第2話:ギルド登録は「手動」で無双。新人受付嬢をバズらせろ!
王宮での「鑑定水晶爆発(という名のシステムエラー)」から一夜明けた。
俺――佐藤アラタは、管理ルームのデスクで、空になった10本目のエナジードリンクを握りつぶしていた。
「……アラタさーん、モニター見てください。転生者カイトくん、動きます」
サブモニターに、現場スタッフ(下級神)の暢気な声が響く。
画面の中では、昨日のボロ布から一転。
王家から贈られた「それっぽい銀の軽鎧」に身を包んだカイトが、意気揚々と宿屋を出ていくところだった。
「よし、まずは冒険者ギルドで登録だ! そこで一番難しい依頼を受けて、僕の実力を試してみるぞ!」
カイトが、拳を握りしめて青空を見上げる。
その爽やかな表情を見て、俺は血走った目でコンソールを叩いた。
「……ふざけんな、このモヤシ野郎。あいつの筋力値(STR)、平均的な村人以下なんだぞ! 『実力を試す』だと? スライムに突っつかれただけで全損だわ!」
そうなのだ。
カイトの【全知全能】という職業は、俺が裏でシステムにパッチを当てて表示させている「偽装データ」に過ぎない。
中身はただの現代っ子。戦闘経験、ゼロ。
俺はすぐさまヘッドセットを装着し、現場の『ギルド運営班』に怒号を飛ばす。
「ギルドの受付嬢! 今すぐカイトを『特別室』に誘導しろ! あいつを一般の荒くれ者がいるカウンターに行かせるな。レベル1の初心者が絡まれたら、メンタルが死んでシナリオが詰む!」
『了解です! でもアラタさん、受付嬢の新人ちゃん、緊張で噛みそうなんですけど……』
「構わん、好感度操作ナノマシンを10%増量しろ。カイトが話しかけた瞬間に頬を赤らめるようにセットだ。それと――」
俺はキーボードを叩き、カイトが向かうギルドの「自動ドア(という名の魔法の扉)」の感知設定をいじる。
「カイトが扉を開ける瞬間に、ちょうどいい感じの『光のカーテン』を挿入。風圧を調整して、カイトの前髪だけをなびかせろ。……よし、いい画だ」
モニターの中では、カイトがギルドに一歩踏み込んだ瞬間。
不自然に降り注ぐ日の光と、微風。
そして。
「あ、あの……あなたが、噂の『全知全能』様ですか……?」
顔を真っ赤にした美少女受付嬢が、潤んだ瞳でカイトを見つめる。
「えっ、あ、はい。僕、ただの一般人なんですけど……一応、そうです」
カイトの、あざとい謙遜。
それを見た俺は、吐き気をこらえながら叫ぶ。
「演出班! 今すぐカイトが受ける依頼書を、裏に隠した『特注品』にすり替えろ。難易度はSSS級だが、中身は俺が手動で倒せる『出来レース』用だ!」
「アラタさん! 困ります、そんな勝手な難易度変更!」
背後から、アロハシャツのゼウス課長がポップコーン片手に現れた。
「もっとハラハラさせなきゃ。そうだ、カイトくんが一番難しい依頼を選んだ瞬間に、ギルド中のベテラン冒険者が『おいおい、そんなの無理だぜ坊や』って鼻で笑う……これ、なろうの定番だよね? やって」
「……課長、あいつらに絡まれたら、今のカイトは一秒で泣きますよ?」
「そこを君がハックするんじゃないか。ほら、早く!」
クソ上司。
俺はコンソールを叩き、ギルド内にいるNPC(モブ冒険者)たちの思考回路に緊急介入する。
「……よし。モブA、B、Cの『威圧感パラメーター』を最大に。ただし、カイトが剣の柄に手をかけた瞬間に、俺が全モブの膝を強制的に折る(屈服させる)。重力負荷設定を0.2秒だけ100倍に上げれば、カイトの気圧に押されたように見えるはずだ」
画面の中。
屈強な冒険者たちが「ああん? テメェみてぇなガキが――」と凄んだ瞬間。
カイトがオドオドしながら、腰の剣に触れた。
ドッ!!
ギルド中の大男たちが、一斉に床に膝をつく。
あまりの重力負荷に、床にヒビが入る。
「な……なんだ、このプレッシャーは……ッ! 剣を抜くことさえ許されないというのか……ッ!」
……いい演技だ、モブA。
あとでボーナスの魔石を支給してやる。
「えっ。あの、僕……また何かやっちゃいました?」
本日二度目の、あのセリフ。
カイトの背後で輝く「神々しい後光(という名の俺の必死なエフェクト調整)」を見ながら、俺はモニターに向かって中指を立てた。
「……やってくれたなクソガキがあああああ!! 床の修理代、俺の自腹だぞコラァ!!」
俺の有給が、また一歩、遠のいていった。
今回のプロデュース・ログ
ターゲット: 召喚勇者カイト
主な演出: ギルド内の重力操作、受付嬢の強制赤面、光の演出
被害状況: ギルドの床(要修繕)、アラタの精神衛生
プロデューサーのHP: 残り8%
次回予告
【第3章:森の主は「リモコン」操作。必殺技(空振り)を直撃させろ!】
いよいよ初の実戦クエストへ。
「適当に振ったら敵が消し飛んだ」を演出するために、アラタは魔物の神経系に無線接続を試みるが……。




