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3、異世界は担当していた乙女ゲームの世界観だった

ミカエル様との別れが三分とはあまりにも短い。天界も意外にビジネスライクだったと考えつつ、周りに違和感を感じ見渡すと、私はすでに異世界に飛ばされていた。


早っ。


気がつくと豪華なベビーベッドの中に生まれたての私がいた。

ニ歳まではただただ乳母と侍女に大切に育てられた。最初は驚愕のあまり、お漏らししたり、ミルクをゲップしたり、数時間置きに泣き喚いたりしつつ、スクスクと成長していた。


私の名前は、リリエル・オウ・ホワイティエ。

ホワイティエ公爵家の末姫に転生。


自分の名前を知って、私は引きつけを起こし、医師を呼ばれた。


ホワイティエ公爵家と言えば、知る人は知っている。ここは王政をひくウィンザー王国。


なぜそうとわかるのか。

日本のライトノベルのお約束のようなワンパターン的状況で、私は詳しく知っていた。


ウィンザー王国は乙女ゲーム『ベルプリ』こと『ウェディングベルはあなたのために鳴る〜あなたはどのプリンスと恋をするのかしら』の舞台である。

魔法ありきの世界、精霊や魔獣もいるし、地球の二十四世紀とはかけ離れたファンタジーの世界そのものだった。


地球での最後の人生では、婚約者だった隼人さんの会社のWEBチームで企画諸々を担当していた。

隼人さんは、IT界で『VRに愛されしクリエイター』と呼ばれるほど凄腕の人だった。本来は教育や医療向けのVRを開発していたけれど、会社が大きくなり時代の流れで、大ヒットしたライトノベルとタッグを組み、VRを駆使した乙女ゲームが世界的に爆ヒットしたのだった。


売りは攻略対象が二十人もいて、全員が王子様か王子様レベルの容姿と様々な能力を持つ俺様から溺愛系までの数々のイケメン揃い。CVは大人気声優をはじめ、オーディションでも新人声優を発掘し、最終的に八カ国語に翻訳。

女性のキャラクターは王女様から一般人まで二十人。全員が全員主人公になれるように、主人公の女性一人と攻略男性を一名選んだスタート時点で四百通りの組み合わせ。

そこから分岐点の選択肢から派生するストーリー展開には、恋愛心理学の権威にも協力を仰ぎ、さらに AIを導入することで、プレイヤーの数だけ甲乙つけられないような進行になっていく。つまりお決まりパターンがあってないようで、どこで何が起きるかわからない人生そのものの展開が受けた。しかし、ハーレムを作るとバッドエンドになるので、一対一の幸せが見つかるという、お得感満載の乙女ゲームだった。このゲームはいつしかお見合いアプリを超えた恋愛バイブルのような位置付けにまでなっていった。

地球ではコンピューターが普通にある世界だったから、様々なストーリー展開ができたけれど、現実にこの異世界の世界観の中で生き切るのはなかなかに大変だ。登場人物は、コンピューター制御されてないのだから、最初の設定以外はみんな自由に生きる。つまり制御補正されない物語に翻弄されたのだ。



※ ※ ※



ホワイティエ公爵家ではニ歳になったら英才教育が始まった。これは乙女ゲームではわからないこの世界の現実だった。

それにしても、わたしはお嬢様系に生まれることが多い、これは天の采配よね。


なんせお父様は、ウィンザー王の兄で魔法の研究に没頭したいと王位継承権を放棄して臣籍降下し、ホワイティエ公爵になったらしい。

なので上のお兄様達には王太子の次に王位継承権がある。


ベルプリがスタートするのは、リリエルが十四歳になる時。それまでは攻略対象者が誰なのか、つまり誰と婚約するのか、誰を選んで良いのか、誰に選ばれるのかさえわからない。

それまでは、公爵家の教育カリキュラムに従って淑女教育と魔法教育をうけ、同時にベルプリ世界の詳細を思い出して万全に成長するつもりだった。


が、しかし、もう挫折しそうだ。いや、ほぼ挫折している。


ニ歳から四歳までは「ひゃい(はい)」と「いやのー(嫌なの)」、つまり『嫌』をうまく言えていたのだ。

五歳から八歳ごろまでは、「ありがとう(はい)」と「ごめんなさい(嫌だ)」を使い分けて何とかクリアした。


ところが九歳になって、教育がより厳しくなってくると、本来の私のお人好しが顔を出しはじめ、屋敷内の細々とした問題に首を突っ込んだり、あっと言う前に「はいはい、わかりましたわ。」を簡単に連発し、すぐさまリセットされ、生まれ直しになった。


繰り返すこと十ニ歳までに六十五回。

普通に計算すれば、トータル七百年くらい生きた事になる。ゲームなら一時間や数日だろうが、現実の時間軸でこうなると、キツイというより拷問のような気がする。精神的にはもうエルフか魔女の気分だ。


しかも智天使ケルビム様は、生まれ変わる度に違う人生になるかも?とおっしゃっていたはずなのに、手抜きなのかお仕置きなのか。ずっとリリエル・オウ・ホワイティエの人生の繰り返しだった。


十三歳の終わりごろに、とうとう六十六回目のリセットを起こし、気がついたら天界のケルビム様の執務室にいた。


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