表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

111/127

[102]

朝から、胸の奥がざわついていた。


理由は分かっている。

今日だ。

——前の世界線で、すべてが壊れ始めた日。


昨日は、確かに止めた。

晴美を連れ出して、家まで送った。

優斗とは、二人きりにさせなかった。


(・・・・だから、大丈夫なはずだ)


そう言い聞かせながら、校門をくぐる。


その瞬間、違和感が走った。


8組の方角から、妙に荒れた声が聞こえてくる。

笑い声じゃない。

鋭くて、刺さるような声。


(・・・・まさか)


足が、自然と速くなる。

廊下に近づくにつれ、その声ははっきりしていった。


「ちょっと、どういうことか説明してよ」

美月の声だ。


嫌な予感が、確信に変わる。

俺は、急いで教室の扉を開けた。


一瞬で分かった。

空気が、完全に違う。


教室の後ろの方で、山本美月が吉田晴美に詰め寄っていた。

距離が近い。

壁際に追い込むような位置取り。


「ねえ、聞いてんの?黙ってないで、ちゃんと答えてよ」


晴美は立ったまま俯いている。

逃げ場のない距離。


その瞬間、晴美がちらりと入口を見る。

俺と、目が合った。


ほんの一瞬。

すぐに視線を逸らし、美月の方へ向き直る。


「・・・・違うよ。私じゃない」

その声はあの時と同じ、

必死だったが、小さくて、弱かった


「は? 私じゃない?

けいこが見たって言ってるじゃない」


美月の声が跳ね上がる。

教室のあちらこちらから視線が集まってくる。


誰も止めない。いや、美月の勢いに皆が圧倒されて動けず、ただ傍観していることしかできないでいた。


「けいこ、見たんでしょ?」


名前を振られ、宮谷啓子が一歩前に出る。


「・・・・見たよ。校舎裏で、優斗と2人でいた」


ざわっと、空気が揺れる。


(・・・・嘘だろ)

真実は驚きを隠せなかった。

(こいつら何言ってんだ?)

(昨日晴美は俺が家まで送ったはず、その後に会ったのか?)

(ヤバい、この状況、あの時の流れになる)


真実はまた同じ過ちを繰り返してしまうと思いどうすれば回避できるか考えていた。


「待ってくれ」

考えていても答えが見つからず身体が勝手に反応して晴美の横に駆け寄る。


「吉田さんは昨日、俺と帰っていたから、有田と一緒にいるはずはない」


教室が、一瞬静まり返り、全員の視線が、俺に集まる。


(・・・・通じろ)

心の中で強く念じる。


しかし、その念を打ち消すかのように啓子が反論する。

「は?野元、何言ってるの?昨日晴美は優斗と一緒に居たし、しかも手を握って口説いてたよね?」


真実は啓子の言っていることがまったく理解できなかった。


「ちょ、ちょっと待って」

晴美が声を上げた時、今度は優斗が口を開く。


「美月・・・・」

優斗の神妙な声に、教室が異様を感じ取ったのか、不自然なほど静まる。


「たしかに俺は、晴美と校舎裏へ行った・・・・、だけど晴美に言い寄られていただけだから」


その一言で、空気が決定的に傾いた。


(・・・・ダメだ)

(・・・・なんなんだ、この流れは)

(昨日、俺が連れ出した意味は?)

(ズレたんじゃなかったのか?)


様々な思いが真実の頭の中を駆け巡っていく。

だが相手は答えを待ってくれない。


「優斗が言ってる事は本当だよ」

啓子はそう言いながらポケットからスマホを取り出した。


その場の空気が、あの時と同じで「言い逃れ」を許さない形に変わっていくのが分かり真実は血の気が引いていく。


操作音が、やけに大きく聞こえる。


「これ、聞いて」


大音量で再生された音声。


『・・・・ゆうとくん・・・・好き』


教室が、凍りついた。


『・・・・して・・』


短い音声だが、間違いなく、晴美の声。


「・・・・ちが・・・・」

「言ってない・・・・」

晴美が首を振る。

声が震える。


「嘘・・だろ・・・・?」

俺は、その場に立ち尽くしていた。


昨日、俺が動いた意味は?

回避したはずじゃなかったのか?


教室の空気は、完全に固まっていた。


前の世界線と、

同じ地点に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