業
【ジパング王国】
ジパング王国王室では魔王が現れたという情報が国中を走り回っていた。
「王様!!魔王が現在こちらに向かっている模様!」
「な、なんじゃと!?それで!?」
「先ほどまで竜族の里にいたようです!!」
「まずいではないか!勇者殿は!?」
「勇者殿はオーガの里付近にいるとの事です!!」
「くっ!このままでは我が国が危ないな!!おい!奴隷に武器と防具を持たせ、兵士と一緒に前線に立たせろ!!それでしばらく持たせるのだ!!」
「はっ!!」
国中の奴隷を集め、それらに武装を施していった結果、異変に気付いた国民が騒ぎ始めた。
「なんだ!?なんで奴隷が武装してるんだ!?」
「しかも国中の兵士も集まってんぞ?」
「戦争が始まるんじゃないのか?」
「まさか!そんな噂は聞いてないぞ!!」
「さっき、風の噂で魔王が復活したって聞いたぞ。」
「魔王!?魔王ってあの魔王か?」
「魔王なんて実在したの?」
「ありゃおとぎ話の世界だろ?」
「噂だとドワーフの里は潰されたらしいぞ。」
「ドワーフの里が!?」
「じゃあもしかしてこの武装って、魔王が迫ってるからなんじゃないのか!?」
「え!?魔王が迫ってるのか!?」
「魔王が来るらしいぞ!!!」
「魔王が来る!?逃げた方が良いだろ!!」
「王室は何か発表しろ!!」
「そうだそうだ!!」
国は確実に混乱していた。
「まずいです王様!このままでは国民が暴動を起こしますよ!!」
「仕方あるまい!とにかく今は魔王じゃ!!奴隷と兵士は門の前に配置したのか!?」
「ええ、全軍配置済みです!」
「そうか。奴隷も元は兵士の者が多い、前回のファントムとの戦いでは奴隷を使わなかったが、今回は違うぞ!あの人数ならいかに魔王でもただでは済むまい!」
その頃魔王はジパングに向けて飛んでいた。
「私が生きていた頃と比べ、ずいぶんと景色も変わったが、各里の位置だけは変わってないようだな。」
「止まれ!!」
その時急に何者かの矢が魔王を襲った。魔王はそれを右手で掴み、飛ばしてきた方向に投げ返し、その付近へと降り立った。
「今の矢の技術……何者だ?」
「危ない危ない。自分の矢に当たるところだったわね。さすが魔王様ってとこかしら。」
「私に流れ矢が来そうだったじゃない!!」
「まぁ良いじゃない。当たらなかったんだから。」
そこにいたのは、エン・ヤリフとナラギ・ドラヌルであった。
「貴様らは……エン・ヤリフとナラギ・ドラヌルか。何故ここにいる。」
「何故ってアンタを止めに来たからに決まってるでしょ!!」
「そうよ、私たちはココで貴方を倒すつもり。勝負よ、魔王様?」
「ふふふ……ははは。ハーッハッハッハ!!」
魔王は高らかに笑い始めた。それは心の底からおかしい事が起きているといった表情であった。
「な、何よ?何がおかしいの?」
「幻影のお前らが魔王に勝てるはずあるまい!!」
「そ、そんなのやってみなきゃ、わからないでしょ!」
「貴様らしかいない所を見ると、他のファントムは死んだようだな。」
「ええ、そうよ。」
「ふん、そうか。貴様らファントムは何のために転生させたのかわかっているのか?私を復活させるためだぞ?それに刃向かうとは……愚かな。」
「べ、別にアンタを復活させるために転生したかった訳じゃないわよ!!」
エンとナラギはファントムではなくなったとはいえ、魔王の威圧感に押し潰されそうになっていた。
「そもそも何故貴様たちを転生者に選んだかわかるか?」
「それは……確か生前の罪があるから。」
「まぁそれも確かに真実だ。生前の罪の大きさは確かに大事だ。そしてもう1つ、それは死ぬ時にどれだけ後悔したか、という点だ」
「後悔……。」
「そうだ。ナラギ・ドラヌルは強さをエン・ヤリフは愛情を、それぞれ求めながら死んでいった。その後悔こそが転生するのには必要だ。」
エンとナラギは互いに思い当たる節があるようだった。
「だが失敗だったようだな、私に刃向かうとは……。まぁ良い、ココで失敗は消しておこう。」
「来るよ!!発現!竜の波動!」
「わかってる!!発現!!波打つ矢!」
エンとナラギは互いに能力を発動した。それに対して魔王は闇の剣を1つだけ出現させ、対抗した。エンの波のように伸びてくる無数の矢を、魔王は1本1本切り落とし、ナラギの竜の波動は竜の口元に対して水平に剣を構えてそのまま突き進み、真っ二つにしてしまった。そしてエンの元へと移動してエンを斬り捨てた。
「うぐっ!!……あ……。」
「え、エン!!!」
「少しでも勝てると思ったか?」
「く、くそっ!!発現!竜巻!」
「発現、血の渦。」
ナラギが放った竜巻に対し、魔王の血の渦は真っ赤な竜巻のような形をしており、ナラギの竜巻を飲み込んでナラギを巻き込み高く突き上げた後落下させた。
「ぐ、ぐっ!ゴホッ!」
「呆気ない。地獄へと還れ」
魔王は闇の剣をナラギの心臓へと突き刺し、ナラギは息絶えた。
「さて、思っていたより時間を食ったな、急ぐか。」




