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14、エドワード王太子殿下

ルベール様ことエドワード王太子殿下は、前方のテーブル席で伯爵令嬢方に囲まれて身動きがつかない。

それを見て私は思った。とにかく逃げなくては、と。


せっかくお友達になれたマルグリット様には悪いけれど、お腹が痛くなったと断り、またゆっくりお会いしましょうとお約束して、そして逃げた。


エドワード殿下とアレクサンダーお兄様がいらっしゃる反対方向の庭園の方へと優雅に歩みを進め、お茶会の場が見えなくなってからは走った。

色とりどりのお花の庭園から、一つ門を開くと薔薇の良い香りがした。薔薇園を走り抜けまた門を開くと百合の園になった。息が切れてきたので少し歩みを遅らせ進むと、大きな門があり通り抜けると森に出て先まで小道が続いていた。森林浴のように木々の香りが清々しい。ゆっくり歩いていくと少し開けた場所に噴水があった。


噴水には色とりどりの可愛い妖精が集まっていた。姿は羽がある手のひらサイズくらいのお人形みたい。


「こんにちわ、妖精さん。」


「あなたには私達が見えるの。」


「ええ、水の妖精さん、お花の妖精さん、光の妖精さんに、、、」


「あなた光魔法を持っているのね。じゃあ、あなたがリリエル?」


「私を知っているの?私は昨日、光魔法のこと知ったばかりなの。」


妖精さんは私の名前を知っていた。そして喉が乾いていたので、妖精さんにお願いして噴水の水を分けてもらい、手で汲み上げ飲んだ。


あぁ生き返るぅ、ここのお水美味しい。前世、体育の授業や部活あとに水飲み場で水道の蛇口からごくごくと水を飲んだ時みたいに爽快だった。


「君は相変わらず、ご令嬢らしからぬことをするんだな。噴水の水を手ずから飲む淑女(レディ)を初めて見たよ。」


後ろから覚えのある声が聞こえて、焦って振り向こうとして咽せた。


「っ、、けほっ、っつ、、」


振り向いたら、いた、何でここにいるの、オウタイシデンカ。

オウタイシデンカがククっと笑ってる。

何で笑うの。


オウタイシデンカは、ハンカチを手にし唖然と固まっている私の口の周りを拭ってくれた。噴水に手を突っ込んで水を飲んでいたから口の周りから水が滴っていたらしい。この人何となくアレクお兄様に似てるから気を抜いてしまう。

でも一瞬で我にかえった。私はアホだ。この醜態どうしよう。筆頭公爵家令嬢としてあるまじき失態、同時に王族に対して不敬。


「あなたはいい意味で期待を裏切るね。リリエル嬢。」


「エドワードオウタイシデンカ、ナゼココニ?」


「ここは私専用の庭だ。それとルベールと呼んでくれないか。」


「へ?」


「私を見て逃げたよね。」


誤魔化さなくては。


「オホホホ、とんでもございませんわ、少し体調がすぐれず、お庭で休んでおりましたの。」


「体調が悪いのにあんなに走ってはいけないよ。それにここに辿り着くには四つの結界を抜けなくてはならないんだが、あなたは全てスルーして、私の妖精達の水場でくつろいでるし。」


「ワタシノヨウセイ?ヨッツノケッカイ?」



「王妃陛下、つまり母上の庭園は門ごとに結界があって、父上と母上以外は抜けられない。そして私の庭であるこの森も結界が強固に張ってあり私と専属騎士しか入れない。更に私の契約妖精は高位精霊なので私以上の魔力がないと見えないし、そもそも私以外は噴水の水に触れられないし弾かれる。」


「。。。。。」


意味がわからない。言われている意味がわからない。


「ルベール、リリエルをいじめちゃだめだよ。リリエルの魔力に結界は関係ないし、お水をあげたのは僕たちだよ。」


精霊さん達が私の周りを飛んでいる。


「わかった、君たちがリリエルに許可したなら私に文句はないよ。」


精霊さんとオウタイシデンカが話している。


「リリエルは、ルベールに関係なくここに毎日来てもいいんだからね。」


精霊さんが優しい。でもここはオウタイシデンカの庭だから二度と来ないよ。可及的速やかにここから去らねば。


「エドワードオウタイシデンカ、大変失礼いたしました。お水をいただき感謝いたします。そろそろお暇を。」


「だめだよリリエル嬢、お茶会から逃げたことも結界をスルーした事も不問にしよう。で、せっかくこの庭にいるのだから、少し話さないか。ここにいることはアレクも知っているから。」


王族の誘いは命令と同じ、さすがにこれは断れない。アレクサンダーお兄様もご存知ならば従うしかない。


そして噴水近くのガゼボにエスコートされた。森に馴染んでいて森の妖精たちの休息所みたいで結構落ち着く。


そして騎士の方がお茶の用意をしてくださる。途中から引き継いで良いか殿下にお伺いして許可をいただき、私がお茶を入れて殿下の前にお出しした。これも淑女の嗜みだ。


「ありがとう。ここには女性を入れないことにしているから侍女もいなくてね。」


と言うことは私は女性扱いじゃない。ちょっとホッとしていた。オウタイシデンカはそれはそれは美しい所作でお茶を一口飲んでカップをソーサーに置いて微笑む。言わずと知れたこの美男子に私は見惚れてしまった。


「あなたが入れたお茶は香りがいい。それから言い間違えた。この森には大切な女性だけが入れる。ここに入った女性はあなたが初めてだ。」


タイセツナジョセイ、ワタシガハジメテ、リカイムツカシイ。

とりあえず返事をしてみた。


「光栄ですわ。」


なんかもうダメだ。何がダメなのかよくわからないのだけど、もうお腹いっぱいで、地球人生四回とこの七百年をもってしてもダメだ。このひれ伏してしまいそうな引き込まれそうなオーラが、ああダメ!

隼人さんもイケメンだった。それでも大学の先輩後輩だったし、二十代後半からスタートした職場恋愛で何というか自然だったのに。


「さて改めて、私はエドワード・ルベール・フォル・ウィンザー。この国の王太子をしている。そして王立魔法師団の副師団長。でリリエル嬢、まずはこの前の魔力測定で私を助けてくれたこと感謝する。」


「王太子殿下とは存じあげず、数々のご無礼、大変申し訳ございませんでした。」


「身分を隠していたのは私の方だから、全て気にしないでほしい。それにあの魔力測定について、詫びなくてはならないのは私の方だ。あなたを危険に晒してしまった。」


そう言いながら私の隣に座り直している。ちょっと近い。私はちょっとのけぞりながら首を横に振って言葉を続けた。


「先に進む決断は私ががしたことですから、殿下のせいではありません。」


「あの最後の魔力測定、王太子の妃を選ぶ魔力測定なんだ。」


「。。。。。」


ああ、まずい。断れないお話になりそう。いや元より断る必要があるのかしら。でもベルプリの中で人気ナンバーワンの人がお相手というのもどうなのか、今まで私は婚約したらすぐに殺されていた、だから結婚して幸せになる人生を生み出しているところ。だからこれが運命なら。運命なのかしら。


ごくりと息をのむ。


「火、水、土、風四種類の大きな魔石を君はぜんぶ粉にして、全属性だとわかった。更に黒い大きな闇の石を浄化して光魔法を持っているとわかった。そして最後の結界を張った秘術は王太子妃に相応しいかどうかの考査だった。妃候補を何人あげても所詮は候補だ。確信があればあの魔力測定が確かだからね。この国の成人した王太子にだけ伝わる王家の禁忌の妃考査だ。失敗したら私の命はなかった。だが私には確信があったんだ。あの雷魔法を見てね。聖伝輝だったか。」


ケルビム様の《忠告の静電気》が《聖伝輝》になっちゃったのね。


ルベール様は、私の前に跪き私の手を取って指先に唇で触れて言った。


「リリエル嬢、君は私の聖女だよ。」


ひいっ、ちょっと待ってください。話が飛びすぎ進みすぎ。


読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。

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