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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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125/127

[116]

夏休みが始まって、すぐに私は電車を乗り継ぎ中学時代の地、暁月町へと向かう。

久しぶりの地元にも関わらず、荷物だけでなく、気持ちも身体も重たかった。


私は駅を出ると、そのまま脇目も降らず、真実の家へ向かう。

今日は裕子の家に泊まって、明日帰る予定。

でも、それは建前だった。


(まずは、真実に会わなきゃ)


スマホのLIMOを開き、真実に送った『今日、行くね』のメッセージを確認すると、まだ未読のままだった。


懐かしい道を歩き進んで行くと、目的地である野元家の前に立つ。

そしてインターフォンを見る。

指はそこにあるのに、押せない。


いきなり来てよかったんだろうか。

会いたくないって、言われたらどうしよう。


(でも・・・・謝らなきゃ)


何を?

分からない。

でも、とにかく謝らなきゃいけない気がした。


私は目を閉じて、意を決し、インターフォンを押した。


少しして、ドアが開く。


「・・・・えっ?あら・・?まやちゃんじゃない」


真実のお母さんだった。


「久しぶりね」


「ご無沙汰してます」


私はその場で、反射的に頭を下げた。


「どうぞ、上がって」


そう言われて顔を上げた時、

胸の奥がざわりとした。


(お母さん・・疲れてる?)


それも、ただの疲れじゃない。

中学の時に見ていた、あの明るくて穏やかなお母さんとは、明らかに違っていた。


家に入って、階段を上がろうとすると、

「まやちゃん・・ちょっと待って」と止められた。


リビングに通される。


ソファーに座った瞬間、聞かずにはいられなかった。


「まこと・・いじめにあってたって聞いたんですけど・・・・大丈夫なんですか?」


お母さんは、ゆっくりと首を横に振った。


疲労感が、

悲壮感に変わるのを、私ははっきり見た。


「事件の翌日ね、いったん学校には行ったのよ。

でも、一時間目が終わったあと・・・・

先生に何も言わず帰ってきて、それっきり」


「・・・・それっきり?」


「部屋から、出てこないの」


言葉が、胸に落ちてこない。

理解するのが、怖かった。


「ご飯は?・・ちゃんと食べてるんですか?」


「降りてはこないけど・・・・

部屋の前に置いておくとね、

しばらくしてから、食べた跡はあるの」


一瞬、間が空いた。


「・・・・前みたいな量じゃないけど」


私は、何も言えず、ただ聞いていた。


「一度だけね・・・・」


お母さんが、ぽつりと続けた。


「一度だけ、あの子、喋ったの」


トイレに降りてきた時、遠目で見ていたら、

階段を上がる手前で立ち止まって、こう言ったんだと。


『おかん、心配かけてすまん・・・・

ひとつ、お願いがある・・・・

もう学校には行かないから、退学の手続き、しといてほしい・・・・

学費が・・勿体ないから・・・・』


お母さんの声が震え、

そのまま涙がこぼれていた。


学費が、勿体ない。


その言葉が、

胸の奥に突き刺さる。


私は、恐る恐る聞いた。


「・・・・イジメに対する被害届は?

出さなかったんですか?」


お母さんは涙を拭いながら、

また首を横に振った。


「秀ちゃんが・・父さんがね、

一度だけ、あの子と話をしたの」


「その時に聞いたみたい。

『誰も、本当のことなんか言わないから、出さないでいい』って」


声を震わせながら続ける

「なんで・・・・こんなことに・・・・」


お母さんの切実な言葉に、

部外者の私まで、胸が締めつけられた。


私は、覚悟を決めた。

「・・・・お母さん。

まことの部屋に、行ってもいいですか?」


お母さんは、涙が落ちないように、

少し上を向いてから、


「・・・・反応してくれると、いいわね」


それだけ言った。

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