侵略
元のセンター王国は、大きな川を挟んでイースト共和国とサウス王国に分かれています。その川は向こう岸が見えないほどに広くて、まるで海にような川です。
ずっと前の王様が1本の橋を掛け始めました。山から削り取った巨大な岩を何百何千何万も、国中の者が運んで来ては、それを土台となるように川に沈めて少しづつ少しづつ造ったのです。出来上がるまで何百年も掛かり、何千人もの民が事故で死にました。そして、先代王様の時にやっと完成したのです。その時の皆の喜びようは、それはそれは凄いもので、王様も民と一緒になって涙を流し、誰かれ構わず抱き合って喜び、一週間もの間、国中がお祭り騒ぎでした。
先代の王様が生きていた頃には、もっと橋をかけようとの意見もあったのですが、あまりにも年月が掛かり過ぎて、そして危険の伴なう作業のせいで見送られました。ですから、今でも橋は一つしかありません。
スカイ女王の手紙を読んだレイン女王は我慢しました。姉が自分達で犯人を捕まえ、自分達で裁くと言うのですから、それを無視して、軍に橋を渡らせる訳にもいきません。
数週間後、再び姉のスカイ女王から手紙が届きました。それを読んでレイン女王は言いました。
「龍造、お前も読みなさい」
「はっ、よろしいのですか?」
「構いません」
親愛なる妹レイン女王。残暑もようやっとやわらぎ、秋の風が気持ちの良い季節となりましたね。貴方は子供の頃よりこの季節が好きで、山に川にと男の子のように走り回っていたのが昨日の事のように思い出されます。あの頃がとても懐かしいですよ。
さて、過日、貴国に侵入せしめ、あろうことか貴国の民に狼藉をはたらき、更には火を放って殺害を企て実行した二人組についは、我が共和国の軍で捕らえました事を、まずは報告します。取り調べの結果、全て事実と判明しました。イースト共和国を代表して深く謝辞を申し上げると共に、お亡くなりになった貴国民に対し、改めて哀悼の意を表します。
罪人二名に対しては、即日、鞭打ち100回の刑を執行し、罪の重さを噛みしめさせたところ、号泣しながら繰り返しの反省の弁を述べておりました。心と身体に深い傷を負った貴国の幼き女児が、なにとぞ溜飲を下げてくれるのを希望して止みません。更には、このような不幸な出来事によって両国の友好と、姉妹の愛情にひびが入らないことを心から祈るしだいです。
手紙を読み終えた龍造が顔を上げたのを見て、レイン女王が言いました。
「あの流れの急な川を越すのは難しい。何処から侵入されたか分かったのか?」
「はい。一箇所だけ川が二股に分かれ、再び一つになっている場所を見つけました。おそらくは、二つに分かれた細い所を舟で渡ってきたのだと」
「そうか。勿論、警戒しているのだろうな」
「はい、既に」
それから一年後の事です。イースト共和国から二人の男が、月も出ていない真っ暗な夜に舟を使ってサウス王国に侵入して来ました。
それは例の男達です。100回の鞭打ちの刑を受けたのですから、その傷が癒えるのに1年も掛かったのでしょう。それにしてもまだ懲りないのか再びサウス王国の女を狙って来たようです。
闇に紛れて川岸に上がった二人の男が辺りを窺っています。そうっと音をたてないように舟を岸辺に引っ張り上げて、振り向いたところでビクっと動きを止めました。
「捕らえ! 逃がすな!」
それは、剣を抜いた数十人のサウス王国の軍の者です。一斉に剣を振りかざして二人の侵入者に襲い掛かかったのです。
「待て! 殺すな! 生きたまま捕らえるんだ!」
何本もの剣が二人の男の身体を突き刺そうとする寸前で止まりました。
剣を持って殺気を漲らせている軍の者達が、声の方を振り返って言います。
「なぜだ! なぜ止める! こいつら、また我が国の女を狙って来たんだぞ!」
