Mission 1: 突入?
...ゆっくりと建物の角から道を覗いてみる。誰もいない。挙げていた平手を拳にし、俺の後ろに並んでいるパートナーにオールクリアの合図を送る。二人の手にはそれぞれアサルトライフルが握られている。道に出るのと同時に銃を構え、並んでいる店に沿って前へ進んだ。この辺りは商店街だったらしい。延々とガラ空きの店が並んでいる。住民たちは戦争を逃れるため、自分達の町を捨てたようだ。まあ、正しい判断だ。
さっきから町の反対側から爆発に銃声が聞こえていた。向こうでは激しい戦いが起こってるようだ。こっちはあまりにも静かで、少し不気味だ。窓からの狙撃に注意しながら前へ進んだ。パートナーも辺りに注意を払い、俺の後を付いてきている。目標のビルまで後少し。
敵支部のビルが見える距離にまで辿り着き、そこでまたビルとビルの間にある裏道に潜り込んだ。裏道を辿って、敵支部のビルに到着し、隣のビルの陰から裏口の様子を見てみた。四人の警備員が扉の前に立っていた。後ろのパートナーに、また合図を送った。手を上げ指を四本立てた。パートナーが了解したと頷く。裏口からは無理だな。裏道に戻り、ビルの横腹に出た。窓が二つある。警備はない。よし、ここだな。
姿勢を低くしながら、ビルの壁に素早く近づいた。ここでアサルトライフルにサイレンサーを付けた。銃声でさっきの警備員達に気付かれると面倒だ。パートナーも同じようにサイレンサーを銃に装備して、俺の次の動きを待っていた。さて、その次の動きだが、これがまた緊張してしまう。ゆっくりと頭を上げ、窓から覗いてみる。
誰もいない。思わず安堵の溜め息を吐いた。パートナーに頷きオールクリアと伝えた。姿勢を少し上げ、窓を開けてみる。鍵は掛かっていないようだ。不用心だな。音を立てないよう、ゆっくりと窓から突入する。中にはテーブルと椅子があるだけで、危険な物は何もない。廊下へ通じているドアが一つある。窓をトントンと叩いた。パートナーが部屋に入り、ドアの際へ素早く移動した。ポケットから尾が生えてる小型モニターを取り出した。尾は小型カメラであり、ドアと床の間にこのカメラを滑り込ませた。慎重にカメラを動かし、ドアの向こう側の様子を確認している。モニターから顔を上げ、パートナーは指を一本を立てた。一人か、楽勝だな。一本の指を横に動かす。歩いている、か。装置をポケットに仕舞い、パートナーがドアノブに手を付けた。俺の顔を見る。俺は頷き、了解したと伝える。銃口をドアに向けた。パートナーが俺の顔を見ながら1、2、3と頭を動かし、ドアを素早く開く。同時に俺は銃を発砲し、丁度ドアの前を通っていた兵士を倒す。やつには、何が何だか分からなかっただろうな。
そのまま廊下に出て、裏口まで行く。内側からの鍵を閉めてから、階段まで進んだ。階段の上に誰もいないのを確認してからゆっくりと上った。音は一切立てない。広い部屋に辿り着き、辺りを見回してみた。部屋には一つだけ廊下へと通じている出口があった。ドアはない。出口の両側に俺とパートナーが張り付いた。角から覗いてみると、廊下はもう一つの部屋へと繋がっている事が分かる。おそらく、あの部屋にターゲットがいる。廊下の両側には個室へ繋がっているドアが二つずつあった。気付かれていないようだな。さて、任務を終わらせるか。
廊下へ一歩踏み出した。途端に、一番近い二つのドアが開き、敵兵が登場した。
「しまった!」
敵のマシンガンが火を噴いた。横に跳び、なんとか蜂の巣にされずに済んだ。
パートナーが舌打ちをした。
「ちっ、さっきので気付かれたか?!」
「ったく、面倒だ!」
銃だけを角から出し、相手の方向に銃弾をぶちまける。弾が無くなり、新しいマガジンを入れている間に、今度はパートナーが敵に弾のシャワーを浴びせる。しかし、どれも当たっていない。敵がまた撃ってきて、パートナーは銃を引っ込めた。相手が弾切れになるまで待つ。ついに、相手の攻撃が止み、パートナーが再び見ずに銃撃を開始した。相手はやはり、部屋の中に身を隠して銃撃を避けていた。その隙に、廊下の入り口に寝転び、俺は左のドアに狙いを定めた。パートナーが攻撃を止めた。その瞬間、二人の敵が両側から体を出し、次の攻撃に移ろうとした。だが、そうはさせない。出てきた瞬間、俺は左の敵を撃ち、弾切れの振りをして攻撃を止めたいたパートナーが右の兵士を倒した。
「ふう。」
銃声が止み、廊下は静かになった。下からドアを突き破ろうとしている警備員が聞こえる。さっさと終わらせるか。
四つの部屋が空だという事を手早く確認してから、俺たちは廊下の向こうにある部屋に入った。部屋には大きな机と後ろを向いてる高級そうな椅子があった。入り口からだと、誰が座っているのか分からなかった。さあ、ゲームオーバーだ。銃を構えながら、椅子の背もたれゆっくりと手を伸ばし、椅子をこっちに回す。
人形だ。
銃の構えを下げ、溜め息をついた。机の上にあった電話が鳴った。受話器を取り、耳に当てた。渋い声が聞こえてきた。
「オーケー、任務完了。訓練終了だ。」