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HP1の建築士、最強の『絶対安全圏』を創る~小石で即死する俺の為、魔王も勇者も過保護に領地防衛します~  作者: 月神世一


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EP 4

歩く災害、エルフの姫君 ~ルナとネギオの来襲~

 タロー国から帰還した俺とDr.ギアは、獲得した『神の素材(100均グッズ)』を使い、シェルターの改築に没頭していた。

「素晴らしい……! この『プチプチ』を壁と床に埋め込むことで、衝撃吸収率が99.9%に達したぞ! これなら主が廊下で転んでも、膝を擦りむくことすらない!」

「ありがとう爺さん。これで安心してトイレに行けるよ」

 俺たちは感動に震えていた。

 さらに、外壁にはタローから買った『ブルーシート』を何層にも重ねて【絶対建築】で融合させた。

 結果、ドラゴンのブレスすら弾き返すであろう『対魔・対物理絶対結界(見た目は青いビニール)』が完成したのである。

「これで防衛は完璧じゃ。あとは自動迎撃システムの調整を……む?」

 その時、シェルター内にけたたましいアラート音が鳴り響いた。

 Dr.ギアが作った『生体感知センサー』が反応したのだ。

「敵襲か!? 盗賊か、モンスターか!?」

 俺は慌ててモニターを確認した。

 心拍数が上がる。これだけでHPが減りそうで怖い。

 だが、画面に映し出されたのは、予想外の来訪者だった。

「……女の子?」

 そこにいたのは、透き通るような金髪に、宝石のような碧眼を持つ、絶世の美少女だった。

 長い耳。間違いなくエルフだ。しかも、タダモノではない気品がある。

 彼女は荒野のど真ん中で、キョロキョロと周囲を見回していた。

「あっちが北……だと思ったのだけど。なぜか砂漠に着いちゃったわ。不思議ね」

 モニター越しに声が聞こえる。

 彼女は俺のシェルター(巨大な岩)を見上げ、小首をかしげた。

「あら、こんなところに岩が。……うーん、ちょっと『汚れてる』わね」

 彼女の視線が、シェルターの外壁に付着した砂埃に向けられた。

 そして、彼女はニッコリと微笑み、手に持っていた杖――どう見ても世界樹の枝で作られた国宝級の代物――を振るった。

「綺麗にしてあげるわね。……【アース・クリーン】」

 それは、ただの掃除魔法のはずだった。

 だが、彼女の膨大な魔力と、世界樹の杖の増幅効果が合わさった瞬間、それは『災害』へと変わった。

 ズゴォォォォォォォォッ!!

「うわあああああっ!?」

 シェルターが激しく揺れた。

 いや、揺れたのではない。彼女の魔法が、シェルター周辺の地面を『汚れ(表土)』ごと根こそぎひっくり返し、更地に変えようとしているのだ!

「け、警報! 外壁のブルーシート結界に高エネルギー反応! 第一層、突破されたわい!」

「待って待って! 掃除で結界破るって何!? ていうか揺れ! 振動で俺のHPが削れるぅぅッ!」

 俺はプチプチ入りの床に這いつくばりながら、HPバーを確認した。

 【1/1】が【0.5/1】に点滅している。

 あと一撃で死ぬ。掃除されて死ぬなんて御免だ。

「あら? まだ少し汚れが残ってるわね。それっ」

 画面の中で、エルフの少女が無邪気に杖を振り上げた。

 追撃が来る。

 俺の命運もここまでか――そう思った、その時だった。

 スパーーーーーーンッ!!

 乾いた、それでいて小気味よい打撃音が荒野に響き渡った。

 次の瞬間、エルフの少女が「あうっ」と頭を押さえてうずくまった。

「お嬢様……。道路掃除をするのに、なぜ地殻変動レベルの魔力を使うのですか。その頭の中身は肥料ですか?」

 少女の背後に、いつの間にか一人の『執事』が立っていた。

 スタイリッシュな燕尾服。しかし、その頭部は植物の葉っぱ。

 そして手には、凶器として使われたであろう、立派な『青ネギ』が握られていた。

「ネ、ネギオぉ……。だって、汚かったから……」

「汚れているのは貴女の方向感覚です。パン屋に行こうとして、なぜ隣国の国境を超えるのですか」

 執事――ネギオと呼ばれた植物人間は、呆れ顔でため息をついた。

 そして、俺たちのシェルター(の監視カメラ)に向かって、優雅に一礼した。

「中の居住者様。うちの主人が粗相をいたしました。……ああ、申し訳ありません。そちらのあるじ、今にも死にそうな顔色をされていますね」

 ネギオの目は節穴ではなかった。

 カメラ越しに、俺がHP0.5で虫の息になっているのを見抜いたのだ。

「お詫びに、減った分の寿命(HP)と、壊れかけた外壁を修復させていただきます。……モード・ルーク、変形」

 ネギオの体がギギギと音を立てて変形した。

 燕尾服が硬質な樹皮の鎧となり、両腕が巨大な左官コテのような形状になる。

 彼は瞬きする間にシェルターの外壁を塗り直し、さらに青ネギ(聖剣エクスカリバー)から癒やしの波動を放った。

 ポワン。

 俺のHPが【1/1】に回復した。

「た、助かった……のか?」

「ふむ。どうやら敵ではないようじゃな。むしろ、あの執事……ワシの自動修復機能より手際が良いぞ」

 俺とギアは顔を見合わせた。

 とりあえず、話を聞くために中に入れることにした。外に置いておいて、また魔法を使われたら俺が死ぬからだ。

 ◇

 シェルターの応接室。

 出されたタロー国製の緑茶を飲みながら、エルフの少女――ルナ・シンフォニアは、悪びれもせず微笑んだ。

「ごめんなさいね。私、てっきりただの岩だと思ったの。こんな素敵な『隠れ家』だったなんて」

「いえ……分かってくれればいいんです。ただ、魔法は禁止でお願いします。俺、風圧で死ぬので」

 俺が切実に訴えると、ルナは目を輝かせた。

「まあ! なんてはかない殿方なのかしら! まるで朝露のようだわ!」

「褒めてないですよね?」

「気に入ったわ! 私、ここに住むことにする!」

「はい?」

 ルナが爆弾発言を落とした。

 ネギオがすかさず青ネギを構えるが、ルナは続けた。

「だって、外に行くとまた迷子になるし。それに、貴方すごく『弱って』いるから、放っておけないの。世界樹の巫女として、保護してあげるわ!」

 逆だ。あんたの魔法から保護されたいんだ俺は。

 断ろうとした俺の横で、Dr.ギアが耳打ちした。

(主よ、待つのじゃ。彼女の魔力は規格外じゃ。上手く使えば、食料問題を解決できるかもしれんぞ)

 確かに、保存食(カップ麺)だけでは栄養が偏る。

 俺は意を決して提案した。

「……分かりました。ただし条件があります。ルナさんは、俺が指定した『庭』から一歩も出ないでください。そこで野菜や果物を作ってください。魔法の使用はそこだけ許可します」

「ええ、お安い御用よ! 最高の果樹園を作ってあげる!」

 こうして、歩く災害エルフとその執事が住人に加わった。

 翌日。

 シェルターの裏庭(ただの荒野)は、ルナの【豊穣魔法】によって、一夜にして『神話級のフルーツが実るジャングル』へと変貌していた。

「……すごいけど、ジャングル過ぎて虫が出そうだな」

「ご安心を。害虫は全て私がネギで叩き落とします」

 ネギオが頼もしすぎる。

 HP1の俺の生活に、『極上のビタミン源』と『最強の警備員(執事)』が加わった瞬間だった。

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