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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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[105]

教室の中で、俺は孤独だった。


騒がしい昼休みも、ざわつく放課後も、俺の周囲だけが不自然なほど静まり返っている。


誰も近づかず、誰も声をかけない。

まるで、最初からそこにいなかったかのように扱われている。


正直に言えば、状況はかなり厳しい。

ただ・・今の俺だから、まだ耐えられている。


五十代に近づいたこの精神年齢。

理不尽を理不尽のまま受け止め、

感情と行動を切り離すことを、覚えてしまった今だからこそ、

どうにか立っていられる。


でも、ふと考えてしまう。

・・・・これが、当時の俺だったら。


何も分からず、何も守れず、

ただ必死に誰かにしがみつこうとしていた、あの頃の俺だったら。

果たして、この空気の中で呼吸できただろうか。


そんなことを考えながら、ふと教室の対角線上にいるニッシーの姿を見る。

席替えがあってから、ニッシーとはほとんど話していない。


以前なら、

俺が何気なく声をかければ、

面倒くさそうにしながらも軽口のひとつくらいは返してきた。


今は違う。


俺から話しかけても、沈黙・・・・

そして、感情の読めない冷たい視線だけ返ってくる。


口を開こうとしない。

距離を測るように、一線を引いたまま動かない。


ああ・・・・


これから先、仲が良ければ起こるであろう、ニッシーとの関係を思い返す。


笑っていた時間

くだらない話

何気ないやり取り

それらが、音もなく崩れ落ちていく感覚。


それが、思っていた以上に精神的なダメージを受けているのが分かった。


ある日。

移動教室のため、俺は1人で廊下を歩いていた。

背後から、聞き覚えのある声がする。


「おーい、まことーー」


振り返らなくても、誰の声かわかった。

わかっていたからこそ、足は止めなかった。


声のする方へ、顔だけを向ける。


裕子だった。


少し驚いたような顔で、

でも、どこか嬉しそうに手を振っている。


本当は、話しかけたかった。

声を返したかった。

たった一言でいいから、繋がりを確認したかった。


けれど・・・・

裕子を巻き込む可能性が、頭をよぎる。


俺に関われば、

彼女まで同じ視線に晒されるかもしれない。

同じ沈黙の輪の中に、引きずり込んでしまうかもしれない。


それだけは、避けたかった。


俺は小さく微笑むだけで、

すぐに顔をそらし、足早にその場を離れた。


逃げるように。

何もなかったふりをして。


背後で、足音が止まる気配がした。


裕子はその場に立ち尽くし、

首を傾げながら、真実の後ろ姿を見ていた。


何かを言いかけて、

でも、言葉を失ったまま。


俺は振り返らなかった。

振り返ってしまえば、

きっと、戻れなくなる気がしたから。


・・・・また一つ、

俺から繋がりが切れていってしまった・・・・


無音の領域は、

静かに、確実に、俺の周囲を広げていた。

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