「そうだ! 13の娘に酷い事した奴らだ。あれからあの子は、男が怖いと言って家から出て来れなくなってる。そんな奴らを助けるのか! 虎雄、どう言うつもりだ!」
声を掛けて皆を止めたのは、レイン女王の側近をしている龍造の弟で、虎雄という者でした。
虎雄はまだ22歳の若い軍人ですが、兄の龍造よりも更に背が高く胸板も厚く、まるで闘神のような男です。その虎雄が再び言いました。
「女王陛下と、あの子が決める」
剣を抜いていた者達は、虎雄のその言葉を聞いて、「あっ」と声をあげて、力なく剣を持つ手を下ろしてゆきました。
広場の台の上で裸で縛られている二人の男の周りには、サウス王国中の女が集まっています。一番前にはレイン女王の姿も見えます。そして、その隣には、ずっと家から出て来られなかったあの娘が、ギッチリと真一文字に口を閉じて、裸で縛られている二人の男を睨みつけます。
猿轡をかまされ、くぐもった声を漏らす二人の男。それを見守る多勢の女達は誰一人喋っている者はおりません。そんな静まり返った広場で、凄まじい目をしたレイン女王が初めて声を出しました。低く、静かに、怒りを抑えた声です。
「去勢の刑、やりなさい」
そして、隣で瞬きもしないで刑を見据えている娘に言いました。
「後は、お前がやりなさい。そして、全部を忘れなさい。以前のお前に戻るのです。いいね」
無言で僅かに頷いた娘が、一歩二歩と、刑を執行されて苦しみもがいている男達に近付き、落ちている石を拾って投げつけました。何度も何度も、いつまでも。
一週間が経ちました。
あの娘が父親と一緒に畑を耕していました。そこに馬に乗った一人の軍服を着た若者が近寄って来ます。
「娘、俺は虎雄だ。お前は何という名だ?」
「あんたの名前は言われなくたって知ってる。アタシはタンポポ。踏まれても踏まれても枯れたりしないタンポポさ」
「そうか、タンポポか。いい名だ。困った事があったら俺に言え。いいな、忘れるな」
「分かった」
そんな会話を虎雄と娘がしている時に、イースト共和国のスカイ女王は、一通の手紙をくちゃくちゃに丸め、夫の健吉に投げつけたところです。
それを拾って読み始めた健吉は、「まさか……」と言ったきりでした。
再び我がサウス王国に侵入して来た男二人を捕らえました。以前、辱めを受けた娘に面通しさせると、あの時の男達に間違い無いとの事。こちらで刑の執行は済ませました。橋の真ん中に遺体を置いておきましたので、遺族がいるのであれば引き取らせていただきたい。
それから、両国の国交は途絶えてしまったのです。
◆◆◆◆
イースト共和国執行官の健吉が、ある報せを貰って、大慌てて宮殿に戻ってきました。
海辺に住んでいる漁師が、はるか沖に浮かぶ何隻もの舟を見たのです。軍の者が駆けつけて望遠鏡を覗くと、どの舟にも旗が靡いていました。見たことの無い旗印です。そして、議会をこれから始めようとしていた執行官の健吉に報せが届いたのです。息を切らせた軍人が言いました。
「執行官殿、何隻もの舟がこちらに向かって来ます。見たことの無い旗印を掲げておりますが、このような図柄でした。お判りになりますか?」
沖に停泊していた舟を望遠鏡で覗いた軍人は、靡く旗印を絵に書いて持ち帰っていました。しかし、舟が遠過ぎて良く見えなかったのでしょうか、あまり上手な絵ではありません。首を傾げてその絵をじっと見ている健吉の顔が、暫くすると真っ青に変わりました。
「執行官殿、お顔の色が……」
「この紋章……まさか火を吹くドラゴン……」
「え?!……ああ、そう言えば蛇のようでもありました」
「お前、この事を誰かに言ったか?」
「いえ、執行官殿の元に真っ直ぐ来ましたので、軍の誰にもまだ報告してません」
「至急、将軍を呼べ! 私はスカイ女王をお連れする。まだ誰にも喋ってはならんぞ!」
