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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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113/127

[104]

放課後。

昇降口の方へ向かう晴美の背中を見つけ、俺は反射的に足を速めた。


「・・・・吉田さん」


呼び止めると、晴美は一瞬だけ肩を震わせ、ゆっくり振り返る。

その表情は、どこか覚悟を決めたようで、同時に逃げ場を探しているようにも見えた。


「一緒に、帰ろう」


そう言うと、晴美は視線を伏せたまま、小さく頷いた。

言葉は返ってこなかった。


2人並んで歩き出す。

夕方の風が校舎の影を長く引き伸ばしている。

足音だけがやけに大きく響き、沈黙がその隙間を埋めていく。


俺は、ずっと胸の奥に引っかかっていたことを、意を決して口にした。


「あの日さ・・俺が家まで送ったあと、有田に、会ったのか?」


晴美は一瞬だけ立ち止まり、驚いたように目を見開いた。

それから首を横に振る。


「会ってない。話してもない」


声は震えていた。


「告白も、してない。なのに・・なんで、あんなことになったのか、私も、わからない」


困惑と恐怖が入り混じったその表情を見て、胸の奥がざわついた。


——じゃあ、なぜ?


(なぜ、あいつらはあんな嘘をつく必要があるんだ?)

答えの出ない問いを抱えたまま歩いていると、晴美がか細い声で話しかけてきた。


「・・私のせいで、野元くんを・・巻き込んでしまって・・ごめんなさい」


足が止まる。


「そんなこと、ない」

思ったより強い声が出た。


「俺、巻き込まれたなんて、思ってないし」


晴美は唇を噛みしめ、首を横に振る。

「でも・・・・私に、関わらなければ・・・・」


その言葉の途中で、晴美は堪えていたものが溢れたように、涙目で顔を歪めた。

次の瞬間、踵を返して走り出す。


「吉田さ——ん」


そのあとの言葉が続かなかった。

何を言えばいいのか、どんな言葉が正解なのか、わからなかった。

俺はただ、その背中を見送ることしかできなかった。


それから数日。

クラスの狂気は、さらに形を変えて晴美に向けられていた。


晴美の筆箱が消えた。

机にはいつの間にか卑猥な落書きが増えていた。

廊下を歩いていると、肩を強く押され、わざと転ばされる。

男子の一部は、すれ違いざまに卑猥な言葉を投げつける。

「俺にもしてくれよ」

「おまえ誰でもいいんだろ」


それを聞いて、女子たちは視線を逸らしながら、くすくすと笑う。


止める者はいない。

皆の冷たい視線だけが突き刺さる。


そんな晴美は何も言わない。

ただ、少しずつ背中が小さくなっているように見えた。


俺は、そのすべてを見ていた。

しかし、見ているだけで、動けず、声も出せずにいた。

なぜなら俺は、変わらず・・無音の領域にいるのだから・・・・。

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