10 エマとお風呂
「助けていただき、ありがとうございます」
俺の目の前で少女が土下座をしている。
日本人の俺からすると、その姿は何ともシュールに見えた。
「いや、土下座しなくていいから、君の境遇を聞かせてくれ」
「はい、私の名前はエマです。奴隷をしています」
「奴隷?」
「はい、私は5歳の頃に親に売られ、ある貴族に買われました。そして、お屋敷で人間以下の扱いを受け過ごしておりました。しかし、私はその貴族に抵抗し反感を買ってしまいました。そして、罰としてこの呪いの森に入るように命令され、途中でゴブリンに捕まりここまで連れてこられました」
「呪いの森?」
「はい、ここは昔神聖な龍が住んでおられたと言われております、しかし国が貴重な龍の鱗欲しさに龍を討伐してしまいました。それ以来ここには討伐した龍の呪いがあると言われ、誰も近づかなくなりました」
なるほど、だからここには人がいなかったのか。
それにしても奴隷か、どうりで身なりも汚く、服もボロボロで靴も履いていない訳だ。
「事情はわかった。だが何故森に入った時点で逃げなかったんだ。監視でもされていたのか?」
「いえ、私の行動はこの腕輪で縛られ、逃げることができませんでした」
「腕輪?」
彼女の腕を見ると、そこには黒色の腕輪があった。
「これは外せないのか?」
「はい、これは契約魔法の一種で、外せるのは契約した者と、この魔法をかけた術者だけです」
なるほど契約魔法か、俺なら反物質のスキルで契約を解除する魔法を作れると思うが、さて、どうするかな。
この世界に人がいるのが判った以上、この世界の知識を知る必要がある。
契約を解除する代わりに、近くの街まで案内してもらうのもありか。
しかし信用できるのか?下手したら契約を解除する魔法を使えることがばらされ、大変なことになる可能性もある。
「そうか、何はともあれ今日はゆっくり休んでくれ」
「はい、ありがとうございます」
エマは横になると直ぐに眠りに就いた。
俺はその間いろいろ考える。
奴隷か、この世界やっぱり怖いな。久しぶりにお腹痛くなってきた。
俺は基本インドアで面倒事を嫌うタイプだ。今までは、なんだかんだで言って異世界の生活を楽しんできたが、奴隷とかいう話を聞くとさすがにこたえる。
『ご主人、大丈夫?』
俺が悩んでいると。念話でリムが話しかけてくる。
「ああ大丈夫だ、リム」
俺はリムを自分の膝に置き撫回す。
「リム、俺も今日はこれで寝るよ」
『ご主人、お休み!』
「お休み、リム」
目が覚めるとすでにエマが起きていた。
「おはようございます。ヤナギ様」
「いや、様付けはいらないから」
「しかし、ヤナギ様は貴族では?」
「どういうこと?」
「ヤナギ様は家名持ちで、世間のこともあまり知られていないようです。何処かの貴族様ではないのですか?」
なるほど、そういうふうに捉えたのか。それにしても、一般人は家名を持っていないのか。家名は隠した方がいいな。
「いや、俺は貴族じゃない、俺の住んでいた村は基本的に家名を持っていた。だからタクシと呼んでくれ」
「そうなのですか、それは失礼しました」
「いや、だから敬語もいらないから」
「いえ、それでも命の恩人には代わりありません」
いい子だ。この子なら俺が腕輪の契約を解除しても誰にも言わないだろう。
俺はどうやら、ヘルドトスの件で少し神経質になっていたようだ。
「エマ、お前はその腕輪外したいか?」
「????、どういうことですか?」
「そのままの意味だ。俺は腕輪の契約を解くことができる」
「そんなことができるのですか?」
「ああ、その代わり近くの街まで案内してほしい・・・」
「あなたに一生仕えさせていただきます」
「え!いや、近くの街まで案内してもらうだけで・・・」
俺がそう言う前にエマは膝を着き、まるで神様でも見るようにこちらを見上げてくる。
その時、俺は何を思ったか肯定の言葉を投げてしまう。
「そうか、よろしくな」
「はい!」
なんでこんなこと言ってしまった?俺は馬鹿なのか?それとも一か月の森の生活で頭がおかしくなったか?
「じゃ、契約魔法を解く準備をする。」
俺はそう言って、反物質のスキルを使い契約魔法を解くようなスキルをイメージをする。
できたか?
名前:ヤナギ・タクシ
年齢:16歳
種族:人間
状態:普通
ステータス レベル31→40
HP:420→520
MP:310→398
攻撃力:316→402
防御力:298→365
魔力:270→356
敏捷:283→371
器用:260→320
運:23→25
≪スキル≫
戦闘系スキル
剣術8→9 身体能力強化3→4 回避5→6
魔法系スキル
火魔法5→6 風魔法2 水魔法3 土魔法2→3
感知系スキル
気配感知3 危険感知2→3
補助スキル
鑑定2→3 超回復2
日常スキル
熟睡3 料理1
特殊スキル
空間収納 スキル整理 成長促進大 取得経験値5倍 スキル成長大 従魔 New契約無効
≪ユニークスキル≫
絶対適応能力 反物質
(契約無効)契約や呪いといったものを無効にできる魔法。但し1日に1回しか使えない。
*相手に使う場合は身体に触れている必要がある。
お、成功した!
