湿った足音は帰り道に

第一話

はぁ······気味が悪い。

本当に気味が悪い。

今も背後から鳴り響くこの不快な音をどうにか消す方法がないか模索したいが怖くて振り返ることすら出来ていない。

会社からの帰り道、十字路を過ぎた辺りからその音はやってくる。

ヒタヒタ、ヒタヒタヒタとまるでずぶ濡れの何かに後をつけられているようなそんな感覚に陥る。

だからこの音が聞こえたらなるべく早足で、なるべく早く家に帰るようにしている。

全く······本当に気味が悪い。