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4、人生リセット66回目

天界のケルビム様の執務室。

目の前の肘掛椅子で、額を押さえながら深い溜め息をつく智天使ケルビム様。


ふかふかの長椅子に項垂れて腰掛ける私。


「リリエル、今日で何回目だ。」


「六十六回目です。」


「自覚はあるのだな。自滅三十九回、誘拐で殺されること九回、騙されて毒殺が七回、うっかり事故死が十一回、、」


「、、、自覚はあります。でも馬車に引かれそうになった孤児や猫を助けましたし、助けを求めてきた精霊も救えましたし、、」


「命を救う行為は間違っていない、それが人でも動物でも、精霊でも構わない。だが、なぜその代償でおまえが死んでいるのだ。命を助けるなら、自分も生き残る術を身につけなさい。おまえが死んで、助けた動物や精霊が喜んでいると思っているのか。」


「えっ?それは、、不満があるとか、でしょうか。」


「違う、自分達が助けられ、おまえが死んでしまいやるせない、と陳情が天界に上がってきている。自分達の命を返すからリリエルを助けてくれとな。ましてやその繰り返した年数は延べ七百年を超えているぞ。人でも七百年も修行したら人外の精霊になれる年月だ。。」


「、、すみません、、。」


「おまえの七百年は天界では七日だ。苦しいのはお前だけなのだ。だからやめても良いのだぞ。私から見ると、数時間おきに死んでるようなものだ。」


「えっ、、でもやめたら私だけじゃなくて、今までの大切な人達も光に吸収されるのですよね。」


「それは覚えているのか。」


「はい。今までの婚約者の方々には、転生して幸せになってほしいのです。私一人なら光の粒になっても構いませんが、前途有望で民や国の未来に馳せる夢も大きかった方々です。こんな私でも大切に愛してくださいました。それに、ミカエル様は四度の人生を付き添ってくださったのに申し訳が立ちません。だから苦しくても壊れそうになっても中途半端に終われないのです。」


ケルビム様の片眉がクッと上がった気がした。


悔しくて情けなくて堪えていても涙が溢れてくる。本当は辞めてしまいたい気持ちもある、正直やめたい。でもだめだ。やめちゃダメだ。


しばらくの沈黙のあと、大きな溜め息と共にケルビム様が口を開かれた。


「あきらめないのだな。」


私はうなずく。


「ではこれまでの長年のお前の努力に免じて、決め事を変える。『はい』一回で物事が完結すればよしとする。だが、もしもおまえのお人好しが発覚したらこちらからおまえに雷を落とす。」


(か、か、カミナリが落ちるの?)


ケルビム様には心の声が筒抜けみたい。すぐにお返事がきた。


「心配するな、死ぬような雷ではない。静電気程度だ。そこですぐにリカバリーに入れ。ノーと言うなり、拒絶するなり、お人好しのままなんでも引き受けたり、とにかく騙されるな、殺されるな、いいな。」


(もし、それで失敗したら、、、)


「心で喋らず、声に出しなさい。失敗したら十三歳の終わりの頃にリセットする。十四歳は未来の伴侶と出会う時期だ。いいか、わかっているだろうが、これは決して地球のゲームと同じ世界ではない。おまえの人生リセットは天界の温情で起きていることだ。」


「ありがとうございます。努力します。」


ケルビム様に何度もお礼を言ってる間に公爵家の自室に戻されていた。

ここまでの七百年の努力は、公爵家の十四歳までに学ぶべき淑女としてのマナー、語学、国と王家と他国の歴史、自然科学、領地経営、ダンス、チェンバロ、バイオリン、朗読、慈善活動、手芸など多岐にわたる。多くを身につけるには充分すぎる年月。


もうウィンザー国の主と言っていいくらい知り尽くした気もするけれど、十四歳はまだ少女で子供。最初の転生では日本人三十二歳の知識も常識もあったのに、この国の淑女教育六十回以上を繰り返した結果、記憶はたくさんあるけれど、だんだんとこの国の住人らしくなっていた。

このまま、慎重に十四歳を迎えれば、きっと恋が始まるのだと思う。


ケルビム様の呼び出しの後は、慎重に慎重に生活を送って数ヶ月、無事に十四歳を迎えた。


※ ※ ※


ウィンザー国では、十四歳になった貴族の子女は、王妃主催のお茶会に保護者同伴で参加するしきたりがある。


始めてケルビム様の静電気が飛んで来た時は、直近に迫った王城の貴族子女お茶会のドレスを選んでいる時だった。

明日21時投稿予定です。よろしくお願いします。

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