〜 from another perspective 〜 [墨田 麻耶の視点]其の②
しかし、あの時助けてくれた山のような男は誰だったのだろう。この学校は1学年で10クラスもあるのでなかなか同級生の顔を全員知っているというのは無理がある。しかもあの大きな体格は上級生の可能性もあるので見つけるのはなかなか難しい・・・・と思ったら直ぐにわかった。なんとその山は生徒会に立候補しているではないか、野元真実という名で同級生であった。それからというもの、廊下で何度かすれ違う事はあったが私は彼にお礼を言うタイミングを逃し続けていた。そんな中、彼の行動を目で追う事が多くなっている自分自身にふと気づいた。そう、山のように大きな体格で威圧感があるにも関わらず優しい顔をする、正直それほどイケメンではないのだが何故か引き込まれていくものがあり、そこに惹かれていったようである。そうか私は野元真実が好きなんだと気づいたのである。
それからしばらくが経った頃、まだ彼にはお礼も言えておらず、声も掛けれず遠くで見ている状態が続いていた時の事だった。その日も裕子と2人で小説の評論会をしている時に、裕子がいきなり私に相談をしてきたのだった、相談? いや、最初は確認だったかな・・・・
「麻耶ちゃんは野元くんのことどう思っているの?」私は内心驚いたが顔には出さないようにした。この時の裕子の声色と少し下向き加減で顔を赤らめている姿を見て瞬時に察してしまった。裕子も野元くんのことが好きなんだと・・・・私は平静を装いながら裕子に「なんで?」と聞いてみた。裕子は顔を下に向けたままである。「麻耶ちゃんが遠くで野元くんを見ている時の表情がなんか・・・・好きなのかな・・・・って」
私は動揺を押し殺した。(あちゃー、バレてるー・・・・そんなに分かり易い態度だったのかな・・・・これ、好きって言ってしまうと裕子との仲が終わってしまうかもしれない。せっかく親友ができたのに好きな人が同じで溝ができるのは避けたいな・・・・ )瞬時に私は好きな人よりも親友を取ったのだ。この偽りを言わず正直に好きだと言っておけば私の中学校生活は変わっていたかもしれない・・・・ 「裕子ちゃん、何を言ってるの? 私は野元くんのこと好きじゃないわよ、ただ亜紀とのいざこざから助けてくれたのが野元くんで、私まだお礼を言えてなくて・・・・タイミング逃してしまって、なかなか言い出せずに見てることがあるんだけど、その姿を見て勘違いしてるんじゃない?」(ああ、なんて恍惚な嘘をこうもペラペラとしゃべるなんて・・・・これも裕子の為か)
裕子は私の言葉を聞いて顔をバッとあげて私を見ている。顔を赤くしてホッとした様子である。私は裕子に野元くんのことが好きなのかと聞くと彼女は恥ずかしそうにコクリと頷いた。「野元くんってそんなにイケてる顔じゃないじゃない、どこがいいの?」少しイタズラのような質問をしてしまった。裕子は真剣な表情で私の顔を見て答えた。「顔じゃないのよ、野元くんのあの優しい笑顔がいいの、体も大きくて怖い感じするけど、話をすると優しく笑ってくれるの、凄く惹かれていくのよ」顔をグイグイと近づけながら必死に訴えかける姿を見て「わかった、わかった」と言って両腕を掴んで引き離した。(あー、私と同じ理由だ・・・・裕子とは本の感受性も似てるからなー、惹かれるところも似てるってわけね。あっ、それでかな、心配で私に好きか聞いてきたのは・・・・まぁ、ここまできたら裕子を応援するしかないな)「そっか、裕子ちゃんのこと応援してるよ、良い関係になれるといいね」私は感情を押し殺して裕子を応援することを決めた。




