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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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[96]

5月。

ゴールデンウィークを終えたところでの出来事を、俺はふと思い出していた。


——前の世界線の話だ。


あの頃の俺とニッシーは、揃いも揃って彼女がいなかった。今思えば、完全に女性に飢えていたと思う。


「どっちが先に彼女を作れるか勝負な」


そんな訳の分からない張り合いを、本気でやっていた。


入学して1週間ほど経った頃。

部活勧誘が並ぶ場所を、ニッシーと一緒に歩いていた時だった。


俺は、そこで1人の先輩に目を奪われた。

ソフトボール部の二年生。

村田 友紀[むらた ゆき]


当時、ボーイッシュな女優にどハマりしていた俺にとって、村田さんは、ほぼ理想そのものだった。


——恋の落ちる音がした


そんなある日、ニッシーが打ち明けてきた。

「俺さ、中学の頃から好きな先輩がいるんだよ」

名前を聞いて、固まった。


村田友紀。


それから俺たちは、

まるで推し活でもしているかのように、

村田さんの魅力を語り合うようになった。


そして、ゴールデンウィークが明けた、ある日の放課後。

ニッシーの家で遊ぶことになり、2人で歩いていた時だった。

和倉町のコンビニの前に、村田さんが1人で立っているのを見つけた。


俺たちは、反射的に物陰に隠れた。

その時、ニッシーが囁いた。

「・・・・じゃんけんで勝った方が、告白しようぜ」


今思えば、どうかしている・・・・


でも俺は、なぜか乗ってしまった。

そして勝ったのは

ニッシーだった・・・・

俺は思わず声をかけていた。

「ニッシー、やっぱやめとけ、勝算ないって」


俺の言葉を振り払い紫電一閃、ニッシーは走り出していった。

村田さんの目の前に立つと、彼女は「何事?」という顔でニッシーを見る。

しかし、そんなことはお構いなしだった。


「村田先輩、あなたのことが好きです」

「付き合ってください」


村田さんは、困ったような表情を浮かべていた。


その時だった。


コンビニの扉が開き、一人の男が出てきた。

野球部3年で主将、柳田 瑛士[やなぎだ えいじ]


先輩は状況を一瞬で察した顔だった。

村田さんが、告白されたことを正直に伝えている。

柳田の表情が、はっきりと変わった。


「お前、俺の彼女になにしとんじゃ」

次の瞬間、ニッシーは無惨にも地を舐めることとなった。


2人が去ったあと、俺はそっと近づく。


「ニッシー・・・・だから言ったじゃん」

俺はそう言いながら、

(じゃんけん負けてよかった)

そう安堵するのだった。


今なら分かる。

あの頃の俺たちは、間違いなくバカだった。

でも、そのバカな瞬間を一緒に笑える相手ができたのは、悪くなかったと思う。


ちなみにこの出来事、

この世界線では起きていない。

ニッシーが1人で暴走してない限りは・・・・たぶん。

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