「エマ、準備ができた。今から契約を解除する」
「タクシ様、今のは?」
「俺のスキルだ。このことは他の人には言わないでくれ」
「はい!」
名前:エマ
年齢:11歳
種族:獣人(犬)
状態:奴隷
ステータス レベル1
HP:9
MP:4
攻撃力:5
防御力:3
魔力:5
敏捷:6
器用:6
運:2
≪スキル≫
苦痛耐性3 料理2 裁縫1 身体能力強化1
なるほど、状態に奴隷がある。これを解除すればいいのか。
「エマ、解くぞ」
俺はエマの腕輪に触り契約無効スキルを使う、すると腕輪は砕け散り、地面にそのまま破片が落ちて行った。
成功したようだな。
「エマ、自分のステータスを見てくれ」
エマは自分のステータスを確認すると、その場で泣き崩れてしまった。
「タ ク シ 様 あ り が と う ご ざ い ま す」
鼻水を垂らしながらそう言ってくる。エマは小さいころに親に売られ奴隷として過ごしてきた。その苦しみは、俺が味わった物とは比べ物にならないものだろう。無理もない、俺はエマを慰める事にした。
しばらくすると、泣き止み、恥ずかしそうにしている。
「タクシ様、はしたないところを見せて申し訳ございませんでした」
「いや、俺がもしその立場だったら、とっくに心が折れていただろう、よく頑張ったな」
俺がそう言うとエマは顔を赤らめた。
「ありがとうございます」
「さて、泣き止んだところでお風呂に入ろう」
「お風呂ですか?そんなものどこにあるのですか?」
俺は空間収納にしまっていたお風呂を出す。するとエマは目を丸くしてこちらを見てくる。
「タクシ様は、アイテムボックスのスキルを持っておられるのですか!」
「アイテムボックス?」
「はい、アイテムボックスは空間に物を入れられるスキルで、持っている者はほとんどいません。ですので、普通は魔法がかかった袋を買うのですが、容量もそこまで無く、とても高価な物なのです。そのため、アイテムボックス持ちは、商人や冒険者にとても重宝されるのです」
「そうなのか?アイテムボックスはどれぐらい物が入るんだ?」
「個人差にもよりますが、ゴブリン15体ほどです」
なるほど、アイテムボックスか。まあ、俺のは空間収納で、容量も未だ困ったことがない程にはでかい。実際、昨日倒したゴブリン達も全部入っている。
「それより、お風呂に入れ、俺はあっちに行ってるから」
「待ってください」
俺が去ろうとした瞬間、エマが背後に抱きついてきた。
「どうした!」
俺は緊張のあまり若干、上擦った声になってしまった。
「タクシ様!一緒に入っていただけませんか?」
「何故?」
「タクシ様は私の主人になりました。ですので、私を隅々まで見る義務があります!」
義務なの!この世界では主人になったら、そいう風習があるのか?
俺は戸惑いつつ、下心に負け、了解してしまう。
「そういうことなら、一緒に入るか?」
「はい!」
エマは、満面の笑顔で答える。
俺は今、エマとともにお風呂に入っている。エマの肌は、奴隷をしていたと思えないほど透き通っており、髪もショートヘアの綺麗な黒色で、顔は若干幼さを残しつつも、大人の色気がある。そして、極めつけは茶色の尻尾。
ん?尻尾がある!!! というかよく見たら、頭に耳がある!!!
どういうことだ?
名前:エマ
年齢:11歳
種族:獣人(犬)
状態:普通
ステータス レベル1
HP:9
MP:4
攻撃力:5
防御力:3
魔力:5
敏捷:6
器用:6
運:2
≪スキル≫
苦痛耐性3 料理2 裁縫1 身体能力強化1 New忠誠1
(忠誠)自分から主人と決めた時に着くスキル。主人のために行動した時、ステータスにプラスが付く。
確かに、獣人(犬)て書いている。さっきまで、髪がぼさぼさだったので耳に気付かなかったのか。尻尾も尻尾で、ぶかぶかの服だったので気付かなかった。
それにもう新しいスキルがある。
「タクシ様どうかされましたか?」
俺がエマをじっくり見ていると、エマから声が掛る。
「いや、何でもない。エマは獣人だったのか?」
「はい、私の種族は獣人族の犬族です。は!もしかして獣人はお嫌いですか。」
エマは涙目でこちらを見てくる。
「いや、違うんだ。あまりに尻尾がきれいだったから、見てただけだよ」
俺は慌てて言い訳をする。
「そうでしたか!」
エマの顔が一気に明るくなる。
「よければ、触ってみますか?」
顔を赤らめ、尻尾をこちらに向けながら聞いてくる。
「いや、俺は・・・」
そう言おうとした瞬間、再び悲しい顔をしてくる。
「触りたいです」
俺はエマの潤んだ瞳に耐え切れなかった。
「では、どうぞ!」
俺は手を伸ばし尻尾に触る。やわらかい、まるで高級クッションのようだ。これはいい、俺は気がつくと夢中になり触っていた。
「タクシ様、激しいです、はぁ、だめ、そこは弱いです、これ、すごい、もう、だめです」
「は!これは」
気付いた時には、エマは恍惚な表情で湯船にもたれかかっていた。
やってしまった。
俺はその後、エマの体を拭き、寝かせた。




