8、魔力測定始まる
あけましておめでとうございます。新しい年が皆様にとって幸多き一年になりますように。
小説の方も、よろしくお願いします。
雷魔法ドレス事件のあと、公爵家は上へ下への大騒ぎになった。
お母様と侍女たちは二日ほどで回復し、お母様は薄紫のドレスの仕上げに余念がない。
仕立て屋を呼び、大張り切りしてらっしゃるからホッとしている。
大騒ぎだったのはお父様とお兄様達。
あれは智天使ケルビム様の人生リセット阻止のための《忠告の静電気》だ。
でも、お父様たちは、私の魔法が目覚めたと言う説で話が進んでいる。どうしよう困った。でも口が避けても言えない。
国王陛下にまで報告が行き、雷魔法だけではなく他にも特殊な魔力発現の可能性があるということで、
急きょ王命により王立魔法師団で特別に魔力測定をすることになった。
普通の貴族子女の魔力測定は、王妃様のお茶会のついでに行われるから皆と一緒だし、私はまだ魔法が発現してなかったから気にもしていなかった。
魔法測定の日は、静電気発動の四日後になった。
その日は簡素な飾りのない濃紺の質実剛健なドレスをきた。
お母様はもっと可愛らしいものと言ってくださったが、今回ばかりは最初から頑と意見を通した。
万が一、焼け焦げて血まみれになっても目立たないものにしたかった。
髪は侍女のエバに後ろで一本の三つ編みにしてしっかりと結えてもらい、靴の底がなくならないように魔法師団御用達のブーツをお父様が準備してくださった。
今日の付き添いは、お兄様の影のあの方が迎えにきてくださった。黒いローブをまとい、とても美しい所作で、エスコートの前に名乗られた。
「王立魔法師団副師団長のルベールと申します。どうかルベールとお呼びください。今日の装いもあなたらしくて素敵だ」
「お迎えありがとう存じます。
ルベール様、わたくし、リリエル・オウ・ホワイティエと申します。
本日はよろしくお願いいたします」
魔法師団の馬車に乗っている間、緊張している私に、ルベール様は色々とお話しをしてくださった。
アレクサンダーお兄様と雰囲気が似ているせいか、とても話しやすく会話が弾んだ。
ルベール様はお優しい方なのだと思う。
お父様は陛下の特別補佐と魔法師団の総督を兼務、
十八歳のアレクサンダーお兄様は騎士団の王太子特別任務部所属で、
十六歳のシュベールお兄様は魔法師団の高度魔法研究所に所属。
三人とも王城勤めなので、私は現地でお会いすることになっていた。
王立魔法師団の建物は、王城の敷地内の奥まったところにあり、そこでお父様達にお会いできた。
魔法測定は更に奥の大きな演習場で結界を張って行うそうだ。
魔法師団長様から測定についての説明があり、ルベール様と私だけが結界の中に入った。
お父様達がちょっと怖いお顔な気がするけれど見守ってくださっている。
「ではリリエル嬢、始めますね。
緊張しないで気持ちを楽にして。
まずは何も考えずに、この石を持ってください」
「はい」
濃い紫色の手袋をはめてらっしゃるルベール様から直径三十センチくらいの重そうな赤い石を受け取ろうと手を伸ばした。手先に触れるやすぐにポンッと音がして、ルベール様の指の隙間から、薄紫色の粉がサラサラこぼれ落ちて石は見えなくなった。
「ええっ?あれっ、壊してしまいました。ごめんなさい」
「あっ!!!いや壊れて良いのです。綺麗な粉に変わりました。リリエル嬢の魔力は綺麗ですね」
「ええっ、私に魔力があったんですか」
私、魔力持ちだったんだわ、ちょっと驚き。
「そうですよ。素敵な魔力ですから自信を持ってください」
次に同じくらいの大きさの青、白、茶色の石の塊がでてくる。受け取ろうとして指先が触れると全部薄紫色のサラサラの粉になっていく。
そして両手でも抱えきれない大きな真っ黒な石のところへ移動して、触ってくださいと言われ触ると、やっぱり、ポポポン!と音がして薄紫色の粉の小山になった。
ルベール様、ちょっとお顔がひきつっているような気がするけど。
「ではリリエル嬢、一つ聞きます。私の事が嫌い、または気持ち悪いと思われていますか?」
「、、、あの、、まだ2回しかお会いしてないですが、ルベール様はお優しいですし、この前、私がドレスを血まみれにした時も、嫌そうなお顔もされずに優しかったですし、、ん、たぶん、、、きっとお兄様達の次に好きです」
「正直な方だな。ではこれも魔力測定の一部ですが、素手であなたに触れても構いませんか?」
「素手?手袋を外した素手ですか?」
「そうです」
淑女教育では、家族意外の男性の手や体の一部でも素手で触れてはならない、触れさせてもいけないと教わっている。
だから貴族の男性や騎士の方々は女性の前で手袋は外さない。
「魔力測定に必要なのですか?」
「そうです」
「少々お待ちいただけますか。お父様に聞いて参ります」
「どうぞ」とにっこり。
ルベール様の微笑みは引き込まれてしまう。
私は即座に《はい》と言いそうになったけれど、何とかとどまっていた。
魔力試験と淑女教育の優先度がわからない。
それに何にでも、はいはいと言ってはイケナイと肝に命じている。
でもこの会話の最中にケルビム様の声は聞こえなかった。
結界域の外にいらっしゃるお父様へと急ぐ。
結界の外はとてもザワザワしていた。
結界の内側からお父様に声をかける。
「お父様、教えてくださいませ。
淑女教育で教わったことと、魔力試験とどちらの優先度が高いのでしょうか。
ルベール様が、その、、す、素手で、、」
「手袋を外されるとおっしゃったのだね?」
「はい」
その時だった。お父様の後ろのお兄様達の声が聞こえる。
「リル、ダメだ。巻き込まれるぞ」
「リル、やめるんだ!」
「アレクサンダー、シュベールは控えなさい」
珍しくお父様がビシッ!とお兄様達を制された。
明日も21時ごろに投稿予定です。




