ひとり
最初は1人だった。
物心つく前から、親も兄弟も友達も…誰もいなかった。ただ、周りには俺と同じような身寄りのない子供がいて、一緒に羽庭園と呼ばれる施設に寝泊まりしていた…。
俺の中の最も古い記憶。それは、羽庭園の父…羽庭 吉三が、毎朝園の子供たちの頭を一人一人撫でながら、笑顔で話しかける。背の高い彼は、小さかった俺たちの無線に合わせ、いつもしゃがんでいた。もちろん、俺にも同じように接した。
でも…俺の中には、孤独という言葉がずっと付きまとっていた。
ある、俺が5歳だった日…いつものように一人で、いつもの石のうえで、いつものようにぼーっとしていた。お昼過ぎ、飛行機雲を見つけた直後、吉三さんが俺に話しかけてきた。
「優磨くん、こんにちは。今日も一人なのかい?」
俺は黙って頷いた。
「ほら、あそこで男の子達がドッチボールをやってるじゃないか。仲間にいれてもらったらどうだい?」
俺は黙って首を振った。
「友達が欲しくないのか?」
俺はなんとも言えなかった。欲しくないわけでは無いし、だからと言って苦労してまで欲しいものではない。
吉三さんは、優しく微笑むと、言った、
「最近、園に新しい子が来たんだ。もし良ければ、仲良くしてあげて欲しい。」
そして、俺の頭を軽くポンポン叩くと、去って行った。
隣の遊戯室に、吉三さんの言っていた『新しい子』がいるらしい。さっきも言った通り、俺は友達という存在に、あまり興味がなかったが、少し気になったので、軽く見にいくことにした。もっともな理由としては、何よりも暇だったのだ。
その人は、一目で分かった。遊戯室の端っこで、ただ一人椅子に座って泣いている女の子がいる。小柄そうな彼女は、うずくまっているため、より小さく見え、とても同い年には見えないサイズだった。
俺はその子を、一目見たら戻ろうと思っていた。しかし、俺の目は、彼女を捉えて離そうとしない。ただ、ひたすら泣いている彼女に、なぜか親近感が湧いた。『孤独』彼女もそれをまとっている…。
どうも気になる。明日も来てみよう。
私、天篠くりこの初小説となりますが、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m