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生徒会活動も終わり真実は裕子と一緒に2年1組の教室に向かうために廊下を歩いていた。真実は隣にいる裕子の様子を伺うがやはり元気がない。だからといって理由が分かっているだけに真実が元気づけることもできないのでどうしたものかと考えている内に教室へと戻ってきたのだった。
お互い帰り仕度を自分の机で準備していると真実は机が離れた所にある裕子に声を掛けられた。
「ねえ・・野元くん・・・・」
なんとも寂しそうでか細い声だったので真実も危うく聞きそびれてしまうほどであった。
「ん? どうした古屋さん?」
そう言って真実は裕子の方に視線を向けた。裕子は自分の机にカバンを置いたまま真実からは横向きの姿で立ち竦んで下を向いていた。そしてそのままの姿勢で話し始める。
「野元くん・・・・麻耶ちゃんと付き合ったんだってね・・・・」
なんとも寂しそうな声色で話す裕子に真実は返答出来ずに裕子を見ることしかできないでいた。20秒か・・いや、30秒ほど無言状態が続いていたことに真実はハッとして気付き、落ち着かせてから穏やかに返答した。
「うん、そうだね、麻耶と付き合った」
真実のその返答に裕子はぎゅっと唇を噛み締めた。
「なぜ・・? なぜ・・・・麻耶ちゃんと付き合ったの?」
裕子は少し声を震わせながら、まだ下を向いたまま尋ねた。その姿は、悲しみ、悔しさ、憎み、妬み、怒り、全ての負の感情が入り混ざっているような空気を漂わせていた。
真実もその姿をみて少し驚いたが、流石は年の功である、すぐに気持ちを立て直した。
「なぜって言われてもなー」
(凄い空気になってるな・・・・普通の中学生なら萎縮してしまうぞ・・。裕子にちゃんと話をした方がいいかもしれないな・・・・、裕子が傷ついてしまったとしても)
真実は険しい空気のなか決意して話しを続けた。
「オレ、中1の時麻耶のこと好きだったんだよ、だけど自分で勝手にオレは向いてないかと思って諦めてたんだ・・・・そしたら麻耶が告白してきてくれて・・だから、好きだったから付き合ったんだ」
裕子は下を向いたまま真実の言葉を聞いていた。顔からポタポタと雫が落ちていた。裕子は涙を流しながら顔を上げて真実の方へ身体を向けた。
「わたし・・わたしは小学生の時から野元くんのことが・・ずっと・・・・ずっと・・好きだったの! 野元くん! 麻耶ちゃんとじゃなくて、わたしと付き合って!」
裕子の声は教室中に響き渡った。誰もいない夏休みの学校、廊下にも響き渡ったであろう声の後再び静寂が戻ってくる。




