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勉強机の椅子に座る真子に真実はベットに腰掛けたまま対峙する。
「浩太からなんか話しがあるみたいだって聞いたけど何の話しだ?」
「こうちゃんから聞いた?色々と聞きたい事と伝えたい事があるのよねー」
真子はそう言いながら真実との視線を外して扉に目をやった。
真子が向けた視線に合わせて真実も扉に目をやるが誰も入ってくる気配はなかった。
「ん? 真子? どうした?」
真実が尋ねると真子は「シーッ」と言って人差し指を立てて口に当てながら立ち上がった。
真子はそのまま足音を立てずに扉の方へ向かって歩きガチャリと扉を開けた。
するとそこには真弓が座り込んで聞き耳を立てていたのだった。
「えっ? おかん? なにしてるんだよ? 」
真実は驚きながらそう叫ぶと真弓はアタフタとしながら弁明を始める。
「あっ、あの、その、あれよ、恋の三角関係が始まるのかなーと思ってー・・・・おほほほほ、お邪魔だったみたいね・・・・あとは若い子たち同士でどうぞ」
真弓はそう言ってそそくさと階段を降りていくのだった。
真子はその姿をみてスッと扉を閉めて、勉強机の椅子に向かって腰掛けた。
「真子、スゲーな、オカンがそこに居たのわかったのか?」
真子はフーッと溜息を吐くいてから答える。
「私ね、最近、人の考えている事がどんどん頭に入ってくるようになってきたの。前までは目線を合わせた人の考えている事だけだったんだけど、ここ最近は四方八方から無秩序に入ってくるから困ってるのよ、さっきも真弓さんの心の声が聞こえてきてね、それでわかったのよ」
真実は真子の話しを聞いて驚きの表情を浮かべた。
「スゲーな・・・・でも無秩序に入ってくるとかなり精神的にキツいな、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないわよ、気が狂いそうになる。だから上手くコントロールする方法を学ぶために歌山県に居る能力者の所に行って色々学ぼうと思ってるのよ」
真実は真子の話しを聞いてなるほどなと納得をしたが気になる事があった。
「んで、歌山にはいつ行くつもりなんだ?」
真実の問い掛けに真子は少し困った顔をした。
「そこなのよ、本当はね今すぐにでも行きたいんだけど、親から『せめて中学は卒業してくれ』って言われたのよねー・・・・でもさ、学校に行くと無数の心の声が入ってくるから行きたくないのよね」
「そんな状態で1年ちょっとを過ごすのはたしかにキツいなー、でも親もよく中学卒業までって言ってくれたな、普通なら高校まで卒業してくれだろ?」
「正直に話したからね・・人の心の声が聞こえるって、お父さんもお母さんも心の中では高校までは行って欲しいって思ってたわよ、でもね、それだと精神がもたないわよ・・学力はもう既に学んでるから問題ないし、この能力を使って仕事をすれば学歴なんて関係ないしね」
真実は真子の会話を聞いて引っ掛かりを感じたのであった。
「ん? 学力は既に学んでる? どういうことだ?」
真子は関心した顔で真実を見ていた。
「そこを突っ込んでくるのはさすがまことだね、その話しをする前にあなたに聞かなくてはいけない事があるの」
真子の言葉に真実は何事かと身構えるのであった。




