〜 from another perspective 〜 [古屋裕子の視点]其の④
引き継ぎは淡々と行われていき、野元くんはそそくさと帰って行ってしまった。私は一緒について行きたかったのだが、また辛くなりそうだったので少し時間をズラして教室に戻ることにした。生徒会室を出て2年1組へと続く廊下をトボトボと歩いていたらちょうど3組の教室の横に差し掛かった辺りで2人の男子が教室から出てきた。西園寺くんと川崎くんである。その2人を見た瞬間、私は頭で考えるよりも先に行動が先走った。
2人の元に近寄り呼び止めたのだ。
「西園寺くん、川崎くん、ちょっと話があるんだけど」
「おぉー、古屋さん、どうしたの?」
西園寺くんは驚いた顔をしながら返事をしてくれた。
(ココで話ししてたら野元くんに見られてしまうかもしれない・・・・)
私はそう思いながら辺りをキョロキョロと見回した。
川崎くんが何かを察してくれたのか優しく語りかけてきた。
「ココでは話しにくいのか?3組は今憲一と佳代しか居ないからそこで話す?」
川崎くんの親指は教室を差していた。
私は頷いて3組の教室に入っていくと、そこには衝撃の風景が映し出されていた。豊川くんと島原さんが居たのだが、豊川くんの膝の上に島原さんが座っていて手を繋いで仲良く?いや、ラブラブで話しをしているのだ。私は驚いてえっ?と発して固まってしまった。
「憲一、佳代、ラブラブなとこ悪いんだが、ちょっと3人で話ししたいからトットと帰ってくんね?」
西園寺くんが平然と2人を帰路につかせようとした。豊川くんと島原さんは恥ずかしい素振りも見せずに「あいよー」と言って帰り仕度を始めた。
暫くして2人は教室を出て私、西園寺くん、川崎くんの3人だけになった。
西園寺くんが先陣を切って話し始めた。
「よし、お待たせ、古屋さん、話しって何?」
私は衝撃な風景を見て我を忘れていたのだが少し間を空けて我に返って2人に尋ねた。
「6月の終わりくらいからかな、野元くんが元気ないように見えるんだけど、なにかあったの?」
その言葉を聞いて西園寺くんと川崎くんはお互いの顔を見合わせて気不味い顔をしたのだった。
「うーーん・・・・ これは難しい質問だなーー・・・・どう答えたらいいのか・・・・」
西園寺くんは困った顔をして天井を見ながら顎に手を当てて言った。
「まあ、たしかに最近元気ないね、一緒にやってたGTOも加わらなくなったからね」
川崎くんは腕を組んでうんうんと頷きながら私に同意した。川崎くんが続けて話す。
「古屋さんはなぜまことが元気ない理由を知りたいの?」
「えっ? それは・・・・生徒会の引き継ぎをしてて、元気ないから・・・・なにか助けになれる事ないかなと思って・・・・」
少し戸惑いながら返答すると、川崎くんは空かさず聞いてくる。
「それだけ?」
即答できなかった・・・・川崎くんの顔を見ると何か知ってるよと言わんばかりの顔をしている様に見えた。暫く無言の状態が続く。
(川崎くんは私が野元くんのこと好きなの知っているのかな・・そんな顔してるなー・・どこでバレたのかなー、麻耶ちゃん? いや、麻耶ちゃんは絶対に言わない・・・・今はそんなことどうでもいい。ここは私の気持ちを2人に伝えて野元くんに何があったか聞かないといけない)私は右手をギュッと握りしめた。
「わたし、野元くんのことが好きなの・・・・小学校の時からずっと好きで、ずっと野元くんのことを見てきた・・・・あんなに元気のない野元くん、おかしいよ、早く前の元気な野元くんに戻って欲しい、その為にわたしが何か出来ることないかなと思って!」
私は必死の形相で話した。西園寺くんは驚いて川崎くんの顔を見ている。川崎くんは下を向いて目を閉じていた。川崎くんは暫く考えてから顔を上げて静かに話し始めた。
「古屋さん、まことのことが好きなら尚更理由は知らない方がいいと思うよ、知ってしまうと古屋さん、ショック受けて落ち込んじゃうかもしんないよ・・・・」
私は川崎くんが言った事が理解できず勢いで返答する。
「そんなの関係ない、逆に今知らないまま終える方がショックで落ち込んじゃうよ!」
私の熱意に負けたのか川崎くんはフーッと溜め息をついて西園寺くんを見た。
「こうた、古屋さんに話してやってくれ・・・・」
西園寺くんも決心したのか川崎くんの顔を見たあと私に顔を向けて話し始めた。
話しの内容は衝撃でショックを受け、大ダメージを受けるものだった。まず、野元くんは島原さんのことが好きだった、だけど石本さんから告白を受けてそれを断る。その後島原さんと豊川くんが付き合っていたことが発覚し、ショックを引き摺ったまま石本さんに告白してフラれてしまう。
私の知らない所でそんな事があったなんて・・全然知らなかった・・・・。
私は知らないかった出来事、野元くんが他の人が好きだった事、今現在ショックで落ち込んでいる事、様々な事が頭に入ってきて悔しさ、悲しさ、寂しさ、すべてが混ざった感情がボロボロと溢れてきてそれが涙になって出てきた。
涙を流している私の姿を見て、川崎くんはやっぱりなという顔をしていたが一言私にぶつけてきた。
「で? 古屋さんはどうするんだい?」
川崎くんの言葉は力強く私の背中をドンっと押してくれたような感覚がした。
私は溢れる涙をギュッと抑え込んだ。
「わたし、野元の側で支えたい! わたしの力で野元くんを元気な姿に戻したい! 野元くんに告白して付き合いたい!」
西園寺くんはジッと私の顔を見ていて、川崎くんはまた目を閉じて下を向いている。
「告白したいけど、今のままじゃ私、野元くんにフラれちゃうかな・・・・」
私は下を向いて自信なく呟いた。
「いや・・・・可能性はある」
川崎くんが呟いた言葉に私と西園寺くんは驚いて川崎くんの顔を見た。
「作戦はある・・・・だけど、あいつ、頑固なとこあるからなー、上手くいくかどうか・・・・五分五分かなー」
私は可能性が5割あるのに驚き固まっていた。(えっ?そんなにあるの? どんな作戦を組めば50% なんかになるの? 私なんか0% に近いと思ってるのだけど・・・・) 私は川崎くんの作戦に頼るしかなかった。
川崎くんの作戦はこうである。
野元くんは今誰でもいいから彼女が欲しい気持ちがある。しかし、理性というか意固地な性格が邪魔をして奥手になっているのだという。そこを上手く付け入って壊せれば成功するらしい。まず私が単身で乗り込み告白をする、OKならそれでいい、NOなら廊下で成り行きを見守っている西園寺くんと川崎くんが乗り込んで後押し、意固地な部分を砕く。という流れだそうだ。上手くいくか分からないけどやるしかない。私は決心した。
「川崎くん、いつ決行する」
「そうだなー、夏休みに入る前に決めたいな、終業式の日でいいんじゃないか?」
西園寺くんが腕を組んで割って入る。
「終業式の日、まことに一緒に帰るよう話しをつけとくよ、んで、帰る前に先生に呼ばれたって言ってまことを教室に待たせて、みんなが居なくなったところで実行ってのはどうだ」
「こうた、ナイス、その案頂き」
そう言って西園寺くんと川崎くんは腕を上げてパーンと手を合わせた。
私は野元くんに想いをぶつけるだけだ、よしっと右手をギュッと握りしめたのだった。




