勇者
魔王と俺は凄まじい剣の攻防戦を繰り広げていた。
「良いぞ!良い勢いだ!」
「うおおお!!!発現!爆雷波!!」
「チッ!発現!シールド!!」
俺の爆雷波と剣による同時攻撃を完全にシールドは防ぎきっていた。だが俺はそうなる事はわかっていた。確かめたかった事は他にある。魔王がシールドを解除し攻撃しようとした瞬間再び俺は爆雷波を放った。
「なっ!?発現!破壊!」
魔王は俺の爆雷波を闇の球によって相殺した。衝撃で俺と魔王は吹っ飛んだが、コレで確信できたことがある。
「お前のそのシールド。やはり連続で使うには少々間を空けないといけないようだな。」
「仲間をやられて動揺してるかと思いきや、なかなかみてるじゃないか。だがそれを知ったところで私の勝利は揺るがない。」
確かにシールドにインターバルがあるからと言って俺の出来る攻撃は限られてくる。前回魔王と戦った時は3人仲間がいて役割分担出来たが、今回は1人だ。しかも魔王は前回より遥かに強い。とにかく不動をいつ発動するかが鍵になる。
「なにやら考えているようだが、無駄な事だ。絶対的な力の前ではな。発現、マグマ!」
「くっ!!発現!爆雷波!!」
魔王が召喚した溶岩に対し、俺は爆雷波を放った。しかし溶岩に僅かにヒビが入るだけで溶岩はそのままこちらに迫り、衝突した。
「さて、押し潰れたか?」
「発現!爆雷波!」
「!!発現!シールド!」
溶岩は真っ二つに割れ、その間から爆雷波が魔王を襲った。しかしシールドによりその攻撃は無意味に終わった。
「これでも無理か……。」
「ほう、貴様どうやってマグマを割った?」
「教えるわけ、ねーだろ!」
俺は魔王との距離を詰め、再び斬撃戦へと持ち込んだ。マグマはかなり大ぶりな技だ。近い距離で攻めれば、魔王は出す暇がない。
「ふんマグマを出させないつもりか、小賢しい。発現!破壊!」
「また俺との距離を離すつもりか!そうはさせない!発現!瞬撃!」
魔王が放った闇の球を俺は瞬撃によるカウンターで剣で真っ二つに切り裂き、そのまま魔王へと一撃与えた。
「ぐっ!!マグマも割ったのはその技か!恐らく自動のカウンター技!私に一撃入れるとは!」
「くれてやったぞ、一撃。」
「生意気な。だがシールドは破れまい。発現!魔重!」
「ぐっ!!」
俺の身体は魔重により一瞬とてつもなく重くなった。そしてそこを狙い、魔王は剣を背中に突き刺そうとしている。発現を言う暇もない、魔重を解除された一瞬で俺は敢えて避けず、剣を魔王の腹へと突き刺した。
「ぐあっ!!な、なに!?まさか避けぬとは!!だが確実に貴様も致命傷を食らったはず。」
「ぐっ!!ふふ、それはどうかな。ゴホッ。」
「な、なぜ私の剣が刺そうとした位置からこんなにずれている!?いや!動いたのは貴様か!しかしあの発現すら言えない一瞬で、どうやって!?ぐっ!」
「さ、さぁな。」
俺は理由はわかっていた。それは伝説の靴のおかげである。恐らくあの一瞬で靴は反応し俺への致命傷を避けたのだろう。俺もそれを信じて敢えて攻撃に転じたからな。だがずいぶんとダメージを負ってしまった。魔王も刺した腹から血が出ている。
「く、くくくく。こんなとんでもない事をする勇者は初めて見たな。」
「お、お前ほど嫌な魔王も初めてだがな。ぐっ、はぁはぁ……。」
「減らず口を。お互いもはやそこまで動けるわけでもない。だがこの勝負、もはや私の勝ちは決定した。」
「な、なにを!?」
「お前は強い、認めてやろう。だがお前は私を殺す決定打が無い!前回私を倒した2連撃のあの強力な技。そもそも私は今回30秒も時間をやる事はない。」
「……。」
「そして仮にあの技が発動できても一撃目でシールドを破壊、二撃目で私を攻撃というコンボは出来ない。なぜなら、二撃目が来る前に私はマグマを放てるからだ。お前はマグマを破壊してくるだろうが、その頃には私は再びシールドを貼ることが出来る。」
