淡く散る
瞬間は痛く、喉を刺激して痛みは胸へ返る。あどけなく笑ったあの時の笑顔は何だったのかと自身に問掛けてみる。
駅の前で次の電車を待ち佇むんでいると自分の進行方向とは逆の方向から来た電車が止まった。風は降りた。彼女だった。
そして自身は不意に手を振ろうとする。
答えは返らない。不意に視線が空を切り、風が通り過ぎただけ。
懐かしいものが急に溶け出した。
奥底で嘆く様に波を打つ正体に気付いてしまった。ほんの少し、嘘の笑い方でいいから『久しぶりね』と笑ってほしかった。半年で絆というものはこんなにも脆くなるのだろうか。なんだ、こんなのありふれた事じゃあないかと納得しようとする自分が居る。駅の真下にある売店の屋根の錆びた色が、自身の心をぎゅっと締付ける。
高校で行く道を違えただけで遠くなってしまった同士の背中がなんだか切なく思えてしまった。蘇る情景。あの日の君。
妙なポーズのデッサン。変に追い求めた真紅の絵の具。誰かさんの髪型に似てるね、と呟いた一瞬。すべてを。
否定されたした気がした。
彼女は彼女なりに新しい立位置を壊せまいと守ったのかもしれない。
彼女にとって自身は過去にすぎず虚しさだけが心の奥底を駆け巡る。
愛しい彼女は、ただ目の前を通り過ぎた。
心さえ通り過ぎたのだと。
悲しくも、そう思えた。
何かに押し潰されてしまいそうな自身に電車のライトが近付いてくる。温かい様だけれど無機質な淡い色を、なんだかひどく嫌に思った。
ここまで読んで頂きありがとうございます!拙いなりに全身全霊にて書かせて頂きました。感想などありましたら宜しくお願い致します。