幸せへの入り口
「ごめん、俺はお前とは付き合えない。お前のことは好きだよ。だけど…近すぎてお前の事兄妹みたいにしか見れないんだ。」
必死の告白の答えがこれだった。
頭がガンガンして立ち眩みがした。
…嘘でしょ?
目の前が真っ暗になるって言うけど本当なんだね。
だんだん世界が色褪せて暗く成っていくよ。
もうなんだろう…私ピエロみたい。
舞台の上で一生懸命に芸を披露したのに彼が見てたのはヒロインの事だったの?
彼は少し俯きながら何かしゃべっていたみたいだけど何も聞こえなかったし見えなかった。
「諦めきれないよ…。」
ぼそっと呟いた。
もう彼は何処かに行ってしまっていたけど。
ボロボロの心を引きずりながら近くの小さな神社に行った。
小さい頃ここでよく彼と遊んだ。
相談事だってした。
辛かった事も、嬉しかった事も、全部全部ここで話したんだ。
…ここで告白したら彼も想いに応えてくれたかな?
枯葉が一枚はらりと私の足下に落ちた。
最後の1枚だったらしい。
もう年を越したのによく木にぶら下がっていたものだね。
風が急に吹いてきて私はスカートを抑えた。
枯葉はもう何処かに吹き飛んでいた。
…早く春、来ないかな。
冬は風が冷たくてやってらんないんだよ。
石段に腰を降ろして両手をこすり合わせてから体を丸め、目をぎゅっと瞑った。
ああ寒い。
暫くした後、目を開けると既に日は沈みかけていた。
まずいと思い手を着き立ち上がろうとすると石のひやっとした冷たさはなく、何か紙の様なものを触った。
一瞬動きを止め、ノートを手に取った。
ここに来た時は何も無かったはずなのに…。
周りをきょろきょろと確認するが誰も居ない。
角がちょっと潰れてたり、汚れたりしていたけど特に変わった様子は無いノート。
ぱらっと1ページ目何も無し。
2ページ目、3ページ目も無し。
詰まらない。
ノートを広げたまま石段に座りもっと早く告白すれば良かったのかな、とうじうじしていた。
だが、もうじき暗くなる事に気付きノートを閉じようとしたその時だった。
何も書かれていなかったページに文字が浮かんだ。
『200X年2月21日*曜日』
『私はこの日…』
どんどん浮かび上がっていく文字。
なんなのこれ?
なんで私の事をこんなに細かく知ってんの?
ノートにはすごい勢いでこの日の出来事が書き込まれていく。
書き込みが終わる頃には目の前のページは細かい字で黒く染め上がった。
完全に私のこの日の行動、出来事だった。
私が忘れていた事さえ書かれている。
あまりの事に怖くて体が動かなく成っていたが、ある1つの思いが頭の中で生まれた。
『この日に戻れたら。』
誰でもある事かも知れない。
私は誰でもあるように望んだ。
そして私は愛おしくそのページに触れた。