今日もスカイ女王は議会にも出席をしないで、侍女達と遊びに行く準備をしています。
「今日は何をして過ごしましょう?」
「女王様、向こうの丘の桜が見事に満開だと聞きました。ちょうど見頃のようです」
「そうなんですか! では、今日はお花見にしましょう。お昼のお弁当の準備は出来ましたか? ワインもたくさん持って行きましょう。楽しみだわ。ほほほほほ」
季節は春でした。今年は気候も良く、イースト共和国の桜はとても綺麗に咲き誇っています。
スカイ女王は29歳になっていましたが、未だに夫の健吉とは寝室を別にしているせいで赤ちゃんもできず、娘のように毎日を楽しんでいます。そして、今日も侍女達と花見に出掛けようとしていた矢先です。そこに血相を変えた執行官の健吉が飛び込んできました。
「あら、健吉さん、どうなさったのです? そんなに慌てて、何か忘れ物ですか?」
息を切らせた健吉は満足に喋れません。床に手を付いて荒い呼吸を繰り返しています。
「議会はお休みですの? あら、酷い汗。誰か、手拭いと水をお持ちして!」
侍女の一人が手拭いを、別の侍女がコップについだ水を持って来ました。流れる汗を拭き拭き一気に水を飲んだ健吉が、むせ返りながらも言いました。
「ゲホッ……スカイ女王、一大事です。ゲホゲホ…… 至急、議会にご出席を……ゲホッ」
「どうしたのです? 議会の方は執行官の健吉さんに任せているではありませんか?」
「海の向こうから……ゲホッ……敵が攻めて来ます……ゲホゲホ」
「敵? どういう事ですか?」
「何隻もの舟が迫ってきています。火を吹くドラゴンの紋章を旗印とした……」
「まさか……」
「はい、おそらくは巨人族」
巨人族とは領土を持った民族ではありませ。ですから国ではないのです。昔は狩猟民族だったのでしょうが、身体も大きく気の荒い巨人族は、狩をするよりも他の民族が蓄えた食料とか金目の物を強奪する方が性に合っているようで、今では海賊を糧としている民族なのです。
健吉がスカイ女王を連れて議会の会場に着くと、もう既に巨人族の噂で持ちきりです。健吉に報告をした軍人が将軍と二人で走って来ます。健吉は言いました。
「まだ誰にも喋るなと言ったはずだ! どうして喋った!」
「自分は将軍にしか言っていません。ただ、巨人族から手紙が届いたようです」
議会のメンバーの主だった者が、スカイ女王を見つけ我先に走って来ます。口々に、「女王様」、「スカイ女王」と叫びながら。
一人の長老議員が手紙をスカイ女王に差し出しています。封印のされた手紙の封が開けられてます。それを見た健吉が思わず声を荒げて言いました。
「勝手に開けて読んだのか! 執行官である私の許可も無く、女王の承諾を得ないままで!」
「そっ、そんな悠長な事を言ってる場合ではないぞ! 執行官殿。とにかく、その手紙を読んで善後策を考えねば……相手は、あの巨人族なのだから」
手紙を読んでいるスカイ女王の手が震えています。それに気が付いた健吉が言いました。
「スカイ女王、手紙には何と?」
目を伏せたまま無言でその手紙を健吉に差し出したスカイ女王。足に力が入らなくなったのでしょうか、ふら〜っと倒れそうになって、侍女達に抱きかかえられてしまいました。手紙にはこうあります。
暫くの間、この国に世話になる。
まず、美人で評判のスカイ女王を差し出せ。我が巨人族のべべ族長の子を孕む栄誉を与えてやる。
明日の朝、日が昇る海岸に、裸のスカイ女王を立たせておけ。貰いに行く。
「なんと言う傲慢な民族。このような要求を飲めると思っているのか! 将軍! 軍に戦闘準備だ!」
「はっ!」
将軍が駆け出して行きます。しかし、残った議会のメンバー達は、互いの顔を見ては、何やらコソコソ喋っているようです。スカイ女王は侍女達に抱きかかえられて別室へと行ってしまいました。
健吉も他の議会のメンバー達の様子が変だと気が付き始めました。
「なんだ? 何か言いたい事でもあるのか?」
互いに顔を見合わせ何も言わない議会のメンバー達。ようやっと、さっきの長老議員が口を開きました。
「戦闘の準備は良しとしても、それ以降の事は議会の承認が必要ですぞ。執行官殿」
「なんと?! この非常時に……長老! あなたは事態を理解していないのですか!」
「執行官殿、理解されていないのは、あなたの方では?」
「なに?」
「この国は共和制なのですよ。その共和制を理解されておりますかと聞いたのです。民から選ばれた議員が、議会をもって国の舵取りをするのです。その議会を開くことも無く、他の民族と戦争など、もってのほか」
「なっ……私はスカイ女王の側近で夫の身。長老! それを分かってますか!」
「そのスカイ女王が強く望んだのが、今の共和制。スカイ女王は、その共和国の大統領であって、君主ではないのですよ。ましてや、その大統領が議会にも出席せずに、未だ娘のように遊び回っているのはいかがなものでしょう? 言いたくはないが、夫の執行官殿とは夫婦の営みが行われていないとの噂。子供でもできれば大人になるのでしょうが……」
「長老! 口を慎め! スカイ女王は女王だ! 先代の王の長女! 正当なお世継ぎである事に間違いは無いのだぞ!」
「いいえ、今は大統領なのです」
「だから何だ! だったら、その大統領を巨人族に差し出すつもりか?」
「選択肢の一つであるのは間違い無いでしょう。誰を大統領にするかは、また選べばいいだけでしょうから」
議会は困窮を深めましたが、執行官の健吉の発言で一応は決着が付きました。
「巨人族に攻め込まれた他国の話を忘れたのですか? 奴隷の国として滅んでしまったではないですか。巨人族には慈悲や情けなど、これっぽっちも持っていないのです。国中の女が慰み者にされる。あなた方の妻や娘、それに母親さえもです。採れる作物や魚の全てを奪い取られ続け、奴隷となった民全員が、飢え死にをして用無しになって初めて奴らは何処かに行く。今なら戦える。奴らはその名の通り巨人であり、一人一人の戦闘力は極めて高い。だが、どう言う訳か繁殖能力が劣っているために数が少ない。死に物狂いで戦えば、必ず勝機がある。戦いを選ぶよりないのです。それとも、あなた達は妻に娘に言えるのですか? 戦いたくないから慰み者になってくれと」
イースト共和国の議会は戦いを選びました。将軍が乗った舟を先頭に、沖に停泊している巨人族の舟に攻め込みます。しかし、あっと言う間に将軍の首が刎ねられ、その後は指揮を執る者もいない烏合の衆となったイースト共和国の軍は、僅かな兵が逃げ帰っただけで、その殆どが殺されたか海に溺れたかのどちらかでした。
イースト共和国の軍は徴兵制でした。男の子が20なると2年間だけ兵隊になるのです。ですから、みんな若い兵隊ばかりで、実際に戦闘の経験をした者がおりません。それに、隊を率いる隊長が2年間で育つ訳もなく、年中戦闘に明け暮れている巨人族に敵うはずがありませんでした。
◆◆◆◆
「イースト共和国が巨人族に降伏しました」
そうレイン女王に報告しているのはサウス王国の龍造です。
椅子に腰をかけていたレイン女王が跳ねるように立ち上がりました。
「いつ 戦になった? 聞いてないぞ!」
「イースト共和国から逃れて来た女を捕らえました。その女からの情報です。3日前に、沖に巨人族の舟が数隻現れたそうです。スカイ女王を差し出せと言ってきたらしく、当然、それを受け入れる事など出来無いイースト共和国の方から戦闘を開始したとの事です」
「なっ、なら……降伏とは何だ?」
「イースト共和国は一日も保たなかったようです」
