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13、初めてのお茶会と王太子

お茶会は、王妃様の庭園で行われた。色とりどりの花が咲き乱れ、とても良い香りがする庭園だった。

ほとんどの子息令嬢達が揃った頃、王妃様がお越しになって、ご挨拶が始まる。

高位貴族、筆頭公爵家であるホワイティエ家のご挨拶は一番だった。


お母様が美しい所作で王妃様の前に進み、淑女の礼をされる。


「ホワイティエ公爵夫人、ようこそお越し下さったわ。」


「王妃様、お久しぶりでございます。本日はお招きいただきましてありがとうございます。こちらはホワイティエ公爵家が末娘でございます。さあリリエルご挨拶を。」


「あなたがホワイティエ公爵の愛娘ね。ごきげんよう。」


私はこの七百年、練習し続け身につけた淑女の礼をする。


「王妃様、お初にお目にかかります。リリエル・オウ・ホワイティエにございます。お会いできて光栄に存じます。以後お見知り置きくださいませ。」


「お顔を見せてくださるかしら。」


完璧な淑女の礼のあと腹筋をつかって私はゆっくりと体勢を戻しながら、顔を上げて微笑んだ。


ほう、と周りからため息が聞こえる。


「まあ、何て愛らしい方、今日はゆっくり楽しんでらしてね。」


「ありがとう存じます。」


短い挨拶だったが何とかつつがなくおえた。ご挨拶の列を後にし決められたエリアへと移動する。大人と子供の席がここから分かれるらしい。

お母様が小さなお声で「リル、素晴らしかったわ。あとは緊張しないでお茶会を楽しみなさい。」


「はい、お母様。では後ほど。」


お母様はご夫人方の席へ、私は子息令嬢の席へと案内されていく。


少しずつご挨拶が進み、子息令嬢側の席にも人が集まってくる。こちらはまだ社交界デビュー前で無礼講らしい。


「失礼、御令嬢、ご挨拶をさせていただけるだろうか。」

目が覚めるようなブルーの髪に漆黒の瞳の男の子だ。

私はにっこり微笑んだ。


「ブルーレイ侯爵家の次男チャールズ・ブルーレイと申します。以後お見知りおきを。」


「ごきげんよう。わたくし、リリエル・オウ・ホワイティエと申します。よろしくお願いしますわ。」


さっそく現宰相の子息と出会った。次男、と言うことは長男がきっとすでに王太子殿下の側近なんだろうな。この顔に似た顔をベルプリで知っている。


次にブラックウェル侯爵家の三男ブリーズ様とも挨拶をした。シュベールお兄様と顔見知りらしい。ブラックウェル魔法師団長様には、昨日もお世話になったのだけど秘密秘密。

次々とご挨拶をしていくと、ベルプリで推しだったオランジェ侯爵家の御令嬢マルグリット様がいてすぐに仲良しになった。

お菓子のテーブルが近い席にマルグリット様、チャーチル様、ブリーズ様と陣取り、お茶をいただきお菓子をつまみながらおしゃべりをする。皆さんの所作はやっぱり上品で美しい。私も必死で練習してきてよかったとつくづく思った。

お茶会は楽しかった。高位貴族は王族に近いから、そんなに必死で王太子殿下に近寄らなくても、という気があったのですでにマルグリット様と王宮のお菓子にはまっていた。


王妃様へのご挨拶が全員終わった頃、侍従から王太子殿下の会場入りが告げられる。


王太子殿下ってどんな方なのかしら。それよりもアレクサンダーお兄様の護衛騎士の晴れ姿を見たい気持ちの方が大きい。


前のテーブルの方で黄色い声が上がった。

あ、お兄様だわ。カッコいいアレクサンダーお兄様、いつも見ているけれど、王城で見る騎士服のお兄様はカッコ良すぎる。アレクサンダーお兄様がこっちに気がついて、目線があった。そしてその隣にいる人を見て、私は目を疑った。


「皆、今日はよく来てくれた。エドワード・ルベール・フォル・ウィンザーだ。よろしく頼む。」


王太子殿下がこっちを見た、見た?絶対見たよね。

もしかして、ど、どど、どうしよう。

あれは、ル、ルベール様だ。そして王太子殿下?何で、嘘でしょ。

アレクサンダーお兄様もシュベールお兄様も、お父様まで教えてくれなかった。

初対面ではお兄様の影と勘違いし、二回目は魔法師団副師団長様と聞いて、素手で触る許可を出し命をかけて守り合った仲で、わたしは彼に『おバカ』と言った記憶がある。

お兄様の次に好き、とも言った。


ル、ルベール様は、僕を守れるか?と聞いてきた。

ああ、はめられたのか、いや、はまったのか。


て言うか、初対面で気が付かない私が大バカものだ。ベルプリで一番人気の王太子エドワード・ルベールはキラッキラの銀髪に深いアメジストの瞳。

地球での四度目の人生、私の仕事場のパソコンのスクリーンセーバーはエドワード王太子、スマホのロック画面もエドワード王太子、名刺の片隅にも彼の肖像アニメ画、推しと言うより仕事のパートナーに等しいキャラクターだった。


さらに私はアホが足らず、今日のドレスは王太子色の薄紫のシルクシフォンに銀糸で刺繍、バックスタイルは大きな銀色のリボン、従兄妹同士だから私の色だと言い張ることもできるけれど、やっちゃった気がする。百歩譲ってオレンジ色のドレスで良かったんだ。


お母様はルベール様を知っていたはず。いや家族はみんな知っていた。

ああ、だから魔力測定の時、お兄様達が「巻き込まれる」と。

美味しかった王宮のお菓子が、手からポロリと落ちた。


読んでいただきありがとうございます。明日21時ごろに投稿予定です。

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