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休み時間になると、教室の空気が花開くように、一斉に賑やかになった。それぞれが、それぞれの楽しみ方で話し始める感じだ。
(ああ、これが8組の凄いところだった)
前の世界線と同じ雰囲気に、胸の奥がホッとする。
前の席から、椅子を引く音がした。
「なあ、マコッちゃんさー」
西が振り返る。
「家どこ?」
「暁月町。西は?」
「俺?、俺は和倉町。あー、そりゃ被らんわ」
そんな、どうでもいい会話。
でも、不思議と居心地が悪くなかった。
「部活、何やるん?」
「まだ決めてない」
「じゃあ一緒に見て回るか」
軽い誘い。
押しつけがましくもなく、断りづらさもない。
(・・・・さすがニッシーだな)
そう思っている自分に、安堵する。
教室の後ろでは、女子たちがキャッキャと笑い声を上げていた。山本美月を中心に、宮谷啓子、大野愛、そして吉田晴美だ。
四人は山本の机を囲んで、何やら楽しそうに話している。内容まで聞こえる大きい声、雰囲気も明るく本当に仲がいい。
「晴美、それ絶対忘れるでしょー」
「忘れないよ、大丈夫」
吉田さんが笑いながら答えている。
(・・・・ここも前と同じだな)
前の世界線と同じように、
吉田さんは、ちゃんと輪の中にいる。
その様子を、山本美月が自然にまとめていた。
誰かが話題から外れそうになると、
仕切りすぎるわけでもなくさりげなく拾う。
一方で、男子の方では有田優斗が笑いを取っていた。
「いやいや、ありたー、それ絶対盛ってるだろ!」
「盛ってねーって!」
誰かが言い過ぎそうになると、
優斗が冗談で流す。
空気が、うまく回っている。
(・・・・やっぱり、こいつらのリーダーシップは凄いな)
前の世界線で、俺が2人を認めていた理由が、
自然と思い出される。
クラスがこんなに花開いた感じになっているのは、間違いなくこの2人がいたからだ。




