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俺は走りながら ーー
前の世界線は2学期の始業式の日だったはず。
なぜ?
なぜ早まった!?
そんな考えを頭に巡らせながら、
俺は探し回ることなく一目散に目的地へと足を向けて駆けていく。
階段を上がっていく
階段を上がっていく
息が上がる、しかし、駆ける
階段を上がっていく
階段を上がっていく
・・・・屋上である
扉を開けて屋上を見渡す。
晴美が立っていた、
生と死の境目で
俺は荒れる息を整えながらゆっくり晴美の近くへ歩み寄る
俺の息遣いが聞こえたのか晴美がコチラをみる。
その顔は哀しみに溺れたようだったがどこか諦めの顔にも見えた。
「吉田さん、待って、ダメだ、こっちに戻ってきて」
刺激しないようにと思ってか、俺の声はか弱かった。
「野元くん、わたし、もう耐えられないよ」
「私がイジメられるのはいい」
「だけど・・・・」
「野元くんがイジメられるのを見るのは・・・・」
晴美の哀しみが十二分に伝わってくる
俺は飛び降りをなんとか阻止せねばと効果的な説得を考える。
「なにも死ぬことはないじゃないか・・」
「学校に来なきゃいい」
「俺も学校に来ない」
「そしたら被害を受けなくていい」
ゆっくり、噛み砕くように、説明する。
しばらく沈黙が続く
喧騒の声など一切ない、風が踊る音だけが聞こえる。
「私の親・・厳しいんだ・・・・」
「・・・・許してくれない」
家庭環境が俺の説得を掻き消してしまう。
「親に理由説明しよ・・」
「俺も一緒に行って状況を説明するから・・」
再び沈黙が舞い戻る
晴美は哀しい顔をしていたが表情がにこやかになる。
俺はその表情を見て踏み止まってくれたと安堵する。
「のもとくん、もういいよ」
「わたし、疲れちゃった」
「ありがとう」
「そして・・ごめんね・・・・」
その瞬間、晴美は姿を消した
「えっ・・・・・・・・?」
「あっ・・・・・・・・?」
「ダメだ・・・・・・・・」
「よしだっ、よしだーーーーーーーーっ!」
俺は叫び声に共鳴し、涙がごぼれ落ちる。
1人の女性を救うためにここまで来たのに、
救えなかった・・
また、救えなかった・・・・
「うおおおおーーーーーーーーっ!!」
俺の叫びは無秩序に飛散する。




