1.冴えないヲタクはどうして転生するのか
初投稿です。よろしくお願い致します。
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俺は勇気を出してなまった体に鞭打ち、子供を突き飛ばす。
世界がスローモーションになる。
目の前には眩い光と叫び声、ブレーキとクラクションのけたたましい音。
激しい衝撃が、痛みが、体を襲う。
血の味が口の中に広がる。
眼前には血の跡のついたトラック。
俺は恐怖の感情を覚える前に意識を失った。
気がつけば知らない天井。
ここはどこだろうか。
病院? それともあの世なのか?
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こちらの文章は、みなさん一度は目にしたことのあるテンプレの一つ、トラック転生の一例だ。
大抵の場合、そのあと神様がチートな能力を与えたり、赤ん坊に転生したりする。
ちなみに転生にはいくつかの種類がある。
一つが先ほど挙げたトラック転生タイプ。
女の子を庇って刺されたり、または事故によって短い生涯を終える不遇で理不尽な始まりが共通点。
その中でも神様がチートな能力をくれたり、ものすごい魔力を秘めていたり、現代知識を引き継いでみたいなタイプに分類される。
最近だとゲームのキャラやら悪徳領主の息子に憑依するも流行りだ。
そんな理不尽な目にあう彼らのほとんどがオタク、しかも非リア充という特徴がある。
引きこもりで久しぶりに家から出たら転生が割と多い。
ではどうしてオタクが多いのか。
一つは読者の想像がつきやすく、比較的自分に近いため、共感しやすいというのがある。
小説家になろうのワナビたちのほとんどは文学としての作家ではなくラノベ作家での立身を目指している。
もしもラノベでないのであれば小説家になろうではなくて、応募にかけるか、直接会社に持ち込みをかけるだろう。
小説家になろうに三島由紀夫の小説を連載したとしても間違いなく誰も見向きしない。
エロは別かもしれないけど。
もう一つは作者の技量。
例えば主人公が新聞社の記者で異世界に飛ばされて、その世界で新聞を発行する。
この物語を書くとすると多くの弊害が生まれるのだ。
まず記者としての文章能力、取材の方法、情報網の構築方法。
これらは記者でなければ知りえないことであり、想像で書くのが割と難しいのだ。
もちろんプロの小説家は取材などを通してリアルへと近づけていくのだが、小説家になろうの作家たちは学生だったり仕事をしていたり、たりない時間をひねり出しながら文章を書いているのである。
要は取材の時間が足りないのだ。
もし運よく取材の時間を捻出できたとしてもそれが読者に受けるかどうかなんてわからない。
だから主人公の設定に偏りが生じる。
オタクなら共感を得やすいし自分もオタクだ。
設定を練りやすいという事は物語を作る関係上、高いアドバンテージとなるのだ。
これは指輪物語のような正統派系ハイファンタジーが少ない原因の一つでもある。
主人公は実在しない世界の人間なのだ。
現代の常識なんて通用しない。
長寿であれば死生観も変わるし魔法があれば宗教観も変わる。
もちろん行動も言動も全く変わってくるだろう。
そんな世界を矛盾なく作るというのは結構難しいのだ。
ではどうして凄い能力を得る、ないしは現代知識による無双が付け加えられているのだろうか?
答えは簡単。
一般人のままで話を作るとなると傍観者の立場でしか物語が進まないからだ。
普通に異世界で生活して勉強してでは日常と大差ない。
せいぜい背景と文化が変わっただけだ。
だから何か事を起こすための起爆剤が必要なのだ。
それがいわゆるチートだ。
普通の人より優れている程度でいいじゃないかと思う方も多いだろうがここにも意外な難しさがある。
まず少し優れている程度では物語を作れないのだ。
ヘラクレスが少しマッチョな一般人ならまず英雄とはならない。
もちろん劉邦のようにそこらにいるようなDQNが仲間を集めて大義をなしたものもいるが彼はカリスマと幸運に関してはチートレベルだ。
そんな彼ですら武力、知力共にチートな項羽の人気にはかなわない。
努力でどうにかと言う人もいるだろうが残念ながら小説は努力の描写をするのに向いていない。
漫画やアニメなら修行シーンを挟み込んでも動きがあるから飽きがこないのだが小説では動きを出すのが難しい。
成長物語を書くにも冗長になりがちで読者がついていかないのだ。
現代知識による無双も同じようなものがある。科学の遅れのある世界に飛ぶ場合、知識は何もない主人公にとって最高のアドバンテージだ。
おまけに馴染み深いものも多いので共感も得られやすく、ある程度の地位にいればその知識を遺憾なく発揮できるだろう。
ただこの現代知識には割と問題点が多い。
一つは現代知識があまり役に立たない可能性があるという点だ。
小説家になろうでは黒色火薬の開発による銃器が必ずと言っていいほど活躍する。
しかし肝心の黒色火薬の開発はwiki丸呑みの知識のため、どうしてもリアリティが失われてしまう。
そもそも黒色火薬の作り方なんて一般人が知っているものだろうか?
それにその世界で魔法があるのであれば、魔法で代替するような技術が開発されている可能性もあるはずだ。
大抵の場合、魔法も存在する世界では弓矢も存在する。
道具で遠距離から狙撃するアイデアは存在するわけだから魔法で弓を強化するなり筒に石を入れて魔法で発射するようなものが開発されていてもおかしくないのだ。
大体魔法があるのなら魔法で狙撃すればいいのでは? というのもあるかもしれない。
そうなると魔法と科学を差別化するためにも利点欠点をはっきりさせる必要が出てくる。
そもそも我々の現代知識は基本的に先人の知識の積み重ねによって成り立ち、役に立っている。
異世界に生半可な知識を持ってきたからといって、役に立つかは未知数なのだ。
異世界で現代知識無双に違和感を覚えた人も多いと思うのだがきっとそんな矛盾を感じ取ったからなのではないか?
その結果、すごい力をもらった、秘めていたに落ち着いてしまう。
すごいチートをもらうという展開は、何も取り柄のない主人公が活躍できるようにするための苦肉の策ともとれるのだ。




