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2、異世界へ行く

神様がニコニコと笑いかけてくださっている。


「白百合の乙女よ、異世界に行くにあたり、いくつかの決め事がある。心して肝に銘じよ。

異世界での転生は、魂の目的を果たすまで終わりがない。そしてその目的は『そなたが心から愛し愛されるものと結婚し、寿命まで生きること』である。それができてこそ、これまでに失った婚約者達を次の転生に導くことができるのだよ。結婚に至る前に、そなたか異世界の婚約者が亡くなった場合は、強制的にリセットされ、こちらが決めたところからやり直しとなる。よいな。」


私はうなずいた。


「では詳細はケルビムから聞いて出発しなさい。そなたの魂が寿命を全うして、再びここに辿り着く日を待っておるぞ。」


「神様、ご温情に感謝いたします。幸せな人生を生きる努力をいたします。」


神様は眩く光り消えた。


眩さが消えると、そこは役員室のような執務机や本棚、応接セットがある部屋になった。


ケルビム様が長い翼を折りたたむと人の姿となり、1人がけのソファに腰掛け、私にも着席するよう促した。ケルビム様の斜め後ろにミカエル様が控える。


「では、白百合の乙女よ、いくつかの決め事を伝えよう。まず、これから先の世界では、守護天使はおらぬので心するように。」


私はヒュっと息をのんだ。


「えっ、ミカエル様はいらっしゃらないのですか。」


「当たり前だ、ここまでの四度の人生、すべておまえにミカエルがついていながら、このような結果になったのだ。もちろんミカエルにも責任があるし、彼には大天使としての新たな修行を言い渡すつもりだ。」


ミカエル様がいなくなってしまう。


「続けるぞ。異世界では、どのような親の元に、どのような能力を持って生まれるかはわからない。決まっているのは、おまえのこれまでの記憶が全て残っていること、女性に生まれるということだけだ。もし婚約後におまえか婚約者が死んでしまったら、天界が決めた年齢からやり直しだ。同じ境遇に生まれるとは限らないし、何歳に生まれ変わるかもその度に異なり全てがやり直しとなる。心してかかられよ。」


説明が増えるに連れ、自分でも青ざめていくのがわかった。


「ケルビム様、も、もし、ずっと失敗し続けたらずっと終わりがないのですか?」


「そうなる。ただ、どうしても、どうしても絶対に無理だと思った時は、光の一部として漂うことにしてやれるが。ただし、おまえのこれまでの婚約者達も転生できずに光の中に漂うだけとなる。」


うっ!それはいけない。私だけならどうなってもいいけど、これまでの婚約者のみんなにも幸せになってほしい。どう転んでも、頑張るしかないんだ。


「わ、わかりました。」


「もしも光の中に漂う決心がついた時は、ミカエルを呼べ。すぐにミカエルが迎えに行き、その場で光に吸収される。」


「、、、っ、その場で?」


私は思わずミカエル様を見上げた。ミカエル様はとても悲しそうな寂しそうな顔で微笑まれた。


「最後に一番大切な決め事を伝える。おまえは重度のお人好しだから、すぐに『ハイ、はい、イエス!』というだろう。

だから、一回『はい』と言ったら、次の『はい』と言うまでに『いいえ』と拒否する言葉を使いなさい。

拒否の言葉は『嫌』でも『断る』でも構わないがとにかく肯定ばかりを連発するな、と言うことだ。」


「、、、あの、、ハイとイイエをセットで使うということですか。」


「そう言うことだ。言葉使いは厳密にはしないが、肯定ばかりを続けてはならない。お人好しの特徴だ。」


そう、なぜか私はイエスマン、正確にはイエスウーマンだった。前世までの育った環境もあってよく言えば素直、優しく親切、人の言う事によく耳を傾けていた。悪く言えば、八方美人、物事を荒立てるのが嫌な事なかれ主義でイエスウーマンをしていたのだと思う。

いや、ちょっと違う。どうでもよくなんてなかった、困ってる人を助けたいという気持ちがすごくあって、なんにでも首を突っ込んでしまったり、巻き込まれて、最終的には私が損な役回りをしていた。

あぁ、それが、《お人好し》だったのね。


「承知しました。もし、拒否をし忘れたらどうなるのですか。」


「人生はもれなくリセットして生まれなおす。」


「ええっ?はいをニ回連発しても?」


「もちろんだ。」


ああ、自信がない。


「そんな無茶なっ!」


「ほう!返事というものは一回と、貴族でも公家でも、社会人としても教わってきたはずだがな。普通のことだ。なんでも安請け合いしてはならん。他に尋ねたいことはないか。」


あまりにも厳しい条件ばかりで、身も心も震えていた。今ここで何を聞いて良いかわからないし、何かを聞いたところで、結局は自力で人生を生きていくしかないとつくづくわかった。これまでミカエル様が導き支えてくださったことを無駄にしてしまったのは私なのだから。


「ではそろそろ、、」


「ま、待ってください、ケルビム様。あの一つ聞きたいのですが、私が生まれながらに悪魔に魅入られている、ということはありますか?」


ケルビム様が、ふふっと笑った。


「それはない。神の国から送り出すのだ。今もおまえが純粋であるように、生まれる時は純粋無垢だ。ただ、生きていく中で悪魔の誘惑はあるだろう。もしも悪魔に魅入られた時は、その時点でリセットだ。ではそろそろ次の世界に送ろう。餞別としてミカエルと話す時間を三分与える。では健闘を祈る。」


えっ、三分?

聞き返す間もなく、ケルビム様が翼をはためかせた瞬間にかき消え、ミカエル様と二人きりになった。


「ミカエル様、今までたくさんのご守護をありがとうございました。私のせいでごめんなさい。ずっと一緒にいられると思ってました。」


涙が溢れてくる。

ミカエル様が大きな翼でそっと抱きしめてくれる。懐かしい声、安堵する清々しい香り、私の守護天使様。


「百合香、私こそ君を幸せに導いてやれなかった。どうか道に迷いそうになった時は、私の言葉を思い出してほしい。必ず幸せになるのだ。二度と会えなくても、君の幸せを祈っている。きっと君は大丈夫だ。」


「はい、努力します、ミカエ、、、」


最後まで言葉は紡げず、私の周りは眩い光に包まれ、私は意識を失った。


少し長くなりましたが、キリの良いところまで書きました。読んでいただきありがとうございます。引き続き応援よろしくお願いします。

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