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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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124/127

[115]

麻耶は7月に入った頃から、

真実の様子が、少しずつおかしくなっていることに気づいていた。


LIMO通話で話していても、

前みたいに笑わない。

声の張りもない。


「まこと?大丈夫?」


そう聞いても、返ってくるのは決まって、


「うん」


それだけ。


通話が切れたあと、

画面に残った自分の顔を見て、

胸の奥がざわついた。


(・・明らかに、おかしい)


でも、それ以上、踏み込めなかった。


(高校に入って、他に好きな人ができたのかもしれない)


そんな考えが浮かんで、

怖くなった。


もし聞いて、

「そうだよ」と言われたら。

もし、もう必要ないと言われたら。


その想像だけで、

喉の奥がきゅっと締めつけられた。


だから私は、

「元気ないね」とも、

「何かあった?」とも、

ちゃんと聞けない、弱い人間だ・・・・


7月中旬。


学期末試験が始まり、

お互いに忙しくなった。


通話の回数も減り、

メッセージのやり取りも、短くなる。


試験が終わったら、

夏休みに入ったら、

そのときに、ちゃんと話そう。


そうやって、

自分に言い聞かせていた。


夏休みまで、あと1週間。


その日の夕方、

何気なくつけていたテレビから、

聞き慣れた地名が流れてきた。


——西岡高校。


画面を見た瞬間、

背中に、冷たいものが走った。


「本日午後、西岡高校で、

 女子生徒が校舎屋上から飛び降りる事件があり——」


頭が、真っ白になった。


真実が、通っている高校。


画面に映る校舎を見て、

心臓が、嫌な音を立てる。


(・・・・まさか)


私は慌てて、

LIMO通話をかけた。


・・・・出ない。


もう一度。

それでも、出ない。


何度も、何度もかけた。


通話履歴だけが増えていく。


メッセージを送る。


「ねえ、大丈夫?」

「今、ニュース見た」

「お願い、出て」


既読は、つかない。


未読のまま、

時間だけが過ぎていく。


(え?・・・・なんで、出ないの?)


胸の奥が、

不安で、ぎゅうっと潰れそうになる。


悪い想像が、

次々と浮かんできて、

止まらない。


私は、震える指で、

別の連絡先を探した。


同じ高校に通っている、裕子。


何も考えず、なぶり書くように、メッセージを送る。


「真実、連絡つかないんだけど、何か知ってる?」


しばらくして、

返信が来た。


短い文が次々と・・


でも、

一文一文が、

胸に突き刺さった。


——真実のクラスの女子が、

——いじめが原因で、

——屋上から飛び降りた。


——その屋上に、

——まことが居た。


——まことも、

——いじめの対象になっていた。


息が、できなくなった。


画面を見つめたまま、

動けなかった。


いじめ?

真実が?


あの、

LIMO通話の向こうで、

元気のなかった声。


「うん」

だけしか返さなかった、あの返事。


あの時、

もう、いじめられていた?


私は、

何も気づかなかった。


気づけたはずなのに。

おかしいって、思っていたのに。


精神的に、

追い詰められていただろうに。


私は、

支えてあげていなかった。


「忙しいから」

「今は聞けないから」

「聞くのが怖かったから」

そんな理由で、

目を逸らしていた。


真実とは、

それからもずっと、音信不通になっていた。


通話も、

メッセージも、

何も返ってこない。


夏休みが始まったら、

会いに行こう。


画面を閉じながら、

私は、そう決めた。


距離なんて、関係ない。

理由も、いらない。


ちゃんと、

顔を見て、

謝りたい。


支えられなかったことを。

一人にしてしまったことを。


間に合うかどうかは、

分からない。


それでも、

行かない理由は、もうなかった。


私は、

夏休みを、待っていた。


不安と、後悔と、

どうしようもない想いを抱えたまま。

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