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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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120/127

[111]

真実は、自分の席から一点を、ずっと見つめていた。


そこは、かつて晴美が座っていた席。

今は、白い花が刺さった花瓶が置かれている。


今回は救おうと決めていた・・・・

それなのに・・・・

晴美を救えなかった・・・・


その事実だけが、胸の奥を静かに侵食している。


花瓶を見つめていると、

背後や周囲から、声が聞こえてくる。


【なにも、死ぬことなくね?】

【やりすぎたかな・・・・】

【でも、私は悪くない】


・・・・は?

思わず、眉が動く。


(おいおい・・)

(お前ら、今のは声に出して言うことじゃないだろ?)

(なんでそんなこと平気で口に出せるのかねー)


そう思いながら花瓶をボーッと見つめていた。


そんな時、喧騒の声に紛れて聞き覚えのある声が頭の奥に落ちてきた。


【まこと・・・・だいじょうぶかな・・・・】


(・・・・ん?)

(ゆうこ?)


顔は花瓶に向けたまま、

視線だけを、ゆっくりと教室の入口へ向ける。


そこに、裕子が立っていた。


こちらの様子を窺うように、

わずかに身を引いた姿勢で。


なんだ、ゆうこ・・居たのか・・・・

(えっ?)

(あれ?)

(なぜ?)

(あんなところにいる裕子の声が聞こえる?)


真実は聞こえる声を整理し始める。


胸の奥が、ざわつく。


(あれ?今日聞こえていたのは独り言じゃなくてみんなの心の声?)


(今日の朝?)

(いや、昨日?)

(警察署の時から聞こえていた?)


(・・・・あれは、独り言じゃなかった?)


意識を、少しだけ数名に向ける。


すると、

今まで「雑音」だと思っていたものが、

急に、形を持ち始めた。


【めんどうなことになったな】

【でも、もうおわったことだし】

【あいつ、にらんでないか?】


声は重なりあっているものの、意識をしている人の声は雑音の前に出てくる。


どの声の主も、口を動かしていない。


(・・・・嘘だろ。)


心臓の鼓動が、少し速くなる。


俺は、今度は試すように、

意識を一人に絞った。


すると、その声だけが、

はっきりと、頭の中に響く。

口は、閉じたままだった。


「・・・・」

俺は、小さく息を呑んだ。


まさか。


(俺・・聞こえてる?)


(あいつと、同じ?)


真子が言っていた言葉が、脳裏をよぎる。


(心の声が、聞こえる)


(なぜ、今になって)

(なぜ、こんな形で)


理解しようとした瞬間、

周囲の声が、一気に押し寄せてきた。


後悔。

自己正当化。

無関心。

恐怖。


ぐちゃぐちゃに混ざった感情が、

一斉に流れ込んでくる。


「・・・・っ」


思わず、机の縁を掴む。


(違う)

(こんなの、知りたくなかった)


(俺は、まだ、何も整理できていない)


ただ一つだけ、はっきりしている。

これは、

気のせいでも、錯覚でもない。


皆の心の中を、聞いてしまっている。


それを理解した瞬間、

世界が、ほんの少し、歪んだ。


そして俺はまだ、

この力と、どう向き合えばいいのか、

何一つ分かっていなかった。

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