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宿屋の落書き集
宿屋のベッドの柱にも落書きがある。
誰が書いたのかは分からない。
だが内容はだいたい想像がつく。
読むと、隣の部屋から男と女の笑い声が聞こえてくる。
「竜人と添い寝するときは壁際に寝ろ。どうせあいつらの尻尾は布団の外だ。」
「エルフにはさっさと指輪を渡せ、返事は聞くな。
待ってる間に老いて棄てられる。」
「獣人とサキュバスの夫婦なんているわけがない。
お互いを世界一臭いって思ってる。」
「天使は案外口説きやすい。
だが、寝室には行こうとしない。
清らかだって伝説は、多分皮肉だ。」
「妖精とエルフの夫婦はいない。
妖精の大人と
エルフの子供でも
年の差がきついらしい。」
「妖精には死んでも手を出すな。
手を出した瞬間、
悪戯したのはお前ってことになる。」
「堕天使との夜は激しいらしい。
それを弄ると、
『堕天させられちゃうッ♡』
って叫んで、やめないそうだ。」
「悪魔とのキスに酔ったら負けだ。
明日の朝には
魂を取られる。」
「くだらないことを書いてる俺が、最後に一つ言っておく。
サキュバスを口説くな。
成功してもあいつの勝ちだ。落とされてるからな。
……失敗しても、あいつらの勝ちだ。
じゃなきゃ今、俺が隣でこんなのを書いてるわけがない。」




