12、事の真相は謎
いよいよ王妃のお茶会が始まった。この一年で十四歳になった主たる貴族の子女が貴族家夫人つまり母親に引率され、続々と王城の茶会会場である王妃の庭園に集まっている。
※ ※ ※
同時にその頃、陛下の執務室は人払いがされ、国王、王兄ホワイティエ公爵、ブラックウェル魔法師団長、ブルーレイ宰相の四人が密談の真っ最中だった。
「まさか王家禁忌の秘術を使うとは、あの愚息が。兄上は気づいていたのか。」
「陛下には黙っていると約束していたから申し訳なかったが、実はルベールから聞いていた。万一のときはアレックスを王太子に、とまで考えていたようだ。」
「うむ、兄上も黙っているなど酷いではないか。これまでも時の王太子が妃考査の秘術を使った時代はあったが、いかんせん成功率が低い。禁忌なのは王太子を失うからであって、あの考査自体が禁忌なのではないのに、あのうつけ者!」
国王が激怒している。
「まさかリリエルが、光魔法を持っているとは思わんかったのだ。ブラックウェルとて、雷魔法と見当をつけていたのだろう。」
話を振られたブラックウェル魔法師団長も頷く。
「ルベール殿下とアレクサンダーから聞いた内容では、雷魔法しか考えられなかった。強いて他の属性があったとしても雷と相性が良い火か水ではないかと。全属性ならばあの秘術も回避する方法がある。」
「リリエルの家系の遺伝を鑑みてもブラックウェルの説が一般的だ。我がブルーレイ家の秘匿魔法にもあの紫の光る粉はない。しかし光魔法となると聖女認定せざるおえんだろう。聖女を隠し通すとしても、リリエルの嫁ぎ先が問題になってくる。」
「何の理由もなしに修道院に隠すわけにもいかん。」
「それにあの魔力量はなんだ。闇魔法全てを相殺してルベールの状態異常まで治癒させたとなると秘匿レベルの女神か。ルベールの闇魔法はこの国くらい全て消せるほどの魔法量なのに、それを上回っているのか。」
「本当に光魔法なのか。ルベールは聖伝輝と言っていたが。」
「私もリリエルに聞いたが、セイデンキと言っていた。ルベールは聖なる光の輝きを伝える魔法と考えているらしい。しかしそんな魔法は王家の禁書にも魔法師団の秘匿文献にも載ってなかった。」
「ブラックウェル家に伝わる文献にもそのような魔法は見つからなかった。」
「リリエルも守るなら王太子妃にするしかないでしょう。」
「しかしこの国では 従兄弟同士で結婚できない。なぜこんなことに。まずい。」
「「「 マズイ! 」」」
「何のために兄上が臣籍降下したのか、これでは意味が無くなったではないか。だいたい兄上が王位を継いでくださっていればこんなことには。」
「それはお前が、どうしても今の王妃と一緒になりたいと言うから、それしか手がなかったのではないか。」
「う、、、兄上だって、魔法を極めたいと、、」
「それはそうだが、、」
「陛下、ホワイティエ殿、今更どうしようもない。あの時、この国を盤石にするにはこれしか方法がなかったのですから、私達四人だけの秘密です。それよりもルベール殿下とリリエルが結婚できる方法を考えなくては。ルベール殿下は王妃様のお茶会に行かれる前に、わざわざ宰相室に寄ってリリエル嬢を指名して行きましたぞ。」
「アレクサンダーを王太子にするか。」
「だから陛下、ルベール殿下とアレクサンダーを入れ替えても全く意味がないでしょう。」
「そうだった、ならシュベールにするか。」
「シュベールもだめだ。それに私に似て魔法のことしか考えてない。」
「ああ、頭が痛い。ブルーレイ何とかしてくれ。」
「私だけに押し付けるな。ブラックウェルも共犯だぞ。」
「ルベールに全てを話して時間稼ぎをせねば。とにかくリリエルを王族以外に嫁がせてはならん。他国の王族などもってのほかだ。早急に手を打たねば。」
「兄上、リリエルの警護を厚くせねばなるまい。」
「わかっている。アレクサンダーとルベールのそばに置くか、ブラックウェルに預けるか。」
「そうなると、リリエルにも説明せねばならぬな。」
この国トップ四人が頭を抱えるだけの秘密が、ルベールとリリエルの結婚には問題があった。
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そしてお茶会では、、、リリエルが逃げ出そうとしていた。
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