命名、君は「クエストお嬢様」
「ふぅ~ついた!」
やっと遠くから見えてた大きな壁に辿りつく。近くから見ると見上げるほどの大きさである。まずは壁沿いに伝っていくとだんだん人だかりが見えてくる。
(おお~人だかりだ!言語通じるかな…?あそこが入口っぽいから取り敢えず行っちゃお。)
そうして一松の不安を抱えつつ、近ずいて人だかりの中に入る。
「順番にー!ならんでくださーい!」
「追い越しした場合は罰則がありまーす。」
「…というと、この行列はそのお貴族様のせいなのかい?」
「らしいねぇ、早く馬車を退けて欲しいもんさ。」
聞こえてくるのは日本語であった。
(うーん、流石にこれはサービスなのかな? それとも日本語サーバーとか? というかお貴族様の事故ね…。)
取り敢えず日本語についてはサービスとして深く考えないことにする。それよりも気になるのは、お貴族様の事故で行列が出来ているという会話。
(こういうのって向こうの日常なら放置で解決待ちだけど、ここだと多分違うよね…。解決クエストとかかな。)
ここに来てゲーマーとしての性が発動。お貴族様の困り事というゲームなら美味しい報酬が貰えそうなイベントを前に気になって仕方がない。
(行列が出来てるってことは入口の方かな?
入口へはこの列を辿ればいいだろうしよし行こう。)
そう決断すると列の最前へ向かう。10分もしないうちに着いた街の入口には、豪華絢爛な馬車が車輪がひとつ外れた状態で停まっていた。
(なるほど、馬車修理イベント!てことは…スキル!)
現代日本にて生活していたケイに馬車の修理技術は無い。しかし、スキルで修理できるのなら話は別だ。
(このタイミングだし、3ポイント系のスキルかな?
…これだ!)
-スキル 修理-
壊れたものと使用回数がゼロになったものを修理できる
(うんうん、いいね!まさしくって感じのスキルだ!)
そうと決まればさっそく3ポイント消費してスキルを習得する。すると、頭の中にスキルの使い方が入ってくる。
(なるほど、こういう感じで使い方は分かるようになるのか。使用方法が分からなくて持ち腐れにすることはなさそうかな?よかった。)
そうして万全の準備を整えいざお嬢様に話しかける
「あの~こんにちは!」
途端にこちらへ近ずいて来る護衛たち。
「無礼者!この方をなんと心得るか!」
「よい、してお主何用じゃ?」
すごい剣幕で護衛に怒鳴られ内心ヒヤヒヤするが、こちらから話しかけておいて無視する訳にはいかないので返答する。
「申し訳ございません。私、旅人なのですがお嬢様のお困り事であらせられる馬車の修理を行えるかもしれませんのでお声がけさせていただきました。」
「なに?旅人が馬車の修理じゃと…?」
「はい、私のスキルに修理のスキルがございます。
そちらを使い馬車を修理出来るかもしれません。」
「ほう、ならば疾く修理せよ。成功したならば報酬を渡そうぞ。」
「かしこまりました。」
-クエスト 第3皇女の馬車を修理せよ 受理-
報酬:スキルポイント3
(うっひょ~やったやった!やっぱりクエストだったんだ! しかもスキルポイント!…さて。)
表面上取り繕っても内心浮かれてしまっているケイ 、これは良くないと気持ちを切り替え修理を行う。とは言っても簡単だ修理したいものに手を触れ「リペア」と言うだけ。
「リペア」
その瞬間直前まで壊れていたのが嘘のようにピカピカの馬車になっていた。修理完了である。
「ほう…ほんに直すとはの、しかもかなりの腕とみた
じぃ!」
第3皇女が腕を鳴らすと控えていた執事が、絹のハンカチに大事にくるまれたバッチを渡してきた。
「これは…?」
「これはわらわたち貴族が発行できるメダルじゃ。
これを持っておるとそのメダルの表す貴族が後見人となる。」
「…え?」
後見人、要は支援者や保護者という意味である。
いくら困り事を解決したとはいえ即後見人になるのはただ事では無い。
「おまti…」
「ゆくぞ、そこな男よ面白い出自のようじゃがこれからも励むように。」
-クエスト 第3皇女の馬車を修理せよ クリア-
獲得:スキルポイント3
…バレてる、なぜだか分からないがそう確信する。おそらく何らかの方法で異世界の人間だとバレた、そしてお手つきにする意味でバッチを渡してきたのだろう。それにしても…。
「貴族…こわ…でもポイント嬉しぃ…。」
嬉しさと恐怖で情緒がぐちゃぐちゃになりつつ進み出した列に並ぶため列の後ろへ向かう。
あの時と違って今回は少しだけ足取りは少し重かった。