旅立ちと敵
「ん~寝てる…よね?」
奥に鎮座する巨大な化け物は今幸運な事に深く眠っているようであった、まるで自身を脅かすものなどいないと言わんばかりのヘソ天。
事実この草原では最強なのではないだろうか…?そんなことを思いながら汗とともに滴り落ちる冷や汗を拭う。
こうしては居られないとすぐにここを発つ決意をする。行く宛などないが、最悪なのはアレが目を覚まして襲ってくることである。そうすれば勝ち目などあろうはずもない。
「取り敢えず、人のいるところを目指して歩こうかな。とすると…あの川を遡ってみようか。」
化け物とは逆の方向の少し奥にある森に続く川を遡る決意をする。森は危険だが幸いそこまで深くは無い。身一つでこの世界に放り出されてしまった以上どこかでリスクは背負わなければならないと判断した。
少しすると森に着くとそこは湿った土の匂いが香る緑の綺麗な森であった。近くに生物の声などは聴こえないからか少しの間その美しき光景に目を奪われる。しかし感傷に浸っている余裕はないと気づき、気を取り直しそのまま歩き続けると2時間ほど経った頃
「はぁ…やっっと抜けた!さすがに疲れるな…。」
やっとの事で森をぬけたので独り言を呟きながら休める場所を探ると、すぐ近くに腰掛けるのに調度良い大きさの岩を見つけたので歩き通しであった身を休めることにする。
そこに腰かけシャツで汗を拭い息を整えてふと遠くをよく見ると、川の遠く先に大きな壁のようなものがある。あそこに街があるのだろうか?
「川が続いているから道に迷わないで済んでるのは、ホントに助かったね…ん?」
右腕にヒヤリとした感覚と何かがのしかかったような圧が伝わる。
「これは…スライム…?」
透き通るような青色で、ゲル状の見た目をしたRPGゲーマーたちがよく知るスライムに酷似した生物であった。それがたった今通り過ぎた森から合計で10匹。
「えっと、多い…かな…?」
すなわち、この世界にて初めての接敵である。