〜 from another perspective 〜 [古屋裕子の視点]其の③
梅雨の真っ最中、ジメジメとして雨の日が続く中、私は迫り来る決戦に向けて準備をしていた。今は6月の後半、7月の頭にはいよいよ生徒会選挙が行われる。私は立候補者一覧をジッと見つめている。私の名前の横には野元くんの名前が書かれていた。二人が生徒会役員になり活動を共にする日が近づいてきたのである。野元くんは間違いなく当選するだろう、問題は私である。上級生から下級生まで、知り合いを伝って選挙活動を行なってきた。あとは演説でしっかりアピールをしなければいけない。準備を怠らずに進めていかなければ・・・・ 。
そして、私の熱意が全校生徒に伝わり、生徒会選挙は見事当選。しかし、その喜びもある出来事に打ち消された・・・・それは、当選者名の中に野元くんの名前が無かったのである。私は当選者名リストを握り締めながらフルフルと震えていた。その足で選挙管理室へと向かい野元くんに合を入れた生徒が何%いたのかを聞き出そうとした。
「野元くんかい? 彼は当選していたんだけど辞退していたんだよ。選挙前日だったかなー 、急に辞退したいって言ってきてね、でも色々と準備が進んでいたのでとりあえず選挙には出てくれってお願いしたんだよ。当選してもやらない、まあ・・落ちたことにするってことでね」
その話を聞いて私は愕然とした、なんの為に私はここまで頑張ってきたのか、いや、生徒会の活動はやりたかった、野元くんが生徒会活動をしている姿を見て、私もあんな風になりたいと思って立候補した。その中で野元くんと一緒にできればなお嬉しい。野元くんが居なかったら楽しさ半減である。私はガッカリしながら足取り重く教室に戻った。
教室の扉を開けるとクラスのみんなが祝福してくれた。皆が私に拍手を送ってくれて、協力してくれた子たちから握手を求められた。私は戸惑いながらも出来るだけ笑顔を見せながら皆からの祝福を受けとめた。横目で野元くんの机を見るとそこには野元くんの姿はなかった。その日、野元くんは登校しておらず欠席していたのであった。
次の日には野元くんはちゃんと登校してきたが元気がない。いつもは5人集まって賑やかにスマホを握りしめてゲームをしていたのに、今日は野元くんが一人で机に伏しているのだった。まだ体調悪いのかな? と心配しながら野元くんを遠くから眺めることしかできないでいた。
早く野元くんが元気になりますように。
1学期の期末テストも終わっていよいよ今日から生徒会活動が始まる。本格時に活動するのは9月からなのだけど、先に引き継ぎを行なっていかなければならないらしい。そして引き継ぎをしてくれるのは野元くんだ。野元くんと一緒に生徒会活動はできなくなっちゃったけど、8月末までの引き継ぎ期間は一緒に行動ができる。裕子はこの日が来るのを楽しみで仕方なかった。しかし、心配事がある、それは野元くんが6月を過ぎてからずっと元気がないのである。何かあったのかな?ホント心配だよ・・・・。
授業が終わり活動時間になって私は気合いを入れて野元くんの所へ向かう。
「野元くん、生徒会室に行こう」明るくて元気な声で話しかける。
「はいよー 」野元くんは顔を下に向けたまま気の抜けた声で返答してきた。
2人で生徒会室に向かう際、私は野元くんと並んで歩いていることに幸せを感じて飛び跳ねるように歩いていた。(遂にこの日がやってきたー、うれしいなー、うれしいなー)そう思いながら横を見ると、野元くんはまったく対照的に暗く、元気がないのに気づいた。私は高揚を抑えて普通に歩き直して野元くんの顔を見ながら尋ねた。
「野元くん、最近元気ないね、どうしたの?」
野元くんは私の顔を見ることなく無表情で真っ直ぐ前を見て歩いている。
「ん、別に、いつも通りだよ」
「うーん・・・・そうかなー 、春頃に比べるとなんか違うんだよねー 」
「そうか? 気のせいじゃね?」
私は野元くんの返答にどうも納得できないでいた。(誰がどう見たって前の野元くんと違うんだって・・・・生徒会の辞退も関係してるのかな?)そう考えて更に質問を投げかけてみた。
「野元くん、なんで生徒会延長しなかったの?」
「ん、もういいかなって思って」
野元くんは素っ気ない態度で答えた。その姿を見て私はなんだか寂しくなった。
(明らかに何かがあったのに答えてくれない。まあ、今まで仲良くしてきた訳じゃないからなー、仲良くない人には言いたくないんだろうな・・・・なんか寂しくなっちゃうよ)
複雑な気持ちで下を向き生徒会室へと向かうのであった。




