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恋愛をやり直しますか? 〜 YES or NO 〜  作者: 相賜 奏合


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[93]

その中に、彼女の姿があった。


吉田 晴美[よしだ はるみ]


前の世界線と同じ位置に、同じように座っている。

背筋を伸ばし、机の上に手を揃え、周囲を気にするでもなく、

ただ静かに、そこにいた。


(・・・・いるんだな)


安堵が、確かにあった。

でも、それと同時に、

別の感情が、遅れて胸に落ちてくる。


(・・・・また、起きるのか)


あの出来事。

思い出したくもない光景。

「同じ」という事実は、

安心と一緒に、同じ痛みの予兆も連れてくる。


さらに視線を動かす。


(・・・・ああ、やっぱり)


教室の奥の方に、

見覚えのある顔が、固まるように集まっていた。


(あいつらも、いるか)


気づかないふりをしながら、

俺は自分の席に座る。


すると前の席に座っていた男子が、振り返った。


「おっす、もしかして、この席?」


「あ、うん。そうだけど」


少し間があって、

その男子は、ニッと笑った。


「俺、西。西祥平。よろしく」


西 祥平[にし しょうへい]


名前を聞いた瞬間、記憶の奥にあった懐かしさが溢れ出る。


別の中学だったが、この先、社会人になる前までよく遊ぶことになる。何度もバカやって笑って、くだらない話をして、夜遅くまで騒いで・・

そんな記憶が、断片的に浮かぶ。


(ニッシー・・・・だ)


でも、今はまだ。

いきなりそんな呼び方ができるほど、

俺たちは近くない。

(最初はよそよそしくいかないと・・)


「・・・・野元真実。よろしく」

「マコッちゃん。だな」


(この軽さに最初は嫌悪感を持ったがゆくゆく仲良くなっていくと、これに救われたんだよなー)

しみじみとニッシーの顔を見る。


教室の空気は、当面普通だ。

チャイムが鳴り、担任の新谷が入ってくる。

あの口髭にジャージ姿が懐かしい。


名前が呼ばれ、出席が取られていく。


吉田晴美の名前も、

あいつらの名前も、

滞りなく、同じように呼ばれた。


(・・・・本当に、同じだな)


世界線は、ズレたはずなのに。

それとも、

ズレたのに、ここだけは同じなのか。


世界に弄ばれている感覚を持ちながら、俺は、何となく窓の外を見た。


校庭には、まだ少しだけ桜が残っている。

でも、中学の時よりも、

それが遠く感じられた。


高校生活は、始まったばかりだ。


まだ何も起きていない。

でも、起きないとは限らない。


胸の奥に、小さな棘のような違和感を残したまま、

俺の1年8組、学校生活が静かに動き出した。

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