とある便所の落書き集
古い街道宿の便所の壁には、落書きがびっしりと書かれていた。
冒険者たちのくだらない知恵袋だ。
そこには種族の悪口ばかりが並んでいる。
「獣人と獣の違いは、見張りを立てるかどうかだ。あいつらには恥がない。
獣人と人間の違いは、ケツの毛に糞が付いていると気付くかどうかだ。あいつらには自覚がない。」
「悪魔の身体が魔力で出来てる。
嗜好品として飯は食うが、消化は出来てない。
だからたまに体内で腐ってる時がある。
うんこしない女を理想としたこともあるが、あんなに口が臭いんなら意味がない」
「サキュバス達に、どの種族の男も敵わないのは仕方ない。
トイレに行ってから、風呂に入って、香油を付けて、身体を磨いてから顔を出してくれるんだ。
拭いて終わりの荒くれ共には眩し過ぎる」
「星見族は礼儀正しい種族だ。
絶対に空を汚さない。
だからあいつらは、星が見える場所では絶対にうんこをしない。
……つまり曇りの日は油断するな。」
「樹霊族にトイレの概念はあるのか?分からない。
樹霊族にトイレはあるのか?それはある。
人間のババアが作ってた。」
「エルフは森に腹から出てきた肥料を与える。
樹霊族は森そのものだ。
…だから仲が悪い。」
「ドワーフには排泄物を焼く為の炉がある。
廃材を名刀に生まれ変わらす様に。
それすら捨てはしない。
誇り高き精神の表れだ。
さて、その炉の管理は鍛冶用の炉を任せられない細腕の仕事だ。
だからあいつらは腕っぷしが強い。」
「妖精は太古の昔からエルフに影響を受けてる。
エルフは古い慣行を捨てられず、嫌々うんこを自然に帰してる。
嫌々だから、トイレをおいて、管理してる。
エルフの森は極端にでかい木が多い。
妖精は何事も雑だった。人工的な建物はない。
妖精の森はそこら中に花が咲いてる。」
「天使の羽には欠点がない。
美しく、しなやかで、空を飛び、敵を倒す。
ただ、茶色が付いたら目立ちすぎる。」
「険しい崖に適応した竜人にも欠点がない。
あの鱗の防御は剣すら通さん。
……だから俺は、崖で拾った、
“人類とは思えないほど臭いフン”をぶん投げることにしてる」
「吸血鬼は血を飲みすぎると血尿になる。
しかもあいつらは血を操って戦う。
だから澄ました顔をしていても、その辺に浮かんでるのが何なのか。
俺は考えないことにしてる。」
「堕天使は災難な種族だ。
頭の硬いエルフには嫌われてる。
学のない妖精には鴉の獣人と思われてる。
天使には自身にコンプレックスがあるだろうと思われている。
…だが、あいつらは指を指されるとしても、羽についた茶色には気づかれない。」
「これまで色んなやつのうんこをネタにしてきたが、それだけで人間が一番栄えてる理由がわかる。
人間のうんこで笑える欠点はなかった。
トイレからして完璧だ。
だから俺は嫉妬して、くだらんことを書いているわけだ」