「そんなはずは……その逃げて来たと言う女、巨人族の息の掛かった者ではないのか? 誤報を流し我が国を混乱させる企て……」
「はい、私もそう考え、3人の工作員を送り込み調べさせましたが……女の報告に間違いありません」
「バカな。たった一日で落ちたと言うのか! 姉は? スカイ女王は?」
「残念ながら……」
「龍造! ハッキリ言え!」
「はっ、スカイ女王は、誰にも付き添われる事無く、ただお一人で……一糸まとわぬお姿で海岸にお立ちになられ……」
それを聞いた途端、レイン女王はガックリと椅子に腰を落としてしまいました。そんなレイン女王に龍造が声を掛けます。
「女王陛下、お気をしっかり。巨人族がイースト共和国だけで満足するはずがありません。必ず我がサウス王国へも触手を伸ばしてくるはずです」
そんな時です、誰かが扉をノックする音がしました。
「取り込み中だ。後にしろ!」
龍造が大きな声でそう言ってもノックが鳴り止みません。ちらっとレイン女王を見て、それから大股で扉に近寄った龍造が怒鳴ります。
「取り込み中だと言ったのが聞こえないのか!」
「兄上、俺だ!虎雄だ! ここを開けてくれ!」
「なに?! 虎雄、どうしてお前が?」
振り返って、レイン女王が僅かに頷いたのを見て龍造は扉を開けましたが、廊下に立っている虎雄は部屋の中に入ろうとはしません。きっちりと臣下の礼をとっています。
「兄上、女王陛下にこれを」
それは、しっかりと封印された一通の手紙です。
「手紙? 虎雄、誰が寄越した?」
「巨人族の一人が、イースト共和国の方から橋を渡って持ってきたそうだ」
そう言い残して虎雄が戻って行きました。部屋には椅子に座っているレイン女王と、手にした手紙に視線を落としている龍造だけです。
ゆっくりと近寄って来る龍造に、レイン女王が言いました。
「龍造、声に出して読みなさい」
少しの間、龍造はレイン女王をじっと見ています。レイン女王の顔は何かを決断したような表情で、射抜くような眼で龍造から視線を外しません。龍造は手紙の封を切りました。
「イースト共和国は我ら巨人族の奴隷となる賢い選択をした。スカイという女王は、このべべ族長様の子を孕むため、朝夕と、自ら股を開き幸せに暮らしている。サウス王国に告ぐ。即刻、我ら巨人族に恭順の意を示せ。まずは、その証として女王が裸で橋を一人で渡って来い。期限は今日、日が暮れるまでだ。わずかでも過ぎれば、敵対の意思があるとし、皆殺しにするぞ」
手紙を読み終えた龍造が視線を上げます。そこには玉座に凛として座っているレイン女王の姿があります。
「女王陛下……」
そう言い掛けた龍造の言葉をレイン女王が遮ります。
「私が行きましょう。それで民が救われ……」
「なりません!!」
「龍造……お前……」
龍造の身体が一回りも二回りも大きくなったような気がします。
「戦えと命令してください! 女王陛下とサウス王国は一体です。女王陛下が受ける辱めは、国が受ける辱め。陛下がここに居るから国があるのです。我ら民が盾になり、命をかけて国を守り抜きます。国とは領土を示す言葉ではありますが、それだけでは無いのです。貴方が我らの母であり、国そのもなのです。戦えとご命令を!」
「勝てるのか? 大勢の民が犠牲に……」
「多くの者が生きては戻れないでしょう。しかし、子が後を継ぎます。孫が国を再建するでしょう。女王陛下ががいる限り、このサウス王国が敗れる事など無いのです」
それでも悲しげに首を横に振り続けるレイン女王。そんな時です、窓の外から大勢の歓声が聞こえてきました。
龍造がバルコニーに繋がる大きな窓を開けて外を見ます。そして、レイン女王を振り返って言いました。
「女王陛下……民が……何千……いや何万と言う大勢の民が宮殿の前に集まっています。陛下、お姿を!」




