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通話口の麻耶は少し声が重いようだった。その雰囲気を真実は察して麻耶に話し掛ける。
「麻耶? どうしたんだ? なにか考え事でもあるのか? 」
「う・・・・うん、相談というか・・・・聞きたい事があって・・・・」
思い詰めたよう声色で麻耶は答える。
「聞きたい事? なんだ? 」
真実が尋ねると暫く無言状態になり、その後麻耶は話し始めた。
「まことの進学は・・・・高校はどこを受けるつもりなの?」
「高校かー、俺は家から近い公立の西岡高校を受けるつもりだよ」
真実が軽く返答するのに対して麻耶は重く悩んだ唸り声を上げていた。そして再び無言状態になるのであった。無言で麻耶の返答を待つ真実は思い考えていた。
(麻耶は何を悩んでいるんだ? 俺の進学の進路を聞いてくる、そしてこの重い空気・・・・まさかとは思うが麻耶のヤツ・・・・)
真実がそこまで思い立った時に何かを決心した麻耶は口を開いた。
「まこと、私も進路は西岡高校にする! 」
麻耶の言葉を聞いた瞬間、真実は(やっぱりー、麻耶が一緒の高校に行きたいって言ってきたー)と思いながらスマホを耳に当てながらアチャーっと天井を見上げてしまった。
真実からして麻耶が同じ高校に進む事はずっと一緒にいれるので嬉しい事である。しかし、麻耶のこれからの人生を考えると難関高校である関成高校に合格して進む方が断然いい事である。関成高校は偏差値72のエリート進学校であり、全国偏差値ランキングでも上位に位置するくらいである。前の世界では麻耶は無謀だと周りから反対されたものの見事に合格を勝ち取ったのである。そんな道を開く事ができる人間が俺のために受験さえすれば受かる高校に行くのは勿体なさすぎる。
真実はなんとか麻耶を前の世界と同じ関成高校へ行かせたいと考えていた。
「麻耶は本当に行きたい高校はどこなんだ? 」
真実が尋ねると麻耶は暗い声色で応える。
「・・・・関成高校・・・・」
「なぜ、関成じゃなくて西岡なんだ?」
「なぜって! まことと同じ高校に行きたいからじゃない! 関成はみんなから無理だって言われてるし・・・・」
真実はヤレヤレとため息をつきながら麻耶を説得した。
「一緒の高校に行きたいって言ってくれるのは嬉しいんだけど、俺は麻耶が関成を受けて合格して進学してほしいよ」
「一緒にいれなくなっちゃうよ・・・・」
麻耶は悲しそうに応える。
「そうだなー、だけどさ、オレは・・・・オレの所為で関成に行けるチャンスを棒に振って欲しくないんだよ、オレと一緒に居たいから行きたい所を諦められる方がオレは悲しいんだよ・・・・」
真実はそう話すと麻耶が返す言葉を失い何も言えずにいたので更に話し掛ける。
「おそらく関成を受験するためには今以上に勉強しないといけないと思う、それでオレたちの会う時間が少なくなってしまうかもしれない・・・・それでも麻耶は関成を受験して合格を目指し欲しいんだ。離れたからってオレが麻耶のことを好きなのは変わらないんだから」
真実がそう話していると電話口から麻耶の啜り泣く声が聞こえてくる。麻耶は泣きながら口を開らく。
「私もまことか好き・・・・・・・・まこと・・ありがとう・・私、関成を受験する・・、まことと付き合ってるから諦めたなんて言わせない。絶対合格してみせる!」
泣きながらではあったが麻耶の力強さを真実は感じとり安堵するのであった。




