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23、婚約者として

私が出生の秘密を知ってから、しばらくしてエドワード王太子殿下(ルベール)聖女リリエル(わたし)との婚約が発表された。


色々あったけれど、エドワード王太子殿下(ルベール)は現国王アルフレッド陛下の一人息子として、アレクサンダーお兄様とシュベールお兄様は、ホワイティエ公爵家の男子として、王位継承権を持つことも変わりなかった。

私は、リリエル・オウ・ホワイティエ改め、リリエル・ブラックウェル侯爵令嬢となった。


表向きは《生まれながらにして聖女であったため、王太子の婚約者と聖女という立場を守るため、ホワイティエ公爵家で保護し聖女として養育されてきた》と発表された。


エルラールお兄様と私は、バサラ・ブラックウェルと聖女ユーリア・ブルーレイの嫡子であることも発表されて、今は亡バサラお父様の弟のサンダール・ブラックウェル侯爵の養子になっている。


エドワード様は、この年、十八歳になり成人されたのでいつでも結婚できるのだけど、私がまだ十四歳なので、女性の成人の十六歳になってから、つまり二年後に結婚式をすることになった。

ただ待っていると言うよりは、王太子妃教育の傍ら、王妃様から引き継いだ公務や慈善活動もあるので、かなり忙しい日々を送っていた。


※ ※ ※


ベルプリでは婚約者ができると、ラブラブラブラブ、、、という感じで、婚約者と一緒にイベントを頑張って、日々の小さな波乱を乗り越えればハッピーエンドになる設定だったので、ほとんど悪役令嬢に邪魔をされることはなかったのだけど、現実は甘くはなかった。


王家も国のトップも王太子と私の婚約に大賛成だったけれど、とてつもなく目に余るイケメンぶりの王太子殿下を個人的に狙う女性が後をたたなかったのだ。


婚約後は、王族に準じると言うことと聖女と言うことで、警護が大変になるため、王城のホワイティエ公爵家の居住区で暮らすことになっていた。ホワイティエ家のフリージアお母様もほとんどそちらにきてくださったので生活感が変わることもなかった。

妃教育も公爵家での勉強でほとんど網羅していて、王太子殿下を教育した先生方から合格点をもらっていた。

新たに学ぶべきは、ブラックウェル家の特殊な雷魔法と、聖女の光魔法の使い方だった。


※ ※ ※


婚約して半年ほど経ったある日の夜明け、エドワード殿下の侍従長から至急の呼び出しを受けた。廊下がとても騒がしく、護衛騎士がいつもより多く、アレクサンダーお兄様とシュベールお兄様もいる。

急いで王太子の寝所に向かうと、真っ青な顔をしたエドワード様が床で突っ伏して口元を押さえている。お部屋に漂う香水が臭い。


「ルベールさまっ」


「、、、、リル、すま、、ない、、、っ、、」


駆け寄って、背中をさする。

アレクサンダーお兄様から説明があった。


「詳細は追って説明するが、殿下のご気分が非常に悪いので、回復魔法を頼む。」


「わかりました。私の回復魔法は、害した犯人に邪気が戻るようになっていますので、黒い邪気が見えたらその行き先が犯人です。」


そう言ってすぐに手のひらに光魔法を集中させて、殿下の背中にそっと手のひらを当てて、さすりながら回復を祈る。殿下の体から黒いモヤモヤが出てきて、シュウっと音がしてそのモヤモヤが寝台の方に流れていく。


「えっ?」

モヤモヤの行方を目で追うと、殿下の寝台の上に、服を着てない女性にモヤモヤが吸い込まれていく。シーツだけ被せられて護衛騎士に抑えられていた。


一瞬で悟った。十四歳のリリエルに意味がわからなくても、百合香的には理解できる。男女の既成事実を作ろうと深夜にどこかの貴族女性が王太子の寝所に忍び込んで、一糸纏わぬ格好になったのだろう。

婚約者リリエル、ここで黙っているわけにはいかない。


「今、殿下を害そうとした邪気がそちらの女性に流れて行きました。シュベール様、そちらの寝台にいる女性がいつ忍び込んだのか、過去を遡る魔法で突き止めていただけたのでしょうか。」


シュベールお兄様は、過去を遡れるビデオ検証みたいな魔法が使える。


「駆けつけてすぐに検証済みです。殿下の護衛の深夜交代時の隙を狙って、寝所に潜り込み、殿下の飲み物に睡眠薬を入れ、殿下が眠られた頃合いを見計らって服を脱ぎ、同衾したように見せかけています。」


殿下に普通の睡眠薬は効かない。命を守るために王族は幼い頃から毒に体を慣らしているが、普通の貴族はそれを知らない。


「あなた、王城の侍女ね。確かブリグ伯爵家の三女で、お裁縫室の責任者の補佐の方だったかしら。王太子殿下は侍女を執務室にも寝所にも入れないのをご存知ないのですか。間違って入ったとは言わせませんし、あなたは裸でも、王太子殿下は寝着を着たままでお具合がお悪くなっておられます。王族への不敬だと言うことはお分かりでしょうか。」


「ひっ、、、、、」


「それとあなたがつけている香水、媚薬効果がありますね。エドワード殿下は匂いに非常に過敏でいらしゃるので、殿下の周りのものは匂いに非常に気を遣っています。あなただけが臭いのですわ。」


「、、、っ、あんた、あんたなんか、聖女だからって、侯爵令嬢だからって、殿下に愛されるはずがないのよ。愛されるのは私よ。」


なんかどこかで聞いたセリフだ。それで私は道路に突き飛ばされたっけ。ちょっと腹が立ってきた。

でも無視してアレクサンダーお兄様へ声をかける。


「アレクサンダーお兄様、ここの寝台は穢され臭くてたまりませんので使えません。殿下をもう一つの寝所に移して差し上げてくださいませんか。私も同行いたします。あと、その女性の尋問をよろしくお願いいたします。裁縫室は王妃様の管轄なので、王妃様にもお話を通して処分をお願いしておきます。」


シーツに巻かれた女性が連れられていく。なんか喚いているけれど、それどころではない。ルベール様はかなりの女性アレルギーで、あの媚薬香水でご気分が悪くなったのだと思う。場所を移してから再度、回復魔法をかける方がいいと思う。

侍医の指示でルベール様が運ばれていく。

全く、国を背負う人にこんな色仕掛けが通じると思うなんて。


まだ廊下の向こうであの女性の騒ぐ声が聞こえる。

「私が選ばれるのよ、あんたなんて、あんたなんて。小娘が。」


ああうるさい。

口の中で小さくつぶやいた。

(サンダー!)

一瞬周りがピカッと光った。女性の悲鳴が聞こえる。


振り向くと、廊下の先に、髪の毛が逆立っている女性が運ばれていくのが見えた。


ちょっとスカッとした。ふふっ。


読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。

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