだ。美味いぞ、どうだ、1本120ラルと言いたいところだが、そっちの嬢ちゃんの可愛さに免じて100ラルでどうだ」
「20本ください」
俺は即答する。
「お、気前が良いな気に入ったぜ!1本タダで持っていけ」
まじか!ラッキー。
「またよろしくな、兄ちゃん」
早速一本食べる。これはうまい、肉の柔らかな食感に噛めば噛むほど肉汁があふれ出し、それを引き立てるがごとくタレがいい仕事をしている。
「タクシ様、そんなに買い込んでどうするのですか」
「これは、アイテムボックスに入れておく」
「アイテムボックスですか?しかし、それでは冷めてしまいますが」
「まあ、それは後で説明するよ。とりあえずエマも食べろ、ほら」
エマに一本あげ、残りは空間収納にしまっておく。
ラモンさんが言っていた宿に到着した。中に入ると周りには丸いテーブルと椅子がたくさんあり、そこに座っている人達がメニュー表らしきものを読み何かを頼んでいる。どうやら、この宿は食堂も兼ねているようだ。
食堂を通り受付まで行くと女将さんが話しかけてきた。
「泊まりかい?それなら、一泊一部屋1000ラルだよ」
思ったより安いな。
「2部屋頼みます」
「タクシ様!私は床で構いません。命まで救っていただきその上食事まで与えていただいたのです。これ以上はだめです」
「エマは俺に一生使えるんだろ?だったら、俺の言うことは聞かなきゃいけないんじゃないか?」
「それは!!!その、そうなんですが・・・」
少しいじめすぎたか。まあ、自分の意見を言ってくれるのは嬉しいがな。
「女将さん、2人で泊まれるような部屋はありますか?」
「一泊4000ラルでならあるよ」
「そこをお願いします」
「はいよ」
お金と引き替えに鍵を貰った。
「部屋は2階の突き当りだよ」




