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麻耶は真実の部屋に入ると智大、浩太、憲一の3人が待ってましたと言わんばかりの拍手喝采と麻耶コールで出迎えた。一方、真実はベットに腰掛けて額に手を当てて下を向きながらグッタリとしていた。麻耶は盛大な歓迎にビクッと身体を縦に揺らして驚き、その場に立ち尽くして3人を見ていることしかできなかった。
浩太は立ち上がり麻耶の元に歩み寄り、手を取ってエスコートを始めた、そして真実の横を手で指し示す。
「どうぞ、まことの未来の奥様、貴女様のお席はこちらでございます」
「えっ? はぁ? あっ、どうも・・・・」
麻耶は3人のテンションについて行けず何とも言えない顔で真実の横にチョコンと座った。
真実はまだ額に手を当てて下を向いている。
麻耶は横で下を向いている真実の横腹を肘で突いた。
「まこと? これは何? 何が始まるの・・・・」
「麻耶、すまん、こいつらの馬鹿茶番に付き合ってやってくれ・・・・」
真実は下を向いたままボソリと呟く。
麻耶のエスコートを終えた浩太が座ると、今度は憲一が立ち上がりペットボトルをマイク代わりにして持ちながら麻耶に近づいてきた。
「えーっ、それではー、麻耶さんに今後の結婚へ向けてのスケジュールに関してインタビューさせて頂きます!」
麻耶は憲一の言葉を聞いて驚いた表情で真実を見ながら小声で問い掛ける。
「えっ? 結婚? スケジュール? ちょっと、まこと、どういうことよ?」
「すまん、麻耶・・・・あいつらどうしてもこの茶番劇をやりたいって言ってきて、阻止しようと思ってゲームで賭けをしたんだが3対1は勝てなかった・・・・すまない・・・・」
「えーーっ、それって私、関係なくない?なんで私巻き込まれてるのよ」
麻耶はガシガシと真実の脇腹に肘を喰らわしながら小声で話し掛けるが無情にも茶番劇が始まったのである。
「えーっ、まずー、挙式スケジュールの質問に入る前に、麻耶さんはまことくんのどこが好きなんですか?」
憲一はそう問いかけてニヤリとして麻耶にマイク代わりのペットボトルを向けてきた。
麻耶はこの状況にイラっとしたが、反撃の手立てを瞬時に思い浮かべることに成功し、平静を保って言葉を発した。
「あら?憲一さん? あなた、たしかー、佳代さんと交際中でしたよね? そういえばー、貴方達の方が早く付き合い始めましたよね? 私たちよりもまず貴方達のご結婚のご予定を伺ってよろしくて?」
「えっ? あの? いや・・ そのー・・・・」
麻耶の予想外の反撃に憲一は返答する言葉を失い、恥ずかしくなり元の場所に戻って座り込んだのである。
真実はそのやり取りを聞いて顔を上げて麻耶を見ると、麻耶はドヤ顔をして真実を見ていた。(よしっ!ケンちゃん撃破)
「ったく、だらしねーなっ、ケン、俺にマイク貸せ」
そう言って智大が立ち上がったが麻耶は足を組み、冷めた目をしてすぐさま攻撃を開始する。
「へぇーっ、ともくん? 私たちに何をお聞きになるおつもりで?・・・・内容次第では今回のともくんのための作戦はなかったことに・・・・」
「あっ・・・・すみませんでした」
智大は麻耶の速攻を受けて即座に萎れて座った。真実は唖然として麻耶を見る。
「麻耶、すげー」
麻耶は真実にグッと親指を立てた。(よしっ!ともくん撃破)
「お前らは、ホントだらしねーな、俺が出るしかねぇな」
そう言って勝ち誇った顔をして浩太が立ち上がった。
「俺様は付け入る隙はねーぞ、ぐへへっ、俺の質問で麻耶ちゃんを丸裸にしてやるぜー」
(こうた・・・・なんか悪役ヅラになってる・・麻耶、大丈夫か? 回避できるのか?)
真実はそう思いながら麻耶を見ると麻耶はニヤリとして浩太を見た。
「あらー、最後はこうたくんなのね? 貴方が1番カモなの分かってる?」
「はー? 麻耶ちゃーん? なーに言ってるんだよ、俺にはなんもないんだよ」
「そうよねー、ないと言うかいないよねー、私とまことは好き同士、ケンちゃんは佳代ちゃんが好き、ともくんは裕子ちゃんが好き・・・・あら? あなただけ好きな人、みんなに言ってないわねー?」
麻耶がそう言うと浩太は「ウグッ」と言って後退りした。すると憲一が麻耶の言葉に賛同してきた。
「そういえば、こうたって好きな人、誰か言ってないよな」
「たしかにそうだな」
智大も同意する。浩太はそんな2人を見て危機感を募らせる。
麻耶はここがチャンスと見て立ち上がりペットボトルを浩太から奪い取り、逆転インタビューを始めた。
「さて、では、こうたさーん、あなたの好きな人は誰ですかー?」
麻耶のインタビューに憲一、智大、真実が各々のペットボトルをマイク代わりにして浩太に向けた。浩太は観念してヘタリと座り込んだ。(よしっ!こうたくん撃破)
麻耶の見事な3人切りであった。矛先は完全に浩太に向けられていてまだ智大と憲一から「好きな人を吐け」と質問攻めを受けていた。
浩太は質問攻めに観念して下を向きながら恥ずかしそうにボソリと呟いた。
「いしもと・・まこ・・・・」
真「えっ?」
智「はっ?」
憲「へっ?」
麻「はい?」
浩太を取り巻く4人は口々に疑問を吐いて数秒固まった。
暫くして真実が浩太に確認する。
「えっ? マジで? 真子のこと?」
浩太はゆっくりと頷く。
「えーーーーっ!」
4人の驚きの声が部屋中を飛び越え野元家中にこだましたのだった。