確かに魔王の言う事は正しい。それは俺も思っていた。人数も1人しかおらず、手の内もバレている。
「前回は二撃目という存在を知らぬため油断してしまったが、今回はそうはいかぬ。致命傷ではないがお前のその傷も浅くは無い。いずれ身体が動かなくなるだろう。その時がお前の終わりだ。」
今回の魔王に恐らく油断はない。二撃目も通用しないだろう。だがそれしかもはや方法はない。
「ふん、それでもやる気か。まずは30秒時間を作ってみせろ!!」
「くっ!発現!爆雷波!」
「発現!破壊!」
俺は巻き上がった爆煙に隠れようとした。
「そんな事で隠れられると思ったか!?」
「くそっ!!」
魔王にすぐに見つかり剣の嵐となった。なんとか突破口を見つけられないか探していた、その時だった。魔王に向かって、矢が放たれた。魔王はその矢を掴み取り矢の放たれた方向へと目を向けた。
「ヤーマト♡」
「あ、あれは……コトリ!?ゼェゼェ……。」
「ダークエルフか。ふん雑魚め。」
そこにいたのはダークエルフのコトリだった。まさか俺を助けに来たのか。こんなとこまで!
「ヤマト!!事情は大体わかってる!!時間稼ぎをするわ!!30秒で良いわよね!?発現!弓嵐!」
「ゼェハァ……くっ!!すまない!!頼む!!発現!不動!」
「30秒……持つかどうか、試してみろ!!」
魔王は俺が咄嗟に攻撃するのも考え、大ぶりなマグマは使えないようだった。それもありコトリはやられながらもなんとか時間を稼いでいた。
「ちっ!ちょこちょこ動き回りおって!!」
「はぁはぁ……くっ、まだ30秒経ってないの?なのにこんなダメージ食らうなんて……。発現!ファイア!」
「捉えたぞ!発現!魔重!」
「きゃっ!?」
「コトリ!!」
コトリは動けなくなり、その隙に剣で斬られアスリがいる方向へと蹴っ飛ばされた。そして、剣を腹に突き刺され床に貫通し、身動き取れなくなっていた。
そして時間が来て俺の手は光り輝いた。
「うあああ、あああ……!」
「時間が無い。お前はそこで勇者が死ぬのでも見ていろ。」
「ゼェゼェ……死ぬのはお前だ。溜まったぞ。」
「溜まったからなんだというのだ。先ほどの話は聞いてただろう。お前の攻撃は効かぬ。お前の身体の限界も近い、それが最期の一撃だろう。」
「はぁはぁ……倒して、見せる……。」
「気に入らんな。まぁ良い、ここまで楽しませてくれた事には感謝しよう。だが、死ね。」
「うおおおおお!!」
「馬鹿めが。発現!シールド!」
俺の剣による攻撃は、まず魔王のシールドを破壊した。
「ふん、発現、マグマ!」
「伝説の腕輪!!」
俺の右手は再び光り輝き、溶岩を真っ二つにした。その後手の光は消えてしまった。
「くくくく。さぁ終わりだ!発現!シールド!」
「ぐっ!コトリ!!!弓を打て!!アスリが持つ伝説の弓矢を俺に!!!」
「!?こ、これ、ね。もって、わ、私の身体!!はあああああああ!!!発現!!弓一閃!!」
「なっ!?なんだ!!?」
アスリの近くで剣に刺さっていたコトリは落ちていた伝説の弓矢を俺に放った。それは俺の身体へと刺さり、途轍もないエネルギーが俺へと注ぎ込まれた。
「活性化させるエネルギーのようだな!だが!先ほどの技ほどの威力はない!!それではシールドは破れまい!!」
「最初なら壊せなかったかもしれない。だが俺とお前、戦ってからどれだけ剣を交えたかな。恐らく今までにない斬撃の嵐だ。」
「なんの話だ!!?」
「伝説の剣は!!!斬るほどその斬れ味を増す!!!終わりだ!!!魔王オオオオオオオオオ!!!!」
俺の渾身の一撃は魔王のシールドを真っ二つに切り裂き、そのまま魔王の身体も真っ二つにした。
「ぐ、ぐああああああ!!!」
魔王の身体は、切り裂かれたところから灰になっていき崩れていった。
「………また、勇者に負けるとは……。しかもあいつの剣で……。くくくく……つまらん……。」
そして魔王は塵となって消えた。
「ゼェゼェ……。コトリ……。」
「……。」
「……コトリ?」
俺はコトリを見た。剣が腹に突き刺さっている。そして息をしていなかった。俺は周りを見た。ミミ、アスリ、ヨミ、みんな死んでしまった。
勝った先に希望などなかった。
俺が絶望しているとあたりがいきなり明るくなり、周りの景色が雲だらけに変わった。
「ここは……。」
「久しぶりじゃな。ヤマト。」
白髪だらけの髭もじゃオッサン。良く見たら羽生えてる。しかも杖も。って事はここは。
「天国……。」
「そうじゃ。」
「どういう事だ?死んだのか?俺は。」
「いや死んではおらぬ。魔王を倒したからここへ呼んだだけじゃ。」
「オッサン!!なんで俺の事勇者なんかにしたんだよ!!確かに退屈とは言ったけどさ!!」
するとオッサンはヒゲをいじりながら答えた。
「それはお前が勇者たる器を持っていたからじゃ。」
「どういう……?」
「三年前の大地震の時、いろいろとあって本来の勇者になるはずのものが転生出来なかったんじゃ。」
「それで?」
「それで儂は困っていた。なにせ勇者がおらんと魔王に滅ぼされてしまうからのう。そしたらお前が現れた。」
「俺?」
「そうじゃ、助けたいという思いだけで犠牲になってまでも人を助けたお前は正に勇気ある者、すなわち勇者にふさわしい。じゃから転生させたのじゃ。イレギュラーだったがな。」
「そんなわけわかんねえ事で俺に世界の命運預けたのか?」
「ああ。じゃが、実際お前は魔王を倒した。」
「……けど皆死んじまった……。」
するとオッサンはニカッと笑った。
「その事で呼んだんじゃよ。お主の事じゃ。人がたくさん死ぬのを見ていられなかったじゃろ。魔王を倒したボーナスじゃ。生き返らせてやる。」
「い、生き返らせる、ってそんな事出来んのか!?」
「お主が張本人じゃろ。」
「た、確かに!!でも俺は現世じゃ転生出来なかったんじゃ!?」
「お主はイレギュラーだったからの。まぁゴチャゴチャうるさいわい。生き返らせたいんじゃろ?」
「ああ!!もちろん!!」
「いい答えじゃ。」
そう言うとオッサンは杖を振りかざし何かをやり始めた。そのあたりで俺の意識は薄くなりやがて途絶えた。
「……様!!……マト様!!」
う、ん……?
「ヤマト様!!!」
「うわあっ!!」
目を開けるとそこにはミミがいた。周りを見るとアスリもヨミもコトリも生きてそこにいた。
「みんな……!!」
「ヤマト!!」
「ヤマト!!」
「ヤーマト♡」
みんな急に俺に抱きついてきた。いつもだったら暑苦しいけど、今日はその温もりを感じて、涙が出てしまった。
「はて?儂は死んだような……。」
「王様!!私も死んだような気がしますぞ!!」
周りの人々も徐々に起き上がり始め、そして魔王がいない事を認識し、安堵の表情を浮かべた。そして俺に気づいた王様が近づいてきた。
「勇者殿、これはもしや?もしや?」
「ああ、魔王は俺が倒した。もういない。」
すると王様は歓喜の表情を浮かべ壊れた城から見える民衆に向かって言った。
「皆の者!!よく聞け!!魔王の恐怖は去った!!ここにいる、勇者ヤマト殿が倒したのだ!!!」
民衆の一人ひとりがその言葉を噛み締めるように聞き、やがてその言葉の意味を理解した。
「「「うおおおおおおおおおお!!!!」」」
「勇者!!!」
「勇者様ああ!!!」
「ありがとおおおおお!!!」
「よかった!!よかった!!」
そしてその知らせは各里へと伝えられた。世界は歓喜の渦に呑まれ勇者ヤマトは伝説に名を残す事となった。




