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智大と浩太は家に入り階段を上がって真実の部屋の扉をバッと開ける。
「こんちゃーーーす!」
浩太が叫びながら部屋に入ると真実は平然とした顔でベッドに腰掛けて足を組んでいる。一方麻耶は少しビクッと身体を縦に揺らして驚いた顔をしてテーブルの真実がいつも座っている場所に座っていた。
智大はアチャーっという素振りを見せて手を額に当てて上を見上げた。対照的に浩太はッシャーという素振りで小さくガッツポーズをしていた。
その姿を見て真実は怪訝な顔をして言葉を発する。
「おまえら、入って来た時にオレと麻耶の座り位置で賭けをしてただろ・・・・」
「なんのことだか・・・・」
浩太はそう言いながら部屋に歩み入った。2人はいつもの座り位置に鎮座する。そして浩太は静かに智大に向けて手を差し出すと智大は渋々ポケットから100円玉を取り出して浩太の手に乗せるのであった。
そんなやり取りを目撃した真実はヤレヤレという仕草をして突っ込んた。
「やっぱり、おまえら賭けてたんじゃねーか、ったくしょうがねー奴らだな」
浩太は何処吹く風と聞き流しながら麻耶の顔を見た。
「麻耶ちゃーん、久しぶりだなー、元気? そろそろまことに愛想尽かしてオレのところに来る気になった?」
麻耶は浩太の茶化し挨拶に驚きの顔をした。
真実は立ち上がり麻耶の横に座るために歩きだし、途中で浩太の頭をパチーんとハタきながら通り過ぎた。
「こうた、いらない茶化しを入れるな」
そう言いながら真実は麻耶の横に座り込み麻耶にくっ付いて右腕を麻耶の腰に回してグッと引き寄せて畳み掛けるように言葉を発する。
「俺たちはラブラブなんで」
そういうと浩太は「ヒューーゥ」と言って唇を尖らせる。智大は羨ましそうに真実と麻耶を見つめていた。麻耶は恥ずかしそうにしていたが、なすがままの状態で真実に身を任せていた。
暫く4人で話しをしていると玄関が開く音がして賑やかな声が聞こえてきた。母真弓が帰宅したようである。浩太はその声を聞いてしみじみ語る。
「まこ母は相変わらず賑やかだなー、まこ母が居るだけで野元家の雰囲気がガラッと変わるよなー」
「ただ、うるさいだけだよ・・・・」
真実は冷めた表情をして浩太に反論しながら時計を見る。時間は12時50分、(そろそろ真子も来る頃かなー)と思い耽ける。それから5分程経ったくらいで部屋の扉を誰かがノックする。(ん?オカンか?)と真実は扉に顔向けると、扉を開けて入ってきたのは5人分の飲み物とお菓子アソートを乗せたお盆を持った真子であった。
「いらっしゃーい、母のまゆみですー、まことがいつもお世話になってますー」
真子は母真弓のモノマネをしながら歩み寄りテーブルの空いている所に座りながらお盆をテーブルに置いた。
真実はその姿を見てドン引きしていた。麻耶はキョトン顔で真子を見ている。
「おい、真子、またインターホン鳴らさずに勝手に入ってきて、しかもオカンの真似やめろ、引くわ」
真実は冷たい目線を真子にぶつけながら話した。
「ちょうどまことの家に向かってる途中で真弓さんに会ってね、ご一緒させてもらったの、家に入って2階に上がろうと思ったら引き止められて『これ持って行ってー』って渡されたから真弓さん風に持ってきたのよ」
真子はそう言いながら早速アソートの中からお気に入りの一口バウムを見つけて自分のモノと言わんばかりに確保した。
真実はヤレヤレと顔をフルフルと横に振りながら違和感を感じていた。
(真子のヤツ、オカンのこと真弓さんって言ったな、昨日はお母さんだったのに、真子も真子なりに麻耶に気を遣ってるってことか・・・)真実はそう思いながら真子を見ると真子は麻耶にジッと目線を合わせていた。そしてスッと真実に目線を変えた。
「心配なさそうね・・・・」
真子は真剣な表情の中に安堵を混ぜ込んだ表情を真実に向けて静かに言葉を発した。
真実は直ぐに真子が何を心配していたのか理解して麻耶の頭を撫でながら返答した。
「ああ、大丈夫だ、さっきちゃんと話しをしたよ」
「そう、よかった」
真子は安心した顔をしてバウムを袋から取り出してポイッと口に頬張った。
麻耶はそんな2人のやり取りを見て自分の事だと理解してニコやかな顔をして真子に話し掛けた。
「真子ちゃん、気を遣わせちゃってゴメンね。私はもう大丈夫だから」
麻耶がそう言うと真子はバウムを頬張ってモグモグさせていたので話す事が出来ず、ニコやかな表情を返してうんうんと頷くのだった。
そんな和やかな雰囲気とは違った熱い熱気を帯びた雰囲気を真子は感じ取り、向かいと左に座る浩太と智大をバッ見る。
浩太は羨望の眼差しで真子を見つめて言葉を発する。
「真子様! こんちゃーーす!」
智大も続いて真子に熱い眼差しを向け、テーブルに手をついて頭を下げながら言葉を発する。
「真子様ー!今日はよろしくお願いしまーす!」
真子は驚いた表情をして口をモグモグさせながら2人を見ることしかできなかった。
真実はヤレヤレと顔をフルフルと横に振っていた。
「真子のしもべか・・・・しかも昨日から1人増えてるし・・・・」
麻耶はそんな皆のやり取りを見てクスクスと笑うのであった